初めての殺人(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。
校内に入った龍は、未来の居場所を捜すためまずグラウンドに向かい、校舎などに不自然なところが無いか見渡した。
どこにも違和感が無いことに困り果てる彼だったが、それがよほどスキだらけにみえたのであろう。どこかから放たれた一発の銃弾が、龍の横を掠めた。
狙撃されてる。そう思った龍は、スナイパーの位置を探ろうとしたが、暗さと相手の服装のせいで何も見えず、その間に3発撃たれた。
なんとか回避した龍は、ひとまず物陰に隠れ、身の安全を確保した。
暗闇から撃ってくるスナイパー。その人物をどうにかしなくちゃいけないと対処法を考えていると、鴉が拡声器を使って話しかけてきた。
「そこにいるのはわかってるよ、龍君。逃げ込む君の姿が見えたからね。そんな頑張ってる君に1つ、いいことを教えてあげよう。実は私もデミ・ミュータントなんだ。得た能力は千里眼。ここに立ってるだけで、地球の裏側まで鮮明に見える視力を持っている」
(そんなすごい能力を……あれ? てことは、あの人も未来さんの両親に? でも、それならどうして……?)
鴉の言葉から龍がそう考えていると、すかさず、
「『どうして叶教授を殺した奴らの仲間なんかに?』って顔をしてるね」
と、言い当てられドキっとした。
「言っておくが、私に読心能力は無い。君の表情を見てそう考察しただけだ。その疑問の答えはこうだ。なんでも何も、黒龍さんに提案したのがこの私だからだ」
被験者が裏切ったと知った龍は理解できず、彼に届くよう大声で訳を聞いた。
返ってきた答えは、ブラック・ナイトのため。たったそれだけだった。
「そんなことのために、未来さんの両親を殺して……その上、未来さんまで……」
「そうだ。それが何か?」
その一言に激怒した龍の左目の下に、東洋の龍のような形の紋章が浮かび上がった。
「だとしたら、僕はあなたを許さないっ!」
怒りを露わにする龍を見た鴉は、黒龍にも無い部位に紋章が現れたことに動転した。
「な、何だ? あのタトゥーは!?」
「さっきからうるさいですよ。鴉がカーカーと! 今すぐ鳴き止ませてあげますから、そこを動かないで下さい!」
そう言い、鴉の元へ行こうとする龍の背後から伏兵が襲いかかってきた。
叶教彼が生み出したもう1人のデミ・ミュータント。それが彼、鴉です。
その彼のせいで亡くなったんですから、叶教授達も浮かばれないことでしょう。




