092 領主編4 反乱討伐2
『次元跳躍目標、タタラ星系第4惑星衛星軌道上工場衛星。次元跳躍門面裏側。跳躍所要時間は1分の予定』
『よし、11:59に次元跳躍する!』
強行偵察艦(ステルス無人)の偵察情報によると、ファム5にはダグラス伯爵の主力はいなかった。
主力4000はタタラ4に居り、次元跳躍門前で臨戦態勢を取っているそうだ。
ウェイゼン4も次元跳躍門前で1000艦ほどで待ち構えている。
おそらく彼らは、こちらの戦力が万単位なことを知らない。
僕達は工場母艦の次元跳躍で52000艦全艦で強襲をかける。
そしてアノイ要塞3領軍の惑星ウェイゼン4攻略艦隊も同時刻に戦闘開始だ。
『次元跳躍10秒前です。5・4・3・2・1・次元跳躍開始します』
目眩に似た次元跳躍酔の違和感が1分ほど続く。
次元跳躍門と違い次元跳躍機関による次元跳躍は亜空間を介さない次元時空面の強制跳躍だ。
次元跳躍機関の次元防御フィールドが無ければ次元の間に落ちて出てこれなくなる。
巨大な装置であり大型艦でなければ装備不可能となっていてレアな存在だ。
だからこそ、敵の意表を突くことが出来る。そう敗北したプリンスのように。
工場母艦が次元跳躍アウトする。
後ろにタタラ4、前に工場衛星、そのはるか先に次元跳躍門と後ろを見せる敵艦隊。
たまたま次元跳躍アウト先にいた敵艦は次元の裂け目に消えていく。
『次元跳躍終了しました』
『全艦出撃! 敵艦隊を殲滅せよ!』
工場母艦の次元跳躍アウト宣言を聞き、僕は全艦出撃を命じた。
出撃した42000の艦隊が一斉に敵艦隊に襲いかかる。
残り10000は工場衛星制圧に向かう。
『ダグラス伯爵、降伏する気はあるか?』
僕は全チャンネルで降伏勧告をする。
返答なし。
『(仕方ない)殲滅せよ!』
すると次元跳躍門に向かって逃げに入る大型艦。
僕は長砲身5cmレールガン3門を起動すると大型艦に狙いを定める。
間に入り盾になる敵艦を無視してGバレットを撃ち込む。
反乱は許さない。その強い意思を示すことで、後の犠牲者が減らせるならいいと思い、僕は引き金(比喩)を引いた。
速射で連射されるGバレットが間に入った敵艦を粉砕していく。
その先についにダグラス伯爵の乗る敵旗艦が現れる。
直撃、直撃、直撃!
敵旗艦は星屑となった。
その時、神澤社長が戦場を俯瞰する位置、戦闘面から垂直に位置する空間の一点に狙いを定め40cmレールガンを撃ち込んだ。
これは今回の討伐戦のために戦力アップで換装したものだ。
遮蔽フィールドが消え破壊された敵回収艦が現れる。
神澤社長は後顧の憂いを断つため、ダグラス伯爵が転送で逃げることを許さず敵回収艦を始末したのだ。
回収艦が破壊されたことで慌てた敵有人艦が降伏の声を上げる。
ここで撃沈されたら確実に死ぬからだ。
僕はその1艦1艦に侵食弾を撃ち込んで無力化した。
ここにダグラス伯爵の反乱は終了した……かに見えた。
『工場衛星に高エネルギー反応!』
「しまった! 要塞砲か!」
僕の戦いはまだ続くようだ。
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12:00ウェイゼン4攻略艦隊
次元跳躍門を通過してアノイ要塞3領軍のウェイゼン4攻略艦隊が突入する。
前方には惑星ウェイゼン4。その前に展開する防衛艦隊900。
攻略艦隊4500の1/5の戦力だった。
『蹂躙せよ!』
ラーテルの指揮官が吠える。
『我らの武勇を示せ!』
犬族の指揮官もそれに続く。
『早い者勝ちだ! 存分に刈り取れ!』
猫族の指揮官が煽る。
全4500艦が獲物を狙い吶喊する。
その勢いに前代官のミラーがビビる。
『降伏します! やめてお願……』
攻撃を中止した時には既に放たれていたレールガンやビームがミラーの艦隊に襲いかかっていた。
放たれたレールガンやビームを無かった事には出来ない。
そのままミラー艦隊900はデブリとなった。
『地上部隊降下だ。占領するぞ』
惑星ウェイゼン4の首都代官府は制圧された。
住民は友好的でアノイ要塞3領軍も略奪暴行は行わなかった。
悪いのは前代官だけで住民に罪は無いのだ。
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タタラ4工場衛星
要塞砲にエネルギーが充填されていく。
しかし発射までのエネルギーがまだ溜まっていないようなので、僕達は回避行動をとりつつ工場衛星を攻撃していた。
「ああ、勿体ない。なんとか工場を壊さずに制圧出来ないものか……」
僕が悩んでいると専用艦の電脳からメッセージが届いた。
『跳躍弾を発射しますか?』
僕は思い出した。専用艦がレベルアップして、わずかながら40cmレールガンの跳躍弾が手に入ったことを。
敵の要塞砲は外から壊そうとしても簡単には無理だ。
だが内部から壊せばどうにかなる。
僕は40cm跳躍弾の発射を決意した。
「40cmレールガン、跳躍弾発射準備!」
『了解しました。敵ウィークポイントサーチ。何処を狙いますか?』
目の前のスクリーンに敵要塞砲のウィークポイントが脅威判定順にリストアップされる。
しかし、誘爆して破壊するような場所を撃つわけにはいかない。
工場衛星が勿体なさ過ぎる。
これだ!僕はまさにこのために有ったのではないかというウィークポイントを発見した。
「目標、エネルギー伝送チューブ逆流防止回路、発射!」
長砲身40cmレールガンのガイドレールに纏わり付く紫の電磁エネルギーが40cm跳躍弾の弾体に吸い込まれていく。
刹那紫の光を纏った弾体が消えると工場衛星が身震いした。
今にも発射しようとエネルギー圧を上げていた要塞砲の光が急速に光量を落としていく。
工場衛星の周囲にエネルギーが放出される。
反応炉の安全回路が作動し余剰エネルギーが捨てられたのだ。
これで要塞砲は発射出来ない。
僕は駄目押しをする。
「目標、工場衛星司令室。40cmレールガン跳躍弾発射!」
工場衛星内部、一番防御力の高い司令室に跳躍弾が飛び込み破壊エネルギーをまき散らす。
もう要塞砲の引き金を引く人物もいないはずだ。
「よし、制圧部隊を工場衛星に突入させろ!」
こうして第6皇子領におけるプリンス残党の反乱は鎮圧された。
工場母艦がワープアウトした星を間違えていました。
ウェイゼン4→タタラ4 修正しました。