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 家に帰って自分の部屋に戻ると、制服を脱ぎ捨てて、Tシャツとミニスカートというラフな格好に着替えました。私は普段からミニスカートが多いのです。楽なんですよね。


 ベッドにダイブしてゴロゴロしながら今日の出来事を思い出します。もし部屋に誰かいたら下着が丸見えですが、私しかいないので気にしません。


 さて、浩介さんに何かメッセージ送りましょうか。なんだか緊張します。私、浮かれまくってますが、この感情って浩介さんに恋してるんですかね。今まで、こんな感じになった事ないのでよくわかりません。


 元々、男性にはどちらかというと嫌なイメージしかなかったのです。みんな顔と胸とスカートの裾ばかり見てきます。スカートなんて長くすると視線を感じませんが、短いと視線を感じます。見てる側はバレてないと思ってるかもしれませんが、受ける側はよくわかるんですよ。


 中学校でも友達くらいの関係の人はいましたが、こんな感情は持ったことありませんでした。ただ、私はある癖のせいで友達が少ないのです。仲良くなっても、それが原因で離れていってしまいます。

 浩介さんには先に言っておきましょう。傷を負うなら浅い方がいいですしね。


『こんばんは』


 最初ってなんて送ったらいいかわからなかったので、こんな一言になってしまいました。男性にメッセージ送るなんて初めてなので、気の利いた言葉なんて浮かびません。それでも、秒で既読がついて、すぐに返事が返ってきました。


『こんばんは。おお!ホントにきた!ありがとう』

『もしかしてこないと思ってましたか?』

『いや~、清浦さんみたいな可愛い子と入学早々仲良くなれるなんて最高だなって』

『私、そんなに可愛くなんかないですよ?子供っぽいですし……』


 文字でも可愛いって言われるのは嬉しいですが、私は外見が子供なんですよね。私服なら小学生でも通用するのが悩みです。唯一、胸だけはそこそこあるのが救いですが。


『あ……もしかして、浩介さんってそういう趣味だったりしますか?』


 もしそうだったら、ちょっと距離を置こうかなと思ってしまいました。


『いやいや、そんなことはないから!大丈夫!子供っぽいのは好きだけど、子供は守備範囲じゃないから』


 子供っぽいのが好きってことは、私は好意的に見られているのでしょうか。気になります。


『それならよかったです。あの……後で不快にさせるかもしれないので、先に言っておきたいことがあるんです』

『え?何?なんかヤバい事?』

『私、仲良くなると、結構酷いことを一言多めに言ってしまう癖があるんです。それで……もし言ってしまったら、ごめんなさい』


 言ってしまいました。これで引かれてしまっても仕方ないですね。私の悪い癖は意識していればそれなりに抑えられますが、いつも会話するときに気を張ってるわけにもいかないので、完全に直すことはできないのです。


『あ~それくらいなら大丈夫。俺、いつもねーちゃんにボロクソに言われてるから慣れてるし。むしろ、仲良くなったら言ってもらえるなら、どんどん言ってくれていいぜ』


 意外な返事が返ってきました。いいんですか?それなら私、遠慮なく言っちゃうかもしれません。と言うか、絶対言ってしまう自信あります。

 だって……浩介さんともっと仲良くなりたいんですから。


『わかりました。ありがとうございます。少し安心しました』


 これで明日からも安心して学校に行ける。その時はそう思っていました。



 次の日の朝、学校に着いて、下駄箱でクラスの超絶美人である一ノ瀬穂香(いちのせ ほのか)さんと一緒になりました。昨日振りですが相変わらず綺麗です。しかも噂によると、入試の成績がトップだったとか。これに加えて、性格も良いのです。全体的に少しずつ私に分けてほしいくらいです。

 

「おはようございます一ノ瀬さん」

「あ、おはよう。清浦さん」


 まだ二日目なので、ほとんどの人がお互いに苗字呼びです。一週間くらいしたら色々変わってくるかもしれません。ただ、私のこの口調は変わらないと思います。

 二人がほぼ同時に下駄箱を開けて、中を見て、二人ともそのまま閉めました。思わず一ノ瀬さんと顔を見合わせます。

 そして、もう一度下駄箱を開けました。中には手紙っぽいのが三通入っています。一ノ瀬さんも同じように入ってるみたいです。

 中はまだ確認していませんが、いわゆるラブレターですね。おかしいですね、私、入学してから浩介さん以外の男子とは一言も喋ってないんですけど?


「はぁ……朝から憂鬱……清浦さんもたくさんあるのね」

「はい……一ノ瀬さんはわかりますけど、私なんかのどこがいいんだか、理解に苦しみますね。これ、どうしますか?」

「ん~一応中身は確認するわ。全部断るけど」

「それなら私と一緒ですね。とりあえず、教室で開封しましょう」


 教室へ行って、二人で中身を確認したのですが、全部似たような内容でした。

『好きです。付き合ってください。放課後屋上で待ってます』とか『今日の放課後屋上に来てください』とか、一ノ瀬さんのも合わせて、全員放課後の屋上を指定してきてます。そして、誰一人自分の名前は書いてません。差出人もわからないような呼び出しは行きたくもないですね。


「これって、私達が二人で屋上行ったら、六人並んで待ってるのかな?」

「え?それって気持ち悪いし怖いですね。名前も書いていない人のために、わざわざ時間を割くのも嫌なんですけど……」

「そうよね……ん~、私、ちょっと先生に相談してみるね」

「あ、はい……お願いします」


 入学二日目でこれって、先が思いやられます。

 そして、一ノ瀬さんが動いてくれたことで、帰りのホームルームで連絡がありました。

 私たち以外にも同じような()()を受けた人が結構いたそうで、学校内で奇妙なルールができました。


 ・ラブレター出すなら必ず記名する

 ・校内の特定の場所への呼び出しは禁止

 ・名前のないものは無効

 ・三日たって返事がなければ諦める


 結果的に、このルールができてからはラブレターは減りました。そのかわりに、直接告白してくる人が増えましたが、それはその場で断るだけなので楽チンです。碌に話したこともない人からの告白なんて、遠慮なく斬ればいいだけですし。

 「友達になってください」なら考えますが、全部すっ飛ばして「付き合ってください」は、どうかと思います。そんなんで成功すると思ってやっているんでしょうか?

 ただ、この学校、積極的な人が多いのはよくわかりました。


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