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結局この石って何??

 ピコン、という音が由布梨の脳内に反響した。 


「よし、この石を質屋に入れよう」 


 由布梨は懐に常に入れている、境界世界の川で朔真にもらった石を、質屋に入れることにした。役に立つかも、と朔真も言ってくれたのだから、このタイミングで手放すと、プラスになってくれるかもしれない。

 由布梨は期待を胸に抱いて、その石を質屋に持っていった。


 しかしなんと、

「これは、全く価値がつきませんね」

 と質屋の人に一蹴された。

 由布梨はそうですか、と返事してすごすごと引き下がっていった。


 ――おかしくない? ああいう場面で手に入れたものって、物語だったら絶対に役に立ってくれるのに!?


 今のところ、この石は精神安定剤以外の役割を全く果たしていない。ただ、握りしめられただけ。それでも十分かもしれないが、魔法世界における石のポジションには、もっと期待したいところだ。

 しかし、夢ばかり見ていても仕方がない、と由布梨はまた懐に石を仕舞いこんで、現実と向き合うことにした。


「転職かあ」

 景臣先生に治療費まだ払っていないし、宿代もあるし、どうしよう。由布梨は指折り数えて、問題を整理した。

 この世界で見つけたばかりの魔法使いを諦めてしまうのは、ひどくもったいない気がした。それに、銀行員的ポジションの穀物代師は自分に務まりそうもない。蹴人もボールのコントロールが出来ないと駄目だろうし、どちらも難しそうに思える。


「どうしたものか、これは……」

 そう言えば、前に基希に仕事は難しいですよね? と問いかけたことがあった。その時、彼は覚えることは多いが、慣れれば大丈夫だ、と由布梨を後押ししてくれていた。あの時は絶対に無理だと断ってしまったが、こういう状況になった以上、相談してみるのも手かもしれないな、と由布梨は考えた。基希も、何かあったら相談してくれ、と快く告げてくれた。


「よし」

 由布梨は基希のところに相談しに行こうと決意して立ち上がった。

 穀物代所に行くと、基希と目が合う。

「どうかしたのか?」

 この前、魔法使いになる、と言い切ったにもかかわらずまた顔を出したのだから、不思議に思われても無理はない。

「基希さん、私を部下にしてください!」

 由布梨は潔く頭を下げた。

「なっ、何?」

「今更だってのは分かってるんですけど、色々あって魔法使いで居られなくなっちゃった上に、職がないとかなーり困る状況でして……」

「わ、分かった。由布梨、君は今から僕の部下だ」

「え、いいんですか?」

「もちろん、この世界に来た時に穀物代師に勧誘した時から、気持ちは変わっていない。ぜひ、ここで働いてほしい」

「ありがとうございます!」

 由布梨は涙目になって喜びをあらわにした。

「どういたしまして」

「私、頑張ります!」

 こうして由布梨は異世界で銀行員の卵になった。



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