077 放浪編17 嫁入り 襲撃
077.1 放浪編17.1 嫁入り
キャリー、マリー、ジェーンのケモミミ嫁3人が完成した新居にやって来た。
獣人が僕の配下に入ったことで犬族猫族不仲問題が解消されてしまったため、何を忖度したのか新居がとんでもないスピードで完成してしまった。
3人は玄関に入ると三つ指ついてお辞儀をした。
「「「晶羅様、末永くよろしくお願いします」」」
「こ、こちらこそよろしく。とりあえず好きな部屋を使って」
僕は覚悟も出来ないまま嫁を迎え入れてしまった。
まだ当分は時間があると思っていたので心の準備が出来ていなかった。
彼女達は早々に自分の部屋を決めると荷物の搬入を指示した。
彼女達の後ろには何人もの引っ越し作業員が待機していた。
僕はリビングのソファーで荷物搬入の様子をボーっとして見ていた。
搬入が終わると作業員はお辞儀をすると速攻で消えた。
何を忖度しているんだ?
暫く待つとくつろいだ部屋着にエプロンを付けたマリーがリビングにやって来た。
「晶羅様、ご夕飯はお食べになりましたか?」
マリーが聞いて来る。マリーは料理が得意なんだそうだ。
「食べてないよ。あ、様はいらないよ」
「では、ご夕飯の用意をいたしますね。晶羅様」
様は抜いてくれないようだ。
マリーはキッチンに行く。
「昼の戦闘で疲れていらっしゃいませんか? マッサージでもしましょうか?」
ジェーンが薄い部屋着に着替えてやって来ると、僕の目の前に正座して僕を見上げて来た。
「い、いや大丈夫。それと敬語はいいから」
「そうは行きません。それではお隣に座ってもよろしいですか?」
「ああ、かまわないよ」
ジェーンが僕の右側に座ると「失礼します」と一声かけて右腕に抱きつきしなだれかかって来た。
僕はなすがままになるしかなかった。
「あら、私が最後でしたの?」
キャリーがスケスケのネグリジェで現れると、自然に僕の左側に座り左腕に抱きついてしなだれかかる。
白いネコミミがピクピクと動き僕の頬をくすぐる。
僕はガチガチになって動けなくなった。
「ご夕飯が出来ましたよ」
固まったままの僕にマリーの助け舟の声が響く。
僕はソファーから立つと8人掛けのダイニングテーブルに向かう。
僕と6人の嫁が座るために用意されたテーブルセットだ。
地球人嫁は偽装結婚なので今はいない。
「晶羅様はこちらへ」
マリーが長テーブルの一番奥正面の席に僕を誘う。
食事は僕の正面に1つ、右に2つ、左に1つ用意してある。
席次で一悶着あるかとヒヤヒヤしていると、初めから決まっていたかのように右手前にキャリー、その隣にマリー、左にジェーンが座った。
犬族が一歩引いて譲ってくれたようだ。
だがわざわざ猫族の隣に犬族が座るとか、わだかまりがないことをアピールしている。
僕は争いが起きないことに胸を撫で下ろした。
僕のメッセージが少しは役に立ってくれたのかもしれない。
食事が終わり世間話をして過ごす。
食事の後片付けはジェーンが率先してやってくれた。
キャリーも手伝っていたが苦手なようだ。
「ジェーンの実家の小領地ってどういった扱いなの?」
「准男爵に帝国領の惑星を丸ごと与えるわけにはいかないので、惑星の土地を多数の領主で分割して納めているのです。それが小領地です」
「なるほど、同じ惑星に爵位持ちが沢山いるんだ。そんなので揉めないの?」
「はい。ラーテルがほぼ支配していますから大丈夫です」
「(あーやっぱり)それで代表なんだね」
自分の故郷に興味を持ってもらえたことにジェーンが喜んでいる。
これは他の嫁にも聞かないとならないな。
「キャリーの実家、カプリース領はどうなの?」
「私の実家は惑星を1つ統治していますわ。しかし気候が悪くて赤道周辺しか住めない過酷な土地ですの」
「ああ、氷に覆われてるのか。帝国の技術なら惑星改造も出来そうなのに大変だな」
「惑星改造をするにはお金が全然足りませんわ」
「いつかは温かい星にしたいね」
「はい♡」
あ、これ皇子として約束しちゃった感じになってないよね?
「マリーのグラウス領は、この前遠征で見てきたよ。二つの衛星を行ったり来たりって面白いね」
「どうしても巨大ガス惑星からの反射と影で住むのに適さない環境になるんです」
「でも、その巨大ガス惑星の資源で潤うんじゃない?」
「残念なことに採掘の仕事はありますが、ガスの権利は帝国が握っていて儲かりません」
「そうだったのか。いつかはガス惑星を自分達のものにしたいね」
「はい♡」
あ、これも皇子としての約束じゃないんだからね?
「お風呂が沸きましたよ♡」
いつのまにかジェーンがお風呂の用意をしてくれたようだ。
キラリ☆とキャリーの目が光る。マリーもモジモジしている。
三人とも何か期待しているようだけど、一緒には入らないからね?
「旦那様、お先にどうぞ。私達は後から入ります」
「そうか。じゃあお言葉に甘えて先に入るよ(良かった一緒に入ると言われなくて)」
この時の僕は後という意味を完全に履き違えていた。
新居の風呂は大人数が使うことを想定して温泉地のような大浴場に改装してあった。
僕は小さくてもいいけど、嫁が順番待ちとなるのは可愛そうだと思ったからだ。
最初はお試しで仮の嫁入りのはずだったので、牽制のために偽装結婚のアイドル嫁三人も住むはずだった。
そうなると小さな風呂では時間がもったいない。
それ故の大浴場だった。
「うーん。いいお湯だな」
僕は身体を洗うと大きな湯船に入った。
こんな大きな湯船に独りきりなんて贅沢な入浴だ。
実際、宇宙空間に浮いているアノイ要塞の水資源というのは、そこまでふんだんに使えるわけではない。
それが文字通り湯水のごとく湯船に張られている。
そういや、水道代って払っているんだっけ?
宇宙というと何でも循環濾過してピーも飲水に変えるというし、ここもそうなのかな?
嫌なことを考えてしまった。
今は存分にお風呂を楽しもう。
その時、脱衣所から洗い場に出る入り口の戸が開いた。
「後から入って来たよ♡」
嫁が三人裸で乱入して来た。6個の膨らみが眼福でありました。
下は見ないようにしましたとも。ええ。
「ぼ、僕はもう出るから!」
僕は逃げた。まだその覚悟は出来ていない。
入浴した後、各々の部屋に戻り就寝する。
僕は個室に入ると元々使っていたシングルベッドで眠りについた。
朝目が覚めると右半身が重かった。
右腕に白い髪の頭が乗り、右脇腹に柔らかい膨らみの感触が押し付けられている。
僕の胸には腕が回されており、右太ももには脚が巻き付いている。
右側に顔を向けると美しいネコミミ少女が寝ていた。キャリーだ。
「まさか、やっちゃったのか? 僕は僕の僕に問いかける。記憶はない」
キャリーが目を覚ます。
「おはようございます♡ 晶羅様。昨夜は「やめてー」先に寝ちゃうなんてズルいです♡」
「え?」
「はい?」
僕の貞操は守られたようだ。
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077.2 放浪編17.2 襲撃
グラウル星域に敵勢力が現れ緊急出動が発令された。
グラウル領軍と有志が救援に向かおうと準備をしていると、惑星アノイの次元跳躍門に転移の兆候が現れた。
そういえば、プリンスに次元跳躍門の向こうとは通信出来ないので、連絡艦で通信を行うと教えられていたけど、それは全くの嘘だった。
グラウル領とは超次元通信が繋がっていた。
姉貴と連絡出来ないというのがプリンスの嘘だとすると姉貴の身が心配だ。
その超次元通信で敵のグラウル星域来襲が告げられ、僕達は緊急出動しようと集結していたわけだが、続報で敵艦隊が去ったことが告げられた。
敵艦隊はグラウル領を強力なセンサーでサーチした後、次元跳躍門を通り去って行ったのだと言う。
そしてどうやら今目の前に転移して来ている敵艦隊がその艦隊であるらしい。
次元跳躍門を使おうと集結していた僕達と次元跳躍門を出て来た敵艦隊、まさに衝突の危険の中混戦状態になってしまった。
『レールガンは近すぎて無理だ。味方に当たる。ミサイルとビームで応戦するんだ!』
僕はグラウル領軍と地球有志軍に指示を出す。
『若様! 必ず我らが守ってみせます!』
グラウル領軍司令、ハンターが吠える。
誰が若様だ。
後方ではカプリース領軍と小領地混成軍が緊急発進して来る。
『若! お世継ぎを残す前に死なせはしません!』
何を言ってるんだノアは!
しかし、敵艦隊とグラウル領軍+地球有志軍が混戦状態で手が出せない。
艦の数は1500対1100と互角。お互い泥沼の打撃戦になっている。
いつかは決着が付くが、お互いに大被害を受けるだろう。
ここにカプリース領軍と小領地混成軍2000が加われば数で勝っても動けなくなって不利だろう。
何か良い手は無いものか……。僕は思案する。
そうだこれだ!
『グラウル領軍と地球有志軍は次元跳躍門に飛び込め!
そして亜空間で反転、次元跳躍門から戻り敵の後ろにつく。
カプリース領軍と小領地混成軍は僕達が次元跳躍門に入ったら一斉攻撃だ!』
『『『了解した』』』
僕の号令で全軍が動く。
タイミングは超次元通信(広域通信機S型の機能に最初からあった)を使って送る。
思い込みとは凄いもので、使えないと思っている機能は、今まで全く使われる事がなかった。
突入完了のタイミングと再突入のタイミングを、超次元通信を送受信出来るアノイ要塞経由で行う。
『よし、突入完了。カプリース領軍、小領地混成軍一斉射撃!』
『『了解!』』
僕は戦術兵器統合制御システムで、グラウル領軍と地球有志軍の次元跳躍門突入完了を確認し、アノイ要塞に超次元通信を送った。
そしてカプリース領軍と小領地混成軍の斉射完了タイミングをはかり射撃中止命令を出す。
『カプリース領軍、小領地混成軍射撃中止!』
『『よし、攻撃中止。回避だ!』』
『グラウル領軍、地球有志軍再突入準備。3・2・1・再突入開始! 敵艦を各個撃破せよ』
『了解。全軍再突入!』
僕達は敵の後ろを取るべく次元跳躍門からアノイ星域に飛び出す。
だが敵艦隊は予想外の行動を取る。
『敵艦隊突入して来ます!』
『なんだと!』
敵艦隊は僕らのアノイ星域突入のタイミングで逆に次元跳躍門に突入して来た。
そしてそのまま去って行った。
「社長、この敵は今までと違わないか? 行動に知性を感じる」
「グラウル星域が強力なセンサーでサーチされたと言っていただろ。あれをアノイ星域でもやったんじゃないか?」
『コマンダー・サンダース、敵艦は星系をサーチして行ったか?』
『はい、サーチされました』
僕はコマンダー・サンダースと通信を交わし、そのサーチがあったことを確認した。
「どうやら、奴らはアノイ星域とグラウル星域で何か探しものをしていたようだね」
『晶羅! 綾姫ちゃんの艦が!』
突然通信に菜穂さんの声が響く。
どうやらアヤメ艦が損傷したらしい。
『再突入の時に敵艦と接触したみたい』
「綾姫の怪我は?」
『それは大丈夫』
「ああ、良かった。艦は直せばいいからな」
奇策を奇策で返された。敵の正体はいったい何なんだ。
2018年5月24日、加筆改稿しました。
綾姫が心配な状況で嫁とイチャイチャしていた印象になってしまっていたため、2話に分割して話の順番を変えました。
これは別日の出来事です。
そして栞位置を変えないため、077に2話合わせて投稿します。