表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死獣神~誕の書~  作者: 天馬光
14/23

初めての殺人(4)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。

 しかし、龍は一切動じること無く、影にエルボーをくらわせてから踵落としで地に這いつくばらせ、その頭を踏みにじった。


「こっちは影踏みしに来たんじゃないんですよ。わかったら、今すぐ未来さんの居場所を教えて下さい」

 殺気を放ちながらそう言う龍に、鴉は気圧されたが臆さず、


「断る。そんなに教えてほしければ、私を見つけ出してみろ。この……物量を突破して、な」

 そう言うと同時に、正門付近にいた部隊と待機していた影の集団が集結し、迎撃態勢を整えた。


 数ではブラック・ナイトが勝る。それでも龍は負けるつもりなど無く、


「言いたいことはそれだけですか?」


「何?」


「今すぐそこに行くので、首を洗って待ってて下さい」

 と、言って、グラウンドへ飛び出した。


 当然、鴉の狙撃や影の攻撃があったが、龍はそれらを全部かわし、迷うことなく南側の校舎に入って階段を駆け上がり、獲物を見失って戸惑う鴉がいる屋上の扉を開けた。


「な!? どうしてわかった?」


「はぁ、はぁ……弾の角度と方向ですよ……それらが一致するのは、ここしかありません」

 真っ暗闇の中、たった数発の銃弾で狙撃地点を割り出した龍に、鴉は脱帽し、拍手を送った。


「ブラボー。子供だと思って甘く見ていた。いいだろう。叶未来の居場所を教えてやる。彼女は体育館にいる」


「そんな所に……わかりました。ありがとうございます」


「礼などいい。あぁ。ついでといってはなんだが、もう1つ君に褒美をやろう」

 そう言いながら、鴉は腰に隠している物に手をかけ、


「鉛玉を、な!」

 と、言い、素早く銃を抜いて撃った。


 油断させてからの驚異の早撃ち。普通の子供なら当たっていたが、彼を信用してなかった龍は、それをコンマ1秒早く避け、拳銃を蹴飛ばした。


「……あなたは本当に鴉の名にピッタリだ。ずる賢くて、余計な事まで鴉がカーカー鳴くように喋る。いい加減鬱陶しいので、これでダウンして下さい!」

 そう言って龍は拳を握り締め、鴉の顔面を全力で殴り飛ばした。

 この時彼は、失神させるつもりで鴉を殴った。それだけで十分だったから。


 だが、その1発のパンチが予想外の結末を招いた。

 紋章の力で身体能力が強化され、力加減ができなかったせいで、鴉は殴られた勢いに押されてフェンスを突き破り、そのまま転落死してしまった。皮肉なことに、鴉の名に最も相応しくない最期を彼は迎えたのである。

 この結果に影達は動揺していたが、一番取り乱していたのは彼らではなく、落とした本人である龍だった。


「嘘……僕……人を、殺しちゃった……殺すつもりなんて……殺すつもりなんてなかったのにぃっ!」

 小学2年生が背負うには重すぎる罪の十字架。それに直面した龍は激しく後悔し、号泣した。


 その後、一頻り泣いた彼だったが、現実はその猶予すら与えなかった。


「行かなきゃ……未来さんを助けに……警察に自首するのは、それからだ」

 龍は涙を拭いながらそう言い、ふらふらと歩いて体育館に向かった。


 龍の初めての殺人。それはお世辞にも後味がいいものとは言えず、心に深い傷を残すものだった………………

 作者として言わせてもらえれば、鴉ほど小悪党で三流のスナイパーはいません。スナイパーや幹部が驕り、ベラベラ喋るなんて本末転倒ですから。

 そんな彼を手にかけたのが、龍にとっての最初の殺しです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ