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君を取り戻すために

 由布梨を取り戻すために、俺と柚葉と雷針と久高は境界の壁の前で作戦会議を繰り広げていた。

「とりあえず、力づくで境界の壁に入ることは出来る。だけど、あれ以上進むのはムリそうだ」

 境界の壁に、さっき一時的ではあるが入ることに成功した俺は、柚葉に中の状況を説明した。

「やっぱ、向こうの世界から来た人は皆、川があるっていうけど本当なんだね……」

「それにしても」雷針が口を挟む。「あいつ、相当な使い手だぜ」

「そうだな」

 船の上にいた、俺達の前に瞬間移動し、蹴り飛ばしてきた人物。また出くわしたら、簡単に同じ目で境界から追い出されてしまうだろう。それに、由布梨が攫われた川の上流に、何があるのかさえ分かっていない。このままでは、取り戻すことは不可能だろう。


「どうするか……」

 そう悩んでいると、境界の壁からきらりと、何かが光を反射したのが見えた。境界の壁に駆け寄り、何かと目を凝らすとそれは白の魔糸だった。

「魔糸……?」

 どうしてそれが、境界の壁の中から出てくるのだろう。頭を捻ると、ひとつ思い出したことがあった。由布梨の指にはめられていたミサンガのような指輪。あれはたしか、創作の地の工房で働いていた時に、お守りとして魔糸紡ぎ師に貰ったのだと言っていた気がする。もしかすると、今境界の壁から出て来た魔糸は、指輪がほつれたものかもしれない。

 白い魔糸は風に乗り、どこかへ飛んでいった。


「何見てんだ?」

 久高が訊いた。

「ん、何でもない……上流に向かう方法は後回しで、どんな敵が来ても対処できるようにする方が先決だと思う」

 俺は言った。皆もそれに同意してくれたので、一度は解散することにした。

 俺は自分の能力と向き合って、もっと強くなる方法を探すことにした。

「色取君、練習なら手伝うよ」

 俺が宿屋付近で一人になった時、柚葉から声を掛けられた。

「あぁ、柚葉。ありがとう」

「何か手伝うことはある?」

「まぁ、練習するっていっても手探りだから、具体的にこうしてほしいみたいなのは、思いつかないなぁ……」

 俺はリフティングの要領で、(まり)を蹴りあげた。蹴り上げる強さに応じて魔力が発動する。ずっとやってると、疲れてくる。

 柚葉はずっと俺の横に立っていた。何か、手伝ってほしい事が思いつけばよかったのだが、俺もどうしていいのかがよく分からない。 

 しばらくそんな状況を続けていると、ふと目の前に鎖に繋がれた分銅が迫ってくるのが見えた。


「きゃああ」

「うおっ」

 驚き声を漏らすと、蹴鞠を蹴りあげ分銅に真正面から衝突させる。

 すると、青色の魔糸から氷魔法が発動する。

「雷針!」

 鎖を目で追い、持ち主を見つけるとそれは雷針だった。雷針は鎖を振り回し、氷を全て薙ぎ払った。

「いきなり何するんだよ」俺は雷針に向き直って、問い詰める。

「状況を打開するには、荒療治が一番だと聞く」

「――それで、今の攻撃を? あっ、ありがとう」

 俺は急いで礼を述べた。急すぎて分かりづらかったが、由布梨を奪還する方法を一緒に模索してくれたということなのだろう。

「ねぇ、なんかおっかないんだけど、平気なの?」

 柚葉が俺と雷針を交互に見ると訊いた。

「あー、そっか。そうだよな。でもこれから……もっと、怖い思いさせるかもしれない」

「え?」

 柚葉が頭に疑問符を浮かべていた。


 俺が雷針を眼光鋭くして見ると、雷針はあごをくいと上に向けて俺を挑発し返した。

 次の瞬間、雷針から拳を繰り出され、それを俺は紙一重で交わす。

 お返しと言わんばかりに、ダンクシュートの要領で鞠を雷針の頭上へと叩きつける。

 すると鞠の緑色の魔糸から、緑色の太い棘が次から次へと落とされる。

 その一本一本を、雷針は苦無を取り出して弾いていく。金属音がしばらく聞こえると、地面に棘は転がり、そして消えていった。

 雷針の手から鎖が放たれる気配を感じると、急いで後退し距離を取る。

 前触れもなく雷針の手から鎖の先端――分銅が投げ放たれたと同時に、俺は条件反射のように鞠を蹴った。それは、青い魔糸から氷の刃を振り回しながら放物線を描いて雷針の脳天を撃ち抜こうとしていた。


(まずい!)


 少し本気になりすぎてしまっただろうか。このままでは、雷針が魔法の餌食になってしまう。そう思った俺は、鞠に意識を集中した。


(雷針の後ろ側に回れ!)


 すると、鞠は雷針の頭上を通り過ぎ、はるか遠くまでふっ飛んで行ってしまった。

 しかし、鞠がそんな動きをするとは知らない雷針は、のけ反りながら見事に避ける体勢をとっていた。

 俺の心配は無用だったということだ。

 避けようと後ろにのけ反ったことで、雷針が手にしていた鎖がぐんと後方に引っ張られ、俺から分銅が遠ざかっていく。

 セーフ、間一髪間に合ったと胸を撫で下ろす。


「おい、あれは?」

 雷針が姿勢を直すと、後ろを振り返り、ふっ飛んだ鞠を指差した。

「はは、何か飛んで行っちゃった」

「ほー……」

「色取君、何かすごーい!」

「これさ」俺は思いつきを口にする。「例えば、境界の壁の向こう側に鞠を飛ばして、由布梨を奪還するために何か利用できるかな」


 俺の言葉に二人が何も反応してくれなかったのが寂しかった。

 それでもこれが、切り札になってくれることを願うしかない。

 もう他に手が思いつかない。


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