デミ・ミュータント(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。
本当は未来だって、素直に肯定したかった。が、そうしづらい理由が彼女にはあった。
「あれ? 僕、何かマズいことでも言った?」
「ううん。龍君は悪くないよ。ただ、そこまで考えてたお父さん達が、どうして娘である私を使ったんだろうって……」
「それってどういう……?」
そう言いかけた直後、龍は未来の言葉の意味と秘密に気付いた。
「まさか……」
「うん。私は5歳の時にお父さんに遺伝子操作されたデミ・ミュータント第1号であり、実験体」
そう。何を隠そう未来こそが人類初のデミ・ミュータントだった。
彼女が得た能力は病気への耐性と演算能力。
前者は言わずもがなだが、演算能力は計算はもちろん、パソコン操作にも長けた能力であり、その処理能力はスパコン並である。
そのため、彼女の手にかかれば、一般家庭のパソコンから兵器の制御システム、人工衛星までハッキングし、操ることができる。
親友の隠された力を説明された龍は、未来が脅されてその演算能力を使ったら大変なことになると思い、未来が両親から託されたデータだけでなく、彼女自身も絶対奪われるわけにはいかないと、未来の親友として心に決めた。
その矢先だった。何の前触れもなく窓ガラスが音を立てて割れ、鴉と影部隊が侵入してきた。
2人が反応した時にはすでに遅く、瞬時にスタンガンで気絶させられた。
「鴉さん。本当にこれでいいんですか? 今なら殺せますが……」
「確かに脅威ではあるが、これはあの方直々の命令だ。つべこべ言わずに任務を全うしろ」
「はっ」
そう言うと、ブラック・ナイトの者達は未来を連れ去っていった。
どれぐらいの時間、気を失っていたのだろう。割られた窓から入ってきた夜風の寒さに目が覚めた龍は、未来が連れ去られたことに気付き、悔しさから下唇を噛んだ。
と、そう思う彼の視界に一通の手紙が映った。
未来のパソコン付近に置かれていたそれを開けると、そこには、『叶未来は預かった。返してほしければ中四条小学校に来い。警察に知らせればお友達の命は無いと思え。 特務機関ブラック・ナイト司令 黒龍』と、書かれていた。
親玉自ら宛てた手紙を読んだ龍は、怒りから手紙をぐしゃぐしゃに握りつぶし、
「……許せない……未来さんを攫った挙げ句、こんなことまで……あの人達だけは……ブラック・ナイトだけは絶対に許さないっ!」
と、言って、髪を真っ青にし、左目に龍の紋章を浮かばせた。
龍はブラック・ナイトへの怒りを滲ませると、未来を救うために自身が通う学校へ向かった。
未来を助ける。その一心を胸に抱いて………………
彼女がその気になれば、サイバーテロや戦争を裏から操ることができます。無論、未来はそんなことを絶対しませんが。




