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084 放浪編24 父母来訪

 アノイ要塞を訪問した輸送艦に乗っていたのは、フード付きのマントで身を隠した人物と、白衣を着た医療関係者と見られる男女、護衛または護送担当の武官といった人物たちだった。

彼らはアノイ要塞の行政塔を訪れると、人目を避けるように行政府管轄の特別区に入って行った。

(まこと)しやかに流れた噂では負傷した地球人が帝国の他星系で治療を受けて帰って来たのだという。



 真・帝国代表団が極秘会談を持つために来訪した。

代表の(かえで)と技術スタッフ2人、軍事部門の交渉役と護衛5人の計9人だ。

また奇襲攻撃を受けないように、訪問団が敵艦隊と鉢合わせしないようにと(かえで)艦に次元通信を送って日時を調整した。

真・帝国代表団だというのは極秘扱いなため、彼らは地球人の佐藤とそのお目付け役という設定だ。

佐藤は怪我をしていたため、帝国の他星系にある医療施設で治療を受け、いま帰って来たという設定になっている。

これはアノイ要塞には、まだ敵のスパイが紛れ込んでいる可能性があるための措置だ。


 スパイに関しては自称自治会の連中の腕輪から盗聴により情報が抜かれていた可能性が高い。

これは地球人がステーションからアノイ要塞に移った際に、アノイ要塞ステーション両方の所属とされていたために、ステーションの管理者つまりはプリンスが自由に情報を得られるようになっていた。

地球人はずっと情報を抜かれて監視されていたわけだ。

だから地球人が叙勲されたことを知り、地球人が帝国での地位を築いてしまう前に奴隷化しようと、あの伯爵が派遣されたのだ。

だが、その後の奇襲とかそれだけでは説明出来ない部分もあり、工作員(スパイ)が入り込んでいる可能性が懸念されている。

この工作員(スパイ)も腕輪を持っているはずだ。しかも現在はアノイ要塞管轄の腕輪だ。

ここから逆にスパイを炙り出せ無いかと、いま情報を精査しているところだ。


 僕は社長とアノイ要塞の各司令コマンダー・サンダース、ノア、ジョン、ハンターと共に極秘会談に臨んでいる。

名目は保護観察対象である佐藤の病状把握と、お目付け役から佐藤の様子を報告してもらうという体だ。


「国家の代表に対して、こんな居心地の悪い対応で申し訳ない」


 コマンダー・サンダースが真・帝国代表団に謝罪する。


「なんの。私達が正体を表すことが兄様の立場を悪くするのだから当然のことだ」


 (かえで)が姫モードで答える。


「悪かったな(かえで)。この室内は遮蔽フィールドにより盗聴も通信も不能だ。安心してくれ」


 晶羅(あきら)の言葉の通り、この会議室は極秘会議用の特別室で内部からの通信波を漏らさず、外部からのセンサーでも内部の情報を得ることは不可能となっていた。


「それでは、こちらから自己紹介しよう。僕が八重樫晶羅(やえがしあきら)。帝国の第6皇子に認定されているが、元々帝国人じゃないので、帝国への忠誠というものは持ったことも意識したこともない。

ですが、自分の身を守るために、今はその立場を利用させてもらおうと考えています。

続けて隣がアノイ要塞地球人代表の神澤氏だ。彼は地球での僕の雇い主だ。アノイ要塞では地球人をまとめてもらっている、頼れる兄貴的存在だ。

その隣から順にアノイ要塞司令のコマンダー・サンダース。カプリース領軍司令ノア。小領地混成軍司令ジョン。グラウル領軍司令ハンターだ。

アノイ要塞の防衛軍の面々だ。彼らの領主から僕は嫁を貰っているので嫁の実家の領軍となる。

彼らは僕の後見として僕の戦力となってくれている」


 僕はアノイ要塞側の出席者を紹介し、真・帝国代表団の自己紹介を促す。


「私が現在の真・帝国代表、八重樫楓(やえがしかえで)。名前で判る通り晶羅(あきら)兄様の妹だ。

隣は真・帝国軍将軍の南方提督。真・帝国軍第三艦隊司令だ。今後の協力体制を話し合うために来てもらった。

続けて遺伝子技術者の二人。晶羅(あきら)お兄様が真・皇帝の因子を持つ御子であるという判定のために来てもらった。

これは真・帝国の者共に納得してもらうための措置であって、私自身は兄様であることを疑ってもいないことを付け加えておく。

他5人は護衛だ。

極秘会談なので、大人数で来るわけにもいかずに、このような人選となった」


 僕はその遺伝子技術者の二人が気になって仕方なかった。

それは僕の幼い頃の記憶にある両親そのものだったからだ。


「間違っていたら申し訳ないけど、その遺伝子技術者の二人は父さんと母さんじゃないのか?」

「やっぱりわかった? 確かに地球でのお兄ちゃんの両親だよ」

「すまないな晶羅(あきら)、いや晶羅(あきら)様。私達は本当の父母ではない。

貴方様の遺伝的な父は真・皇帝陛下なのです」

晶羅(あきら)様、騙した形になってごめんなさいね」


 男性と女性技術者が答える。やっぱり父母だ。

遺伝的な父母ではないかもしれないけど、僕を育ててくれた八重樫の両親だ。

それと(かえで)、地が出てるぞ地が。


「父さん、様はやめてくれ。僕にとっては父さんも母さんも掛け替えの無い両親だよ。遺伝的な親なんて関係ない」

「そうか。ありがとうな晶羅(あきら)。ところで花蓮(かれん)は?」


 八重樫の父の一言で僕は大事なことを思い出した。

借金返済でいっぱいいっぱいになっていて、否応なしに戦わされて、命を狙われる後継者争いにまで巻き込まれて、SFOに参加した最重要課題である姉貴花蓮(かれん)を探すことをすっかり忘れていた。

いつかは連絡が付くと思っていたが、連絡しているということ自体がそもそもプリンスの嘘だった。

僕達が強制的に帝国に連れて来られたのも、敵勢力の攻撃による緊急事態ではなく、シナリオの書かれた紛れも無いアブダクションだった。

となると姉貴の行方不明も帝国の、いやプリンスの仕業だったのではないか。

プリンスは定期的に地球人を攫って奴隷化していた。

そこに姉貴が含まれていたと考えるべきだろう。

僕が第6皇子であると判った時から、姉貴と双子であることはバレていた。

帝国では男子以外の皇位継承は認められてないらしい。

となると皇帝の因子を持っているはずの姉貴はどんな扱いを受けてしまうのだろう。

獣人嫁達は、嫁にしてもらえなければ子種だけでもと言っていた。

冗談ではなく、この帝国では有能なDNAは出世に繋がるため争ってでも手に入れたいものなのだ。

姉貴にスペシャルなDNAがあると知られた後、姉貴はどんな扱いを受けているのだろうか。


「やばいよ。姉貴は帝国のおそらくプリンスの手に落ちた。救出しなければ……」


 僕が顔を青くして押し黙っていたので八重樫の両親も深刻な顔になっていた。


「そうか……。我々も地球に奪還の戦力を送っていたのだが、うまく行かなかったんだ」

「それ、プリンスは地球人に守らせていたんだよ。

しかも姉貴は……いや僕も地球を守るためと騙されて奪還に来てくれた味方と戦っていたんだ。

SFOか……とんだ食わせ物だったな」

「なんてことだ。我々が今も地球圏で戦っているのは地球人なのか!」

「今も? やっぱりステーションは地球圏にあるんだね?」

「ああ、地球に居座って我々と戦っている」

「僕達は地球は敵勢力に制圧されたって聞かされてた。今も制圧しているのはやっぱりステーションの方なんだね?」


 僕は地球の敵がプリンスだったことを明確に認識した。

侵略する意思はないだ? 地球という星には興味がないが、地球人や野生動物という資源を攫っていたんじゃないか。

プリンスは、いや帝国は地球を蝕む侵略者だったんだ!


「これは早期に協力体制を結ぶべきですな」


 南方提督が提案する。


「それはボクも依存はないよ」

(かえで)、僕もだよ。アノイ要塞のみんなもいいかな?」

「「「「私どもは晶羅(あきら)様の臣下ゆえ依存はありません」」」」

「その前にDNAチェックだ。真・帝国の臣下に証拠を見せなければならない」


 父さんの提案に母さんがDNAチェックのキットを取り出す。

僕の細胞を採取し専用の機械にかける。


「わかっていましたけど、間違いなく御子よ」

「なら実務を詰めていってかまわんな?」

「任せる!」


 かえでがすっかり忘れていた姫モードに戻って南方提督に許可を出す。

これで真・帝国も僕の協力者になった。

今後は南方提督が駐在武官を選んで送って来るそうだ。

そこでホットラインを繋いで協力していくことになる。

今後佐藤の名はその駐在武官のものとなるだろう。


 真・帝国代表団はこっそり帰って行った。

少ない時間だったが僕は育ての親に会い、失った6年の歳月を埋めるように語りあった。

まさか両親にも帝国の追っ手が迫っていたとは。

その追求を逃れるために死んだと偽装していたとは……。残していくことで逆に僕達を守ったとは……。

苦労した姉貴はいろいろ言いたいだろうけど、僕は責める気になれなかった。

血の繋がらない育ての親だが、僕は生きていてくれて本当に良かったと思った。

次回は29日の予定です。

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