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008 修行編8 遭遇2

10話投稿9話目です。

 僕は後悔した。早々に敵の情報を収集するべきだったからだ。

敵の存在は残骸(デブリ)を回収しているんだから把握していた。

でも自分の仕事はデブリ回収だからと、敵の危険性を失念していた。

まさか、ただのデブリ回収装備で敵と遭遇することになるとは思ってもいなかった。


「戦闘があった場所なんだから、まんま危険宙域だよなぁ」


 僕は独白しつつ敵の動きを注意深く観察した。

探査プローブはこちらの動きを追って向きを細かく変えている。

だが、本体と思われる岩塊の中身は動く気配が無い。

敵は撃墜認定されるような被害があるはずで、今は岩塊を纏って隠れている。


「もしかして死にかけじゃないのか?」


 レーダー波も出ていないし、どうやら受動的(パッシブ)探査でしかこちらを把握していないようだ。

僕はいつでも動けるようにして艦を止めると探査プローブと岩塊に精密探査をかけてみる。


「これで敵がアクションをおこせば撤退だ」



 探査結果は岩塊内に何かあるという結果だった。敵からのアクションは無い。

だが、探査プローブはこちらを常に視界に捉えているようで、隙を伺っているだけなのかもしれない。

角度や射程距離によっては敵の武器の攻撃圏内に入ってしまう可能性もある。


 僕は艦の右腕で小さな岩塊を掴んで盾にすると左腕のドリルを前にしてレーダーを切る。

レーダーを切ることで受動的探査から逃れられ、敵の目は探査プローブの光学観測装置(カメラ)だけになるはずだ。

でも、こちらも敵が見えなくなるわけで、ドリルの先を映すカメラを頼りにして敵の岩塊に接近するしかなくなる。

条件は同じだが動けるだけこちらが有利だろう。

デブリ掃除用のレーザーしか持たない標準採掘仕様のレンタル艦に出来るのは、これぐらいのものだからね。


 右腕の岩塊に隠れるようにして左腕のドリルを前に出して慎重に接近する。

やっぱり敵は動かない。


 そうこうするうちに探査プローブの警戒ライン内側に入り込む。

敵の岩塊とは有線で繋がっているから、この(ケーブル)を切ってしまおうか?

ケーブルを摘んでレーザーで切れば最悪でも探査プローブを回収できる。

いくらになるかはわからないけど、敵艦発見の証拠にはなるだろう。


「相手の目を完全に潰すことが出来るし、一石二鳥かもしれないな」


 僕は悩んだ。これは敵対行動だ。非戦闘艦として見逃してもらっていたのに、こちらが手を出したせいで攻撃されるということもある。


「敵は動()ないのか? 動()ないのか? こんな所で命をかけるためにプロゲーマーになったんじゃないんだよなぁ」


 だが、このおそらく敵艦を手に入れられれば報酬はとんでもないことになるだろう。

そもそもプロゲーマーになったのは、高校を退学にならないために入学金を稼ぐためだ。

それを払って余りある報酬が目の前にある。


「プリンスには悪いが、これで引退、平和な高校生活に戻るのもいいんじゃないか?」


 この時の僕は、あまりにも安易な考えに囚われてしまっていた。

まさか、この後あんなことになるなんて…。

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