076 放浪編16 第6皇子軍
ちょっと短いです。
アノイ要塞の宇宙港に総勢約3000人の将兵が整列している。
上座にはアノイ要塞司令のコマンダー・サンダースと3軍の司令ノア、ジョン、ハンターが立っている。
そして壇上には僕が立たされていて、将兵に向かって訓示を述べなければならない。
これも戦力増強のため。こうでもしないと後継者争いであっという間に飲み込まれてしまう。
今回はマイクに翻訳機が付いている。日本語から帝国語へ翻訳されてからスピーカーで流される。
「アノイ要塞に集いし領軍の皆さん、帝国第6皇子の八重樫晶羅です。
僕の両親は遺伝子研究の専門家でした。
両親が亡くなった時、世間は僕と姉が9歳差の双子という不自然な生まれであることを持ちだして、バッシングして来ました。
両親が遺伝子研究のために9年の年月を空けて僕達双子をもうけたことが原因です。
実験体、化け物、そういった中傷を受けました。僕はあなた方と同じ差別の被害者です。
だから僕にはあなた方に対する差別意識が全くありません。
あなた方は獣人と呼ばれることに怒りを覚えるそうですが、獣のDNAを持つことをむしろ誇るべきだ。
現皇帝陛下の血筋には、あなた方になされた研究の結果が導入されているそうです。
そのあなた方を差別することは皇帝陛下の血筋を差別するに等しい。
獣人を差別用語にするのは、あなた方の心の持ちよう次第です。
獣人と呼ばれることを誇ろうではありませんか。
獣耳尻尾、地球人にとっては魅力的な要素です。
信じられないかもしれませんが、ケモミミしっぽを付けたコスプレといわれる仮装をする人達もいます。
だからあなた方からの嫁入りに、僕は仄かな喜びを感じていたぐらいです。
猫族と犬族は仲が悪いと聞きました。
これは悪い統治者のテクニックです。
虐げられているという不満を、帝国は猫族犬族をお互いに対立させて矛先を変えていたのです。
例えば、一方では犬族の前で猫族を優遇して見せる。その一方で猫族の前で犬族を優遇する。
なんで相手ばっかり贔屓を受けるんだという状況を、場所場所で一方的に使い分けるのです。
それにより帝国に向けられるべき不満を、同じ虐げられた立場同士に向けさせられたのです。
だから、同じ虐げられし立場で争うのではなく、虐げる奴らに抗おうじゃないですか!
僕が第6皇子であることは、伯爵から先日不敬罪で訴えられて初めて知りました。
第13皇子にその事実を隠され罠にかけられ、僕がこの地位に気付かなければ、僕は伯爵の奴隷になっていたでしょう。
なので今僕には自分を守る力すらありません。
共に戦っていただけないでしょうか? お願い致します!」
僕は頭を下げる。
「うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「gjwふぇいおhぎうぇおhgbくぁk! アキラ! アキラ! アキラ!」
歓声が上がる。とんでもない熱狂だ。
一人一人に翻訳機が無いので何を言っているかわからないけど、次第にアキラコールになって、受け入れてもらえたのはわかった。
獣人のみんなには、どうやら同士として受け入れてもらえたようだ。
これで3000の艦を戦力に加える事ができた。
全て領主の私兵なので、そのまま第6皇子軍となる。
彼らの期待を裏切らないためには、帝国でそれなりの地位を確保し、みんなの地位も引き上げてあげないとならない。
帝国正規軍の艦隊は、皇子の継承争いにはノータッチだ。
アノイ星系防衛任務でしばらく駐留することになったが、星系防衛以外にはタッチしない。
それも近々に最寄りの駐屯惑星に帰る手筈だそうだ。
冷たいようだが、プリンス側に付かないだけでも有難いと思おう。
もっと戦力を増強しなければならない。何か良い手は無いものか。
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事務所社長室応接セット。
「野良の宇宙艦を狩れるいい場所はないかな?」
つい独り言が出てしまう。
そんな独り言に愛さんは丁寧に答えてくれる。
「野良宇宙艦の巣がありますが、危険なので討伐作戦も組まれたことがありません」
「巣?」
「巨大要塞型の野良宇宙艦が、子を生むように野良宇宙艦を製造しているのです」
「へー。それを鹵獲したら戦力増強し放題だね」
「ご冗談を」
「ちなみに、どこにあるの? 近いの?」
「次元跳躍門をくぐれば近いのですが、逆侵攻防止のため向こうの次元跳躍門が閉ざされています。
いわば近くて遠いという認識です」
「ふーん。どうすれば解除出来るの?」
「帝国本国の許可がいりますが、技術的には難しくありません」
「なるほど(ならやっちゃうか)」
戦力を無限に生み続ける巨大要塞なんて是非とも手に入れたいな。
「帝国本国の許可って、どうやって取ればいいの?」
「作戦計画と申請書の書式さえ整えれば審議してもらえます。そこで許可が出るか出ないかということです」
「作戦計画か。ただの偵察でいいかな? 実際戦ってどうこうは出来ないから」
「それで申請を出しておきます」
「ダメ元だしね。第6皇子だって書いといたほうがいいかな?」
「そうですね。そうします」
偵察で行って侵食弾でもぶち込んで来よう。
そのまま逃げて、次元跳躍門閉鎖。
しばらくしたら様子を見に行ってナーブクラックで服従させたらどうだろう。
獣人を差別用語にしたことを後悔しました。
他に良い呼び名が無い!
2018年5月24日改稿加筆しました。




