083 放浪編23 黒幕
次回を5月28日月曜日と告知していましたが、間違えて今日5月25日に更新してしまいました。
これにより週1更新を改め1日置き更新に変更いたします。
すみません。間違えて更新したため何度か修正が入ると思います。
奇襲して来た勢力がどこの勢力の者なのか捕虜を尋問する。
「そのような裏仕事は、皇子の関わることではありません。ラーテル族に任せて下さい」
尋問はラーテル族が得意だということで、ジョンに任せた。
最強ラーテル族がマジで怖くなって来た。味方で良かった。
しかし考え方を変えれば、僕達に変わって汚い仕事をやってくれるんだと、感謝の気持ちが沸き上がってくる。
だが、事は簡単に終わった。
「やめてくれ! 何でも話すから、ラーテルだけは勘弁してくれ!」
捕虜が1秒で落ちた。
だがラーテル族がいると恐怖で話せなくなるようで、ラーテルに退室してもらった。
僕やアノイ要塞幹部が所謂マジックミラー越しに尋問を観察する。
尋問は強面の犬族尋問官が担当している。
捕虜はラーテル族がいるというだけで何でも話すと言う。
「貴様の所属はどこだ」
いきなり直球の質問を犬族尋問官がする。
そこはもっと簡単な質問からじゃないのか?
「俺はボイス男爵家の家臣だ」
吐いたよ。この人簡単に吐いたよ。
「ボイス男爵って、誰の寄り子だ?」
「ギルバート伯爵ですな」
僕の質問にコマンダー・サンダースが答える。
ギルバート伯爵の関わりが簡単に発覚した。
後はその上はどうなのかってことだな。
「ギルバート伯爵の寄り子だな。首魁は誰だ。伯爵の子飼いだけの軍の規模じゃないだろ」
犬族尋問官が突っ込む。
「俺は知らない。ギルバート伯爵から出陣要請がボイス男爵に来て、男爵の臣下の俺は出撃しただけだ」
「バカな事をしたな。お前らが狙ったのは第6皇子だぞ」
捕虜は愕然として項垂れる。
「旗艦には誰が乗っていた?」
「わからない。見たことのない戦艦だった。ギルバート伯爵の戦艦なら見たことがあるから違う」
そりゃそうだろう。ギルバート伯爵の戦艦は接収してアノイ要塞にある。
既に占有権を解除されて誰でも乗れる汎用艦になっている。
これは上位階位で権限を持つ者なら解除可能なのだそうだ。
つまりステーションでRIOの権限を解除出来なかったのは、僕より上の階位の権限を持つ者が居なかったということだ。
あのプリンスでさえ僕より下だと、あの時点で認識していたということだ。
そういや、あの時1億Gの借金を背負わされたんだった。
その借金をたてに貧民に落とされていた可能性があったんだな。
「ギルバート伯爵かそれより上位の者は見たのか?」
「いや、見てない。そもそも俺のような寄り子の家臣にまで顔を見せるようなお方達ではない」
「つまり、ギルバート伯爵もしくはそれより上位の者が、あの軍を集めたということだな」
「それ以外にボイス男爵が係る理由がない。あの……男爵は処罰されるのでしょうか?」
捕虜は自分の証言によりボイス男爵が処罰されることに気付き青くなった。
このままじゃ口を噤んでしまうだろう。
僕は尋問室の中に通じているマイクを取る。
「ボイス男爵が僕への襲撃を知らずにやったのなら、騙した親玉の責任だ。僕に恭順するなら助けよう。
だが、知った上での襲撃参加なら容赦はしない。そうでないことを証明してみせろ」
「今のは?」
「皇子様だ」
「わかりました。知っていることを全て話します。男爵の減刑をお願いします」
捕虜が完落ちした。
「そういや、名前を聞いてなかったな」
「俺はブライアン=セーブル。二級騎士です」
「知っている騎士はいたか? その寄り親ば?」
「ダグラス伯爵に連なる寄り子の騎士を見た」
「ギルバート伯爵とダグラス伯爵では、ダグラス伯爵の方が古く力があるな。それら伯爵家があがめるのは誰だ」
「第12皇子を支援しているというのは聞いたことがある」
「ブライアン、それはいつの話だ」
「もう2年ぐらい前だと思う」
あー確定か。
僕が皇子認定されてプリンスは1つ落ちたって愛さんに聞いたからね。
今が第13皇子なら、2年前は第12皇子だったはずだ。
プリンス自身か、子飼いの暴走かわからないけど、第13皇子派の仕業というのは確定だ。
「黒幕はプリンスで確定だね。少なくとも第13皇子派が敵であることは確定だ」
「プリンス皇子は晶羅様の皇子認定で第12皇子から第13皇子に格下げされてましたな」
「うん。だからブライアンの言う第12皇子はプリンスだよ」
コマンダー・サンダースが思い出すように補足してくれる。ありがたい。
とりあえず、この後の尋問は犬族尋問官に任せよう。
僕達は尋問室(の隣)から去った。
さて、これからどうするか。
真・帝国の軍を加えれば、おそらくプリンスの軍には勝てるだろう。
だが、プリンスとの戦いに真・帝国を使うと他の皇子や帝国自体と敵対関係になりかねない。
真・帝国を表に出すのは今じゃない。
僕はまだ帝国と事を構えるわけにはいかない。
まだまだ帝国の皇子だとアピールして生き残らなければならない。
「となると、戦力として期待出来るのは野良の宇宙艦だな。そういえば、帝国への申請はどうなっているんだろう」
そんなことを考えながら歩いていると、今回の戦闘のきっかけがスパイによる情報漏洩に端を発しているであろうことを思い出した。
僕は尋問室(の隣)にとって返しマイクを握る。
「もう一つ質問したい。今回の襲撃の切っ掛けは何だ? なぜこのタイミングだったんだ?」
尋問室の中に僕の声が響くとブライアンと犬族尋問官が驚き、尋問官はマジックミラーの方を見てしまった。
慌てて犬族尋問官がブライアンに返答を促す。
「出撃準備で艦隊を集結させたのは数日前だったと思います。
次元跳躍門の前に艦がいるから叩けと命令され出撃したのは今日のことでした」
「つまり、僕が単艦出撃することを把握していたわけだね」
「はい。確実に仕留めろと。撃沈した者には賞金まで出るはずでした」
「その情報源は知らないよね」
「はい。情報源は俺の立場ではわかりません」
「ありがとう」
あー。アノイ要塞にスパイが居ることも確定だわ。
プリンスにはミーナが仕えていた。猫族はプリンスと近いのか?
猫族を疑っていたらキリがないな。特に犬族に相談するわけにはいかないぞ。
また不仲になってしまったら面倒だ。
それとも帝国のサポートAIの有機端末である愛さんか?
愛さんは帝国の備品だからなぁ。
僕は事務所に帰ると意を決して愛さんに質問した。
「愛さんは帝国に忠誠を誓っているんだよね?」
「いいえ。私はサポートAIですので、質問に答えることしか出来ません」
「でも、人によって答える内容を制限してる」
「それは管理者権限を持つ者が制限設定をしただけで、そこに個人の意思は存在していません」
「つまり管理者が設定すれば、ここで話した内容も管理者の質問で話すということだよね?」
「はい。そうなります」
「(うわー。やっぱりそうなのか?)愛さん、僕の情報をプリンスに話した?」
「はい。サポートAIの本体は別にありますので、そちらに収集した情報は別の端末から引き出し可能です」
「いま制限設定はどうなっているの?」
「晶羅様優先で設定されています」
「え? つまり?」
「裁判以降は、プリンス様は晶羅様の情報を取得出来なくなっています」
「それって上位者は下位者に情報を取られないということ?」
「いいえ、個人ロックが掛かったということです。晶羅様が第6皇子の権利を主張して初めて有効になりました」
「つまり、僕がプリンスの情報を得ようとしても拒否されるってこと?」
「はい。第1皇子が晶羅様の情報を得ようとしても拒否されます」
「僕優先になるのは、個人情報以外の情報閲覧権限ということか」
「はい。そうです」
「うん。ありがとう。ごめんね」
「はい?」
愛さんじゃなかった。疑ってごめんね。
そうなると別にスパイが居るか盗聴されているかだな。
ん? 盗聴?
「愛さん、腕輪の情報収集はロックが掛かっているの?」
「はい。裁判以降は掛かっています」
「それは、僕の身近な人でも?」
「晶羅様の身内や家臣も閲覧制限されています」
「つまり、身内でも家臣でもない人達からは情報が取れるということだね」
「そうなります」
「僕の身内あるいは家臣と認定されていない人物は、このアノイ要塞に居る?」
「はい。います」
「それは誰だ?」
「自称自治会の方々です」
「あいつらか!」
思わぬ所にスパイがいた。
しかも本人達が意識していないというのが困ったところだ。
自称自治会なら、僕が真・帝国と接触していることは知らないはず。
その情報は漏れていない。
しかし、僕が単艦で出撃することは誰もが知るところだった。
その情報を腕輪で収集した情報から掠め取っていたのだろう。
なんて悪知恵の働く男なんだ。
「愛さん、自称自治会の腕輪の情報を閲覧出来なくできるかな?」
「はい。晶羅様の権限でロックします」
「え、出来るの? 腕輪の管理もサポートAIだってこと?」
「はい。そうです」
愛さんが居てくれて助かった。
AMIDA様よりレビューをいただきました。
打たれ弱いので褒めていただきありがとうございます。