青龍vs黒龍(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。
数分後。龍はようやく体育館に到着した。
中に入ると、彼を待っていたかのように舞台の照明が点き、黒龍を照らし出した。
「よく来たな、少年。待っていたぞ」
「あなたが黒龍さんですか?」
そう聞かれて黒龍は頷いた。
「未来さんは無事なんですか?」
「あぁ。ここにいる」
黒龍はそう言うと、拘束された未来を舞台袖から引っ張ってきた。
数時間振りにお互いの姿を見れた2人は、無事だと思いほっとした。
「本当は彼女にもう用は無いんだが、君を本気にさせるにはこれぐらいした方がいいと思ってな」
「やっぱりあなたは悪い人だ。今すぐ未来さんを返して下さい」
龍がそう求めると黒龍は少し考えて、
「……君の言うとおりかもしれん。確かに非は俺達にあるようだ。いいだろう。彼女は解放してやる」
と、まさかの答えを返した。
「本当ですか!?」
「あぁ。今、彼女をそちらへ向かわせよう。安心しろ。爆弾などといった姑息な手は使わない」
その言葉を龍が了解すると、黒龍は未来を縛っていたロープを解き、未来に行くよう促した。
人質から解放された未来は、龍との再会を喜び抱きついた。
「よかった。未来さんが無事で」
「ごめん、龍君。私、あの人や蠍って子の脅迫と拷問に負けて、例のデータを渡しちゃった…………」
よく見ると、未来の体には痣が至るところにあり、拷問の苛烈さを物語っていた。
「大丈夫、未来さん。取られた物は、また取り返せばいいんだよ」
龍はそう言って、悔いて謝る彼女の頭を撫でて落ち着かせた。
未来を拷問したのは黒龍ではありません。
拷問のスペシャリストである蠍です。




