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088 放浪編28 決戦顛末

 逃げたプリンスは行方不明だった。

ステーションに戻り無茶な地球人狩りでもしないかと心配していたが、ステーションには戻っていないらしい。

なぜそんな情報が手に入ったかというと、ステーションに残っていたミーナから連絡が来たからだ。

さすがに欺瞞情報の可能性も検討されたが、ステーションの制御キーが晶羅(あきら)に譲渡されたため疑いが晴れた。

この決戦の情報が帝国本国に伝わり、事後承認で皇子同士の決闘扱いとなった。

第13皇子が乱心して第6皇子に戦争を仕掛けただなんて発表出来るわけがないからだ。

結果プリンスは廃嫡、皇子の地位を失った。

そしてプリンスの支配領全てが晶羅(あきら)に帰属することが公式に通達された。

その帰属処理の一環としてステーションの制御キー譲渡を行うように指示があったのだそうだ。

強いものが生き残る帝国の論理が適用されたようで、帝国では皇子の争いは自らを高め合う手段と考えられ、正々堂々の決闘であれば奨励されているとか。

その思想がちょっと怖い。

今後プリンスに近い勢力が敵に回る可能性が高く、ここで目立つのは不本意だった。


 アノイ要塞に仕掛けて来たプリンスの残存艦隊は降伏。

僕はアノイ3軍の司令をアドバイザーに今後の戦力割り振りや領土運営を話し合っていた。

無人艦約4900艦は制御権を書き換えられ、アノイ3軍各軍に1500艦ずつと地球艦隊に約400艦が配備された。

残り約100艦は有人艦で、支配地域の騎士としてプリンスに従わざるを得なかった者と、プリンスに心から従う譜代の臣下、利害関係で繋がった貴族とその配下に分かれていた。


「僕は人を処分するのは向いてないな……」


 僕には何も出来なかった。

プリンスは討たなければ自分が危ないという危機感で撃てた。

だが、(しがらみ)や打算で繋がった人達を、しかも降伏した人達をどうにかする判断は、高校生の僕には荷が重く出来なかった。


「支配地域の騎士は、支配者が変わればそこに従うだけです。それが処世術でもあるのです」


 元プリンスの被支配下にあったグラウル領軍司令のハンターが、当事者でしか解らない気持ちを代弁する。

そこには支配地域の騎士は助けるようにという助言が含まれていた。


「そうだね。彼らにはそうする以外に選択肢が無かった。だから今は僕に従うという選択をしてもらおう」

「それがよろしいかと」


 カプリース領軍のノアも小領地混成軍のジョンもその判断に頷く。


「厄介なのは、それ以外です。ギルバート伯爵のように逆恨みで厄介事を持ち込む可能性が高いです」

「利権に群がる協力者なら、利権さえ約束すればどうにかなりそうだけど、そんな協力者は簡単に裏切るよね」

「はい」

「今回の戦いは皇子同士の決闘扱いなんでしょ? 彼らはその助太刀となると法的立場はどうなるんだろ」

「それは勝った皇子の一存でどうとでもなる立場ですな」

「うーん。この場合の処し方なんて全くわからないぞ」


 処刑をしても良いし、助けても良い。

裏切りを恐れるなら処刑。更正を信じるなら助ける。

人となりも知らない人を、どう判断すれば良いというのだろう。


「専用艦を僕の支配下に入れ外部からコントロール出来るようにする。裏切ったら専用艦ごと自爆。それで命は助ける」

「それは良いアイデアですが、問題は直接晶羅(あきら)様を害する可能性です」

「身辺警護はラーテルが行おう。裏切るような人材を御するのも皇子の甲斐性ですぞ」


 ラーテルの白兵戦闘力って、想像しただけでも恐ろしいぞ。

とりあえず面接で危険性の低い人から解放して後は檻の中でもしょうがないな。


「後は支配下に入った領土の運営か……。前途多難だとしか思えない!」

「そこは領土の貴族か代官を呼び出せば良いのです。プリンスに臣従しているなら解任。従うなら猶予期間を設けて任せてみれば良いのです」

「おそらく従う気がない奴は呼び出しに応じない。それは謀反と同義だ。また戦争だな」


 ハンターは武将というより内政に向いているようだ。的確なアドバイスをしてくれる。

ジョンはどこまでもラーテルだった。


「野良宇宙艦の(母艦)は僕の個人戦力とする。

そしていつまでも野良は可哀想なので、呼び名を工場母艦とする。

所属艦は教育後各領軍に順次分配していくつもりだ」

「野良宇宙艦は無人艦よりも自立性が高い。そこを活かせるような教育が必要だろう」

「僕もそう思っている。彼らは人格とアバターを持っているから、一つの生命体として扱う必要があるだろう」

「それなら、むしろ領軍に配備せずに独立した軍とされるのが良かろう」

「そうだな。その軍を随時各領軍に派遣すれば同じことになるね」


 ハンターの言葉に僕も頷いた。

あとは、工場母艦の製造力で戦力を増強し続ける必要がある。

そのための鉱物資源(材料)を工場母艦に与えなければならない。

それは新たな領土から持って来れるようにしよう。

僕のDNAを得て工業母艦が「子を沢山産むからね♡」と言い出したのが心配だが……。

なぜデレたのかが謎だ。


 残りは地球の扱いだ。

アノイ要塞にいる地球人で帰りたい人は帰してあげたい。

ステーションにいて戦いたい人はリクルートしよう。

そして今後のステーションいやSFOはどう扱うべきなのだろう。

地球の次元跳躍門(ゲート)を閉じてロックするというのも選択肢の一つだ。


「ああ、やることが多すぎる!」


 だが、僕が投げ出すわけにはいかない。

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