10
5月になって暑い日が増えてきました。
学校も浩介さんとの交際も順調です。連休は友達と遊ぶ日と、浩介さんとデートの日をしっかり決めておきました。高校生になって、友達が増えたので一緒に遊ぶ機会が増えました。浩介さんは元々友達が多いので、友達と遊ぶことも多いです。
私も浩介さんもお互いを過度に拘束するのは好きじゃないので、その辺でもめることはありません。
喧嘩とかすることもないです。私の毒舌で浩介さんがKOされているのは喧嘩じゃないのか?と
言われることもありますが、あれは浩介さんが喜んでいるので喧嘩じゃないんですよね。
交際は順調なのですが、キス以上の事はまだしてません。服の上から軽くタッチくらいです。
私としてはもっと先に進んでもらっていいのですが、浩介さんが私を大事にしようとしてくれているのがよくわかるので満足してます。
でも、実は浩介さんが興奮して大きくしちゃってるのもわかってます。何とかしてあげたいのですが、先に進むにはある問題が立ちはだかります。
場所です。一番いいのはそういうホテルですが、私の外見で弾かれる可能性があります。あと、高校生には金銭的に毎回使うのはキツイです。
次に私の家ですが、常にお母さんがいます。なので却下です。そうすると、浩介さんの家しかありません。浩介さんの家は共働きなので、お姉さんがいなければ大丈夫です。
ただ、浩介さんはまだ家族に私の事を言ってないらしいです。恥ずかしいとか、どういったらいいかわからないとか、結構なヘタレっぷりです。私に告白してくれた時の勇気はどこに行ってしまったんでしょう。
ちなみに、私の方はもう言ってあります。私が酷いことを言ってしまわないか心配していましたが、それを受け入れてくれる人だと言うと驚いていました。
そして、今日はそんな浩介さんと遊んでいます。学校の帰りにゲームセンターに寄りました。
私はこういうところには初めて来ましたが……思ってたよりずっとうるさい場所ですね。
「ナツ、大丈夫か?結構うるさい場所だからな……」
浩介さんは私の事をナツと呼ぶようになりました。最初、菜摘になったのですが、ある時咄嗟に出た、ナツに定着しました。もちろん、そうやって呼ぶのは浩介さんだけです。
「はい、大丈夫です。初めて来ましたが、色んなものがあるんですね」
クレーンゲームやテレビゲーム、よくわからないゲーム、あ、あと、写真を撮る機械がありますね。あれはこの間、穂香さん達とカラオケ行ったときにありました。
「そうだな~俺もそんなにくる訳じゃないけど、ちょっとした暇つぶしにはちょうどいいぜ」
浩介さんと手を繋ぎながら店内を見てまわります。意外と女性比率が高くて驚きました。カップルも結構いますね。
周りがうるさい分、浩介さんが耳元で喋ってくれるのがいいです。私からは浩介さんの耳元には身長差がありすぎて届きませんが……。
というわけで、浩介さんの二の腕当たりの服をつまんで、くいっと引っ張ってちょっと屈んでもらいます。
「どうした?何か気になるものでもあったのか?」
「はい、あれ……あの写真撮るやつやりたいです」
「おお~いいぜ、行こうか」
たくさんあってどの機械がいいのかわからないので適当に選びました。
浩介さんもあまりやったことないみたいです。
「どんなポーズで撮るんだ?」
「それは決めてますから大丈夫です」
三枚撮れるみたいなので、順番に撮っていきます。
一枚目は浩介さんに後ろから抱いてもらうような感じで撮りました。こうやって見ると身長差が良くわかります。照れている浩介さんが可愛いです。
二枚目は二人の顔を寄せて撮りました。よく女の子同士で撮りますね。
三枚目も同じ姿勢ですが……シャッターの瞬間、浩介さんの頬にキスしました。
「うおっ!お、おい、ナツ……」
「ふふっ……一枚くらいこういうのもいいですよね?」
出来上がった写真が非常にいい感じになりました。浩介さんの表情が良いです。でも、これは他の人には見せられないので、一人で見て楽しみます。
写真撮り終わった後は、また二人でぶらぶらします。
先ほどまでは手を繋いでましたが、他のカップルみたいに腕を組むことにしました。
「お、おい……ナツ……」
なんかさっきと同じようなセリフが聞こえましたが、浩介さんが狼狽しているのは私がとった行動にあります。
浩介さんとは身長差があって綺麗に腕を組めないので、私が浩介さんの腕に抱き着くような感じになってしまいます。その時に、思いっきり胸を腕に押し当ててます。
ふふふ……周りに見せつけてあげるのもいいでしょう。浩介さんは余裕がないのか、緊張している感じがしますね。
「……わざとですよ。どうですか?」
「いや、どうですか?って……柔らかいけどな……」
「じゃあ、いいじゃないですか……」
「え?ああ、いいのか……」
そのままの状態で、ゲームセンターから出ようとしたのですが、問題が発生しました。
まさかの大雨です。
今日は天気予報は晴れの予定だったので、二人とも傘は持ってきてません。
「うわ~、マジかよ……」
「これは予想外でしたね……」
どうしましょう。ここには傘なんて売ってませんし、近くのコンビニでもそれなりの距離があります。
「よっ、浩介。その隣の可愛い子、紹介してくれるよな?」
浩介さんの肩にポンッと手が乗せられて、後ろから声が聞こえました。
「げっ!ねーちゃん!」
「げっ、なんて失礼だね。実の姉に向かってさ」
そう言って現れたのは、浩介さんのお姉さん?Tシャツにデニムパンツという服装で、二十歳前後くらいに見えます。
浩介さんほどではないですが、身長は170センチくらいはあるのではないでしょうか。それでいて、スリムでモデルさんみたいな体型です。髪の毛は浩介さんと同じような茶髪で背中くらいまであります。切れ長の目やきちっと化粧された顔からは、ちょっと怖いような印象も受けますが、とても美人さんです。私とは全然タイプが違いますね。
「いや、そうじゃなくてさ……なんでこんなとこにいるんだよ?」
「たまたまだよ。そんな事より、その横の可愛い彼女が気になるんだけどねぇ?」
「あ、私は清浦菜摘と言います。あの、浩介さんとお付き合いさせてもらってます」
「うんうん、いい子だね~あたしは風間明美。浩介の姉だよ……しかし、まさかこの子にこんな可愛い彼女ができるとはねぇ。今夜は美味い酒が飲めそうだ」
「おいおい、ねーちゃん、まさか親父とかにも言うつもりなんじゃ……」
「当り前だろ?こんなおもし……いい話、あたしだけで楽しむのは勿体ないし」
お姉さん、今、面白いとか言いかけませんでしたか?まぁ、浩介さんをからかうのは面白いと思いますから、私も同意します。
「いや、でもなぁ……」
「心配しなくても大丈夫。悪いようにはならないさ」
「はぁ……今から胃が痛いぜ……」
「ところで、二人ともこれから帰るところ?」
「ああ、そうなんだけどさ」
「急に雨が降ってきて、どうしようか困っていたところです」
いまだに雨は弱まる気配を見せません。
「なんだ、それならあたしが車で送っていってあげるよ」
「そんなこと言って、ねーちゃん、ナツの事聞きたいだけだろ?」
「それなら、あんたは歩いて帰ってくれてもいいんだよ?菜摘ちゃんさえいればいいからさ」
「俺が悪かったです。すいませんでした」
そんなやり取りが繰り返されて車の中でも楽しく過ごせました。お姉さんとは、見た目での印象とは裏腹に、結構気が合いそうです。特に、浩介さんを弄ることに関しては……。