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「ただいま~」

「おじゃまします」

「お、いらっしゃい菜摘ちゃん」

「あれ、ねーちゃん、俺は?」

「ああ、あんたもいたの……あたしは菜摘ちゃんだけでもいいのにねぇ」

「……なんか、俺の扱い酷くなってないか?」

「いいじゃないですか、浩介さんらしくて……」

「菜摘ちゃんはよくわかってるね~さすがだよ」


 今日も浩介さんの家に遊びに来ています。日曜日なので、午前中は外で待ち合わせして、午後から来ました。

 浩介さんのお姉さん――明美さんがいると、いつもこんな感じのやり取りがあって面白いです。仲の良い姉弟ですよね。

 頻繁に遊びに来ているので、浩介さんのお父さんとお母さんとも仲良くなりました。みんな良くしてくださってます。ちなみに、今日は二人でデートらしく、家には私達三人しかいません。


 浩介さんの部屋はそれほど物が多くありません。服やファッション雑誌が結構あります。意外ときっちり片付いているんですよね。

 ちなみに、エッチな本とかは探した限りではなかったです。

 残念というかなんというか……浩介さんの普段のお相手がどんなタイプなのか気になったんですけどね。


「ナツ、何する?ゲームでもするか?」

「はい、いいですよ。今日は負けません」


 私はこういうのは全然経験なかったのですが、浩介さんの家で遊ぶうちに、そこそこできるようになったと思っています。パズルゲームやレースゲームで浩介さんと対戦しますが、最近は結構勝てるようになってきました。浩介さんが手加減してくれているのかと思いましたが、そうではなくて浩介さん自身がそこそこだということみたいです。

 ちなみに、浩介さんは明美さんには一度も勝ったことがないそうです。

 ゲームがひと段落ついたころ、部屋をノックするのと同時にドアが開きました。


「あたしちょっと出かけるから、もし、外に出るなら戸締りだけしっかりね。あと、浩介……これ使いな。どうせ準備してないんだろ?それじゃ、二人ともごゆっくり……」


 そう言って、明美さんはニヤニヤしながら出て行ってしまいました。浩介さんに何か小さな箱を渡していましたが……。


「浩介さん、それって何ですか?」

「え?いや……これは……その……あれだ……」


 浩介さんが動揺しています。何でしょう?気になります。とりあえず、浩介さんから奪って確認することにしましょう。

 はっ!!こ、これは……あれですね、いわゆる避妊具ですか……ううっ……明美さん、なんてモノをくれるんですか。でも、ありがとうございます。私、頑張ります。


「浩介さん……」

「ナツ……」


 浩介さんが振り返ると同時に、軽く唇を合わせました。お互いに赤くなっているのがわかります。


「浩介さん、いいですよ。してください……私の初めては全部浩介さんにあげますから……」


 浩介さんの家に行く可能性がある土日は、いつも可愛い下着を着けるようにしてます。もちろん、今日もです。ついに浩介さんにお披露目する日がやって来ました。

 私、今までの人生で一番緊張してます。もう手汗がすごいです。


「俺も初めてだから上手くできないかもしれないけど、許してくれよな」

「ふふっ……そこはもう少しカッコつけてくれてもいいんですよ?」

「そんなことしたら、カッコ悪い未来しかなさそうだしな」


 そんなこと言ったら、変なフラグがたちますよ?いえ、多分もうたってますね。


「その方が浩介さんらしいです。でも、優しくしてくださいね」

「ああ、もちろんだ」

「大好きです……浩介さん……」

「俺も大好きだ、ナツ……」


 こうして、浩介さんに優しく押し倒されました。


 






 鼻の穴に大根を突っ込む痛み、というのをどこかで見たことありますが、何とも形容し難い痛みでした。

 何がとは言いません。察してください。


 でも、私、とても幸せです。

 大好きな浩介さんに包まれて、一つになる時間、できればもっと続いてほしいです。

 そうです。もっと長い時間です。

 どのくらいの時間が普通なのかはよくわかりません。


 浩介さんの一番槍が脆かったのか、私の迎撃システムが強かったのかもわかりません。もしかしたら、両方かもしれませんが。

 ただ、指揮者が一小節分、手を振るくらいでしたよね、浩介さん?

 それで思わず言ってしまいました。


「え?もう終わりですか?」


 それを聞いた浩介さんは、この世の終わりみたいな顔をしていました。初めて見ます。

 ごめんなさい。

 こんなに落ち込むなんて思わなかったのです。

 でも、後悔してません。

 なぜって、そんな浩介さんを見てたら、いじめたくなってきたのです。

 やはり、私はこっちの方が向いているのでしょうか?

 ここからは、ずっと私のターンです。覚悟してくださいね。






 帰ってきた明美さんと目が合った瞬間、浩介さんは視線を逸らし、私はニコッと笑いました。

 それだけでわかったのでしょう、明美さんはニヤニヤしていました。


「さて、菜摘ちゃん。帰りは車で送って行ってあげるよ。歩きにくいでしょ?」


 最後の方は浩介さんに聞こえないように言ってくれました。

 あぁ、良くわかってらっしゃる。その通りです。


「ありがとうございます、明美さん」


 車の中で、改めて明美さんに言いました。


「いいのよ。菜摘ちゃんはすごく幸せそうな顔してるから言わなくてもわかるよ。でも、いくら菜摘ちゃんが可愛いからって、浩介は無茶しなかった?」

「浩介さんは優しくしてくれました。無茶をしたのは……私の方ですかね」

「そうなの?襲っちゃった?」

「はい、二回目から襲っちゃいました」

「あはははははは!いいねぇ~菜摘ちゃん、最高だよ。一回じゃ足りなかったの?」

「終わったあとの浩介さんを見てたら、いじめたくなってきたので……つい……」

「後で浩介を弄るネタができたねぇ。菜摘ちゃん、浩介のこと……宜しく頼むよ。何してもいいから」

「はい、もちろんです」


 一応、浩介さんの名誉のために、時間的なことは伏せておきました。

 大丈夫ですよ、浩介さん。私が勉強して鍛えてあげますから。


 せっかく黙っておいたのに、浩介さんが明美さんに誘導されて話してしまったそうです。

 暫くの間、浩介さんは明美さんに「秒殺された男」ってからかわれていました。

 

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