過去の記憶(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。
このままでは紫乃が殺される。武文らが危機感を募らせたその時、翔馬と入れ替わったペガサスと雲雀が、青龍の腹と首にブレードトンファーの打撃部分と掌打を叩き込み、気絶させた。
「はぁ、はぁ……ドアホ龍が。自分で自分の仲間殺してどないすんねん」
「大丈夫? 先生」
ペガサスの問いかけに頷いた紫乃は、澪の治療を受けた。
龍の発狂を目の当たりにした大牙らは困惑したが、『リセット』という単語から例の8歳頃の記憶が関係していると考えたペガサスは、羽根をスクリーンに脳波測定の配線がついたような物に変化させた。
「何やそれ?」
「これはメモリースクリーン。装着した者の記憶を映し出す装置だよ。本来は、昔の記憶を映像化して楽しむ物だけど、これを使って彼の奥底にある記憶を読み取ってみる」
ペガサスの考えに賛同した武文達は、すぐさま龍の頭に配線をくっつけ、その間にペガサスはスクリーンを広げた。
準備が整うとペガサスは、スクリーン裏のボタンを操作して、龍の8歳前後の記憶を映すよう設定した。
記憶の状態が悪かったせいか、検索に時間こそかかったものの、問題無く映し出された。
龍がリセットしようとした記憶の闇を…………
平成10年11月5日午後1時頃。無垢な少年が1人、ランドセルを揺らしながら家路を急いでいた。
彼こそが、中四条小学校に通っていた当時1年生の龍である。
まだ7歳だった彼に当然、殺人欲求など無く、それどころか今のような髪や目に変化が起こる特異体質もまだ発現しておらず、どこにでもいる至って普通の少年だった。
だが、平凡だったからこそ彼の人生は、この日を境に一変した。家に帰ると、両親と姉が手紙を残して蒸発したのである。
何がきっかけでそうなったのかは知らないが、元々才能のある子だけを育てたかった龍の両親は、奏と違い何の才能も無い龍に愛想を尽かしており、この日、とうとう龍を捨てたのである。
とても非情で、辛辣な別れの言葉のみが綴られていた手紙を読んだ龍は、残酷な現実に直面し、近所中に響き渡るほど号泣した。
もし、この時、龍の両親が非情でなければ、それ以前に普通の感覚を持ってさえいれば、龍は殺し屋にならず、ごく普通の中学生として、今を送っていたかもしれない………………
ペガサスを始め天使の羽根は、物に重ねて光をこめることで、収納することもできますし、武器にもなります。
収納したモノを出す時は、ランダムに羽根を抜いて、出したい物を思い浮かべながら羽根を振ることで、今回のように変化させることができます。