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090 領主編2 領地経営1

 帝国での領土に対する考え方は一風変わっている。

星系領主と惑星領主(あるいは衛星領主)、そして領地領主という考え方があるのだ。

例えばファム星系の星系領主は(あきら)だが、ファム5の惑星領主はダグラス伯爵だとか。

アクア星系の星系領主と惑星アクア3の惑星領主は(あきら)で惑星アクア3の陸地の領地領主はアクア子爵だとか。

自分の持ち物とはいえ大本には上位の持ち主がいて権利を主張出来る。

これは国と国民で土地は国民の個人所有だが国に税金を払う義務があるという関係に似ているかもしれない。

つまり下位に伯爵領や子爵領があろうとも全ての領地は上位の星系領主である(あきら)の物だということだ。

同様に全ての星系は皇帝の物であり、(あきら)に下賜されているだけである。


 僕はその下位にあたる領主と代官にアノイ要塞への参集と、僕への恭順の意思の表明を求めた。

これに応じないということは反逆であり、領地は没収、武力による討伐が法的に認められる。

どうせ討伐されるならと来援と同時に戦闘行動に出る可能性もあり、本人と僅かな護衛のみしかアノイ星系への侵入が認められていない。

これを破ったら即討伐だ。アノイ要塞は臨戦態勢で彼らを待つことになる。

期限は10日で切ってある。

連絡や理由なく期日までに来なければ反逆で討伐対象。

戦争は避けられない気がしている。


 ダグラス伯爵の戦力は2000艦ほど。そこにタタラ星系の工業衛星からどれだけ戦力を補充しているかが問題だ。

どうせ反乱するなら遠慮すること無くドックから新造艦を掠め取っていくだろう。

そこにアクア子爵領軍1500艦が呼応するのかどうか、どこが決戦の場になるのか、頭が痛いところだ。


「また戦争か。その前に地球人を地球に帰さないとならないな」


 僕はアノイ要塞に滞在している地球人に、地球への帰還を求めるかどうか確認を取らなければと考えていた。

とりあえず、事務所のみんなに希望を聞いて、後は社長に任せよう。

僕はアノイ行政府の執務室を出ると事務所に向かった。

中央広場の転送ポートから事務所の転送ポートに飛ぶ。

目の前にある神澤プロモーション・アノイ支所の正面玄関を抜け、お馴染みの社長室へ向かう。


「社長、暇?」

晶羅(あきら)か。暇で死にそうだ」


 僕は社長と冗談を交わし合う。

応接セットに向かいソファーに座る。


「実は真剣な話なんだけど」

「なんだよ、改まって」

「地球に帰れるようになった。社長はどうする?」

「俺か? 俺はステーションで芸能活動が出来ればありがたいな」

「メンバーもだよね?」

「そうだな」


 僕の質問に神澤社長は僕に遠慮すること無く直球で答えた。


「そんな顔をするな。お前もステーションに来い。アノイ要塞中心で領地経営する必要もないだろ」


 僕は知らず知らず悲しい顔をしていたようだ。


「でも、即応体制を取るにはアノイ要塞が一番領地と近いんだよね……」

「ふん。そんなの次の戦いで平定してしまえばいい。俺も手伝う」

「え?」

「まあ、晶羅(おまえ)には、俺の専用艦修理で供出してもらった部品代の借りが残ってるからな。それぐらいするさ」

「社長……。ありがとう」

「ただし、メンバーとマネージャーは帰すからな。戦場に出るのは俺だけでいいだろ」


 両親が亡くなり、世間からバッシングを受けて逃げて、金策のために姉貴も家を空けがちで、僕はすっとぼっちだった。

社長みたいに人との間に壁を作らない人とは初めて会った。

メンバーとの出会いも関係も社長ありきで成立していた。

だから僕は社長のことを僕をぼっちの世界から救ってくれた人だと思っている。

だからポケット戦艦の修理では鹵獲品の金額も考えずに援助したし、それを貸しだとも思っていなかった。

それなのに、命を賭けて一緒に戦ってくれると言う。


「僕もまだアイドル契約が残ってるからね」

「おう。地球に帰ったら働いてもらうぞ」

「了解」

「ちょっとー! 私達もまだ帰らないぞ?」


 紗綾(さーや)が後ろから抱きついてくる。


紗綾(さーや)なんで? もう嫁なんて演じなくて済むんだよ?」

「いや嫁は本気なんだぞ? それより海洋リゾート惑星があるそうじゃない。遊ばせろーー!」

「領地を平定出来たらね。それよりまだ本気なんて(そんなこと)言ってるの?」

晶羅(あきら)っちは自分がどれだけ優良物件か気付いてないだろ? 私は本気なんだぞ♡」

「はいはい、わかりましたよ」

「もー。本気にしてない!」

「冗談は置いといて、みんなはどうするの?」


 いつのまにか勢揃いしていたメンバーに、今後の身の振り方を僕は聞く。


「嫁……続ける」

「社長が地球に戻らなければ、どうせ芸能活動は出来ないわ。それならここに残るに決まってるわ」

菜穂(なほ)は社長から離れたくないんだぞ」

「こら紗綾(さーや)! そんなんじゃないんだからね!?」

「私は晶羅(あきら)に借金をしている身だから完済までは当然残るよ。まだ同じ契約で買取してもらえるんでしょ?」

「そうだった。借金(それ)があったんだ。買取(そこ)はSFOの仕組みを残すつもりだよ。地球経済もSFOからの資源で回っているところがあるらしいからね」


 僕がダイヤモンドを手に入れた時に、買取どころか地球への持ち出しを禁止されたことがあった。

これがステーションの稼ぎの一部だったらしい。有益な希少金属や鉱物等を小惑星から採取し、地球に持ち込んで換金する。それがゲーマーに渡される現金となっていた。

だから取引をステーションが独占しコントロールする。

買取拒否と持ち出し禁止はゲーマーに勝手な採取や取引をさせないためのものだったのだ。


「なら傭兵の皆さんは残るんじゃないかしら?」

「そこら辺の聞き取りを社長にお願いしたいんだけどいいかな?」

「おう。任せとけ。うちは全員残るんでいいな? あ、自称自治会は強制送還しとくからなw」

「私は帰してくださいよーーー!!!」


 マネージャーの沙也加さんの叫びは全員に無視された。

唯一の料理人を逃すわけがない。


 結局、地球人は僕達と傭兵の皆さん、そして一部の艦隊が残ってくれることになった。

艦隊の彼らは他にも地球人が誘拐されている事実を知り、奪還のために残ってくれた。

地球人総員255名、うち132名が残留、残りの123名は無人艦の護衛を付けて地球へと帰って行った。

携帯食料での約2週間の旅だ。結構辛い旅になる。往路がステーション内だったことはある意味幸せだったようだ。

無事に帰還することを祈る。

ついでにステーションに次元通信を送り、当時ステーションに滞在していなかった傭兵さんの参加有無を聞いてもらう。

是非とも此方(こちら)に来たいということで、帰還部隊が着き次第無人艦の護衛と一緒にアノイ要塞へ来てもらうことにした。



**********************************



 そして約束の日が来た。

穀倉地帯を持つ惑星の星系代官4名中1名無断欠席。

タタラ星系代官は出席。

惑星アクア3領地領主アクア子爵は出席。

惑星ファム5惑星領主ダグラス伯爵は無断欠席だった。

出席者は全員、あきらに恭順の意思を示した。

そしてタタラ星系代官から工業衛星がダグラス伯爵に奪われたことを報告された。

ダグラス伯爵とプリンス系代官1名が反逆者となり討伐艦隊が派遣されることになった。

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