闇への崩壊(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。
その刹那、肉を断つ音が聞こえた。
黒龍を斬った。手応えからそう思っていた龍だったが、黒龍はバク宙で間一髪でかわし、傷一つ付いていない。
なのに聞こえたその音は、黒龍が用意した悲劇の音だった。
「そんな……」
「龍……君………………」
龍の目の前に来ていた未来はそう言うとその場に倒れ、体から切り離された首が無惨に床を転がっていった。
黒龍は未来が近くいることを知ると、龍自身の手で彼女を殺させるために一計を案じていたのである。
そうとは知らずに、まんまと悪意に満ちた策にハマった龍は絶望のどん底に落ちた。
「嘘……僕は、何てことをっ! 未来さん。ごめん……僕は……僕はーっ!」
龍は彼女の亡骸を前に泣き崩れた。
大切な友達を故意ではないとはいえ自らの手で殺す。それは想像を絶するほど辛く悲しいものだった。
そうなるのをあの男は待っていた。
今なら龍を殺せる。そう思った黒龍は、涙を流し続ける彼の背後に立ち、容赦なく黒龍千鱗腕を振り下ろした。
しかし、龍は斬られなかった。いや、正確には斬ることができなかった。
何故なら黒龍千鱗腕は、龍を斬る前に持ち主の腕ごとバラバラにされていたからである。
黒龍はその状況と腕から噴水のように噴き出す鮮血を見て、初めて気付いた。自分が斬られているということに。
「ぐぅっ! おのれ、いつの間に!?」
そう言う黒龍を、龍は悲しみと殺意が宿った目で睨み、青く染まった髪を逆立たせた。
青龍に完全覚醒したのである。
「僕のスキを突くためだけに、僕に未来さんを……あなたって人は、どこまでっ!」
「ふっ。だが、手にかけたのは君だろう?」
「それぐらいわかってますよ! 僕の責任だって。けど、あなた達さえいなければ、未来さんも未来さんのお父さん達も死なずに済んだんです!」
龍は怒りの全てをぶつけたが、黒龍に反省する様子もなく、むしろ嘲笑ってるようにも見えた。
龍は青龍に完全覚醒しました。
しかし、その代償はあまりにも大きすぎます。
未来の死に、黙祷。




