初めての殺人(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。
午前1時半。龍が未来の家を飛び出したのと時を同じくして、未来も意識を取り戻した。
最初は真っ暗でよく見えなかったが、目が慣れていく内にここが体育館だとわかるようになった。
と、そこへ、1人の色黒の男が暗闇から現れた。
「お目覚めかな? お嬢ちゃん」
「あなたは?」
「俺はブラック・ナイトの司令をしている黒龍。まぁ言ってみれば、君の両親の仇ということになる」
悪びれもせず自己紹介する黒龍に、未来はすごい剣幕で、
「あなたがあの人達のリーダー? よくも……よくもお父さんとお母さんをっ!」
と、怒鳴り、立ち上がろうとするが、椅子に座らされて縄で拘束されてるらしく、身動きがとれない。
「暴れられたら困るのでな、悪いが縛らせてもらった。まぁ、親が殺されて怒る気持ちはわかるが、心配はいらない。じきに会わせてやる」
黒龍の態度にまだ怒りはあるものの、ここで冷静さを欠いては彼の思う壺だと思った未来は、気を落ち着かせ、彼に両親の研究を狙った理由を尋ねた。
人類の発展を促す活動をしているはずのブラック・ナイトが、こんな暴挙に出てまでデミ・ミュータントを求める理由。それは、デミ・ミュータントの技術を使って、第3次世界大戦を勃発させることだった。
黒龍いわく、確かに戦争をしてる間は全文明が停滞し、国という国が焼け野原になる。
しかし、一方で特需も発生する。彼が目をつけたのはまさしくそこで、ブラック・ナイトはそれを利用して、戦後の文明を爆発的に発展させようとしていた。
「……つまり、戦争とは文明進化の起爆剤であり、人が進化するためには無くてはならないものなんだ。もちろん、誰だって戦争より平和を望むだろうが、平和ボケした人類ほど退化しているものはない」
黒龍の極論を聞いた未来は、彼の人格ごとそれを全否定した。
「歪んでる……お父さん達は、そんなことのために研究してたわけじゃない!」
「だろうな。だからこそ奴らは愚かなんだ。デミ・ミュータントを生み出しただけで、人類を進化させれるものか」
両親を否定する黒龍に未来は毅然として反論した。
黒龍が言ってることは一理あると思います。
人の文明の産物の中には軍事用品だったところから発展した物もあり、日本の爆発的成長は彼の言うとおりな一面もあると思います。
だからこそ、僕は人類の文明の進化を認めません。むしろ、破棄してほしいくらいです。




