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死獣神~誕の書~  作者: 天馬光
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デミ・ミュータント(1)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。

 家に着いた未来は、ノートパソコンを用意してから龍にパソコンが見える位置に座るよう促した。

 準備が整うと、未来は長い後ろ髪を上げて、肌と同じ色の防水テープを首から剥がし、そこに付着したSDカードを龍に見せた。


「これが例の?」

 龍の問いに頷くと、未来はSDカードをパソコンに挿入してパソコンを起動し、慣れた手つきでデータを開いた。

 そこにあったのは、人智を超えた壮大な研究のデータであった。


「……これが、今回の原因となったお父さん達のもう1つの研究。遺伝子操作によるデミ・ミュータント製作理論」

 未来はデータの正体を明かすと、その詳細を説明した。


 この理論は、対象の遺伝子の一種である基礎遺伝子に手を加えることで、身体能力を向上させたり、病気への耐性や自然治癒能力を高めるものである。

 そのレパートリーは広く、基礎遺伝子の内容次第では、ミュータントの名に恥じないような特殊能力を得ることも可能となっている。

 叶教授夫妻は人体改造と遺伝子操作という禁忌に触れ、その危険性も重々承知していたが、それでも人がコンプレックスや健康に対する不安を無くし、幸せに生きれるのならと、慎重かつ秘密裏に研究を進めていた。

 その結果、実験は成功し、2人のデミ・ミュータントを完成させた。

 ただ、この研究は非常にリスクが高い。悪意ある者の手に渡れば、確実にデミ・ミュータントを量産し、戦争や悪事の道具に使いかねないからだ。

 もっと言えば、もしデミ・ミュータント達が集まり、軍事国家を作ったりしたら、世界は間違いなく彼らに支配されてしまう。


 未来の両親の想いと研究を聞いた龍は、身の毛もよだつ最悪の未来を想像し、ゾッとした。


「……そりゃ慎重にもなるよ。だって未来さんの両親が、そんなこと望んでるはずないから」

 龍はそう言い、叶教授夫妻の想いを汲んだつもりだったが、同意してくれるはずの未来は何故か俯いていた。

 未来の両親は、さぞかし苦悩したことでしょう。

 ですが、それでも人の幸せのためにと願って研究し、理論を完成させるあたり、人間が大好きだったのでしょう。

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