表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/179

074 放浪編14 ギルバート伯爵

0時台読者の皆さん、遅くなって申し訳ありません。

「伯爵様、今回の地球人の措置はどうされるのですか?」


 ギルバート伯爵家の家臣が伯爵に尋ねる。


「あのお方から、全員貧民扱いにして奴隷化して良いと言われておる。

戦功勲章を貰った奴らもいるようだが、そんなものは不敬罪でも吹っ掛けて無効にしてやる。

とにかく対象は全員だ。借金でも何でも理由をつけて奴隷化する。

若い女は愛人にしてやろう。男共は戦争で使い潰す」


 伯爵が悪い顔をして答える。

家臣もいつものことなのか頷き、下衆な顔をする。


「女は私どもにも回してくださいよ」

「堅物の補佐官には言うなよ。やつはディッシュ伯の息子だ。面倒なことになる」


 伯爵の裏の顔が曝け出される会話だった。



*********************************


 ギルバート伯爵は開口一番、地球人にとって寝耳に水の台詞を吐いた。


「なぜ戦わん。いつまでも難民として温々していられる立場ではないとなぜ気付かん」

「伯爵、ここには該当する地球人はいない。その有難い訓示は地球人を集めてからにして下さい」


 演説を始めるギルバート伯爵をコマンダー・サンダースが制止する。

僕達は苦虫を噛み潰した顔をして退室した。


「社長、やっぱり戦いに出ていない地球人の立場が危ういみたいだ」

「プリンスは俺達を被害者だと言っていたんだがな。帝国本国の考えは違うようだな」

「嫁という立場で回避出来るかがポイントになるね」

「他の地球人にも勲章持ちの庇護下に入るように通達しておこう。偽装だと念押ししてな」



 僕達地球人255人は自称自治会、反自治会派関係なく大会議室に集められた。

一応、神澤社長が通達を出しているけど、どれだけ真剣に捕らえてくれたかは不明だ。


 演壇にギルバート伯爵と家臣、そして護衛騎士が立つ。

地球人の一部(主に自称自治会)は未だに状況を把握せず、帝国正規軍が地球奪還に来てくれたと思っているようで期待の目を向けている。

社長の通達を信じた反自治会派の人達は警戒している。


「地球人の諸君、私は帝国伯爵ガザン=ゼム=ギルバートだ。貴様らの腐った性根を叩き直しに来た」


 ギルバート伯爵の不穏な台詞に地球人達の顔が凍りつく。


「まず、除外対象者を発表する」


 護衛騎士が帝国軍の補佐官だったようで伯爵の言葉を受けて説明を始める。


「わが帝国正規軍は戦いに赴かない者達を鍛え直しに来た。つまりアノイ要塞に来て戦闘を経験した者達は除外する」


 これにより反自治会派の144人が除外された。


「続けて受勲者の配偶者も除外するので申請するように」


 これにより反自治会派全189人の残り45人が除外された。

社長の通達を信じて行動した結果だ。

今回の通達は自称自治会にも伝えてあったのに、頭がお花畑で信じていなかったようだ。

まあ、戦闘に不参加だったので叙勲された者がいないのだから当然といえば当然だが。

でも反自治会派の受勲者に庇護を求めれば良かった話ではある。


「残りの者達はなぜ戦わない。難民の立場に胡座をかくだけで地球奪還が出来ると思っていたのか!」

「俺達はプリンスの庇護のもとに難民をやっている」

「そうだ、そうだ。プリンスが難民になったのは帝国のせいだって頭を下げたんだぞ!」

「プリンス? お前ら地球人の管理は既に帝国本国の手に渡っている。彼はもう関係ない!」

「そんな……」


 ギルバート伯爵がキレ気味に言う。

自称自治会のやつらが断罪されるのはどうでも良かったんだが、それは僕らだって初耳だ。

プリンスのやつ、あれだけの事を言っておいて、その後の事は帝国に丸投げかよ。

僕だって愛さんとの問答の中で難民としての立場がいつまでも続かないと気付けなかったら危なかった。

だがプリンスの言っていたことが信用出来ないとなると、いろいろ考え直さないとならない。


「あなた方地球人は本日を持って難民としての立場を失う。

帝国4級戦功章持ちは一級市民扱い、帝国5級戦功章持ちは二級市民扱いになる。

また戦場に出た経験のあるその他の者と受勲者の配偶者は仮で二級市民扱いとする」

「除外された俺達は……?」


 補佐官の言葉に自称自治会の奴が恐る恐る聞く。


()()扱いだな。我々正規軍が庇護して(飼って)やらなければならないな」

「そんな……」


 ギルバート伯爵のその言い方は庇護とは名ばかりの奴隷に対する物言いだった。


「なんで俺達ばっかり! ふざけるな!」


 自称自治会の連中が騒ぎ出す。

アホな自称自治会だとはいえ、あんまりな扱いだった。

その時、タブレットを操作していたギルバート伯爵が、こちらの方を向きニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。


「ああ、忘れていた。帝国に借金がある者も返すまでは貧民だ。お前も連れて行く」


 僕の背中が凍りついた。

綾姫(あやめ)が指名されてしまった。

隣の補佐官がまたかという表情を浮かべて直ぐに消した。

何かある。


「それは今借金を返してもダメなのか? 彼女は僕の嫁なんだが。

だいたいこういった事は猶予期間を設けるもんだろ」


 綾姫(あやめ)の危機に僕はつい口を出してしまった。

ギルバート伯爵が僕の方を睨みつける。


「私に落ち度があると言いたいのかね?」

「こちらは帝国の法を知らない。嘘をつかれてもわからない。

幸いサポートAIがいる。確認していいよな」

「黙れ! 伯爵の私を愚弄(ぐろう)するのか!」

「何をそんなに焦っているんですか? 法を確認されたら困ることでも?」

「不敬罪だ! こいつを捕らえろ!」

「「「何すんだてめぇ」」」


 傭兵の人達も怒って暴れてしまう。


「地球人全員、不敬罪だ! 捕まえろ!」


 伯爵の一言で僕ら地球人は全員逮捕されてしまった。

勲章は剥奪。全員が貧民に落とされた。


「彼らには裁判を受ける権利がある。勝手な処分はしないでください!」


 護衛騎士の帝国軍補佐官が口をはさむ。

僕らはかろうじて裁判を受けさせてもらえるようだ。



********************************



 帝国式の裁判は帝国本国の裁判官が自らの人格をコピーしたAIによってジャッジを行う。

捜査や証拠集めが無く即裁判というのは問題だが、スピーディーな裁判が行えるのは魅力だ。

それに「不敬罪」という貴族による一方的な罪状でも、きちんと裁判が行われるのは良心的だろう。

被告人には弁護人をつける権利があるが、僕には帝国にそんな知り合いはいない。

苦肉の策で法律も知識として持っているであろうサポートAIの有機端末愛さんに弁護人を頼んだ。


 裁判所はアノイ要塞行政府塔のごく小さな部屋だった。

室内奥の一段高くなった場所に裁判官AIが据え置かれていて、その向かって左に告訴人席、右に被告人席があった。

日本のような中央に被告人席があって晒し者になるような配置ではない。

これは裁判中に反訴が出来るという帝国の一風変わった裁判制度によるものだった。

お互いが相手の罪を指摘し合い裁判官AIがジャッジする。それが帝国の裁判だった。


「これより裁判を始める。罪状は不敬罪」


 裁判官AIが裁判の開始を宣言する。


「被告人八重樫晶羅(やえがしあきら)は告訴人ギルバート伯爵に不敬を働いた事を認めるか?」

「いいえ。認めません」

「告訴人ギルバート伯爵は被告人八重樫晶羅(やえがしあきら)が不敬を働いたことを認めるか?」

「はい。認めます」


 ギルバート伯爵がニヤニヤしながら言う。


「判決を言い渡す」

「(はあ? 何それ?)ちょっと待って、僕はギルバート伯爵を我が妻の誘拐未遂で告発します。

不敬と言われた言動は、それを回避するためのものです!」

「告発を受理します」

(危ねー。貴族が不敬罪だって言い出したら即不敬罪確定じゃんか)

「被告人ギルバート伯爵は告訴人八重樫晶羅(やえがしあきら)の妻を誘拐しようとしたのか」

「いいえ。借金の回収のため身柄を拘束しただけです」

「意義あり! その借金の回収がギルバート伯爵に委ねられたという証拠がありません」

「それはここに」


 ギルバート伯爵が債権譲渡の書類を提出する。


「ギルバート伯爵に借金回収の権利があることを認めます」


 プリンスの野郎、やりやがったな。後で覚えていろよ。

どうする。どうする。


「返済条件」


 弁護人の愛さんが耳元で囁く。


「(そうか!)謝金の返済条件が改悪されています。ある時払いの催促なし利息なしが条件だったはずです」

「そんなものは債権を持った者の気持ち次第だ」

「金銭での返済は打診したはずだが?」

「私は返済より本人の身体での回収を望んだだけのことだ」

「異議を却下します。貴族にはその権利があります」


(ちくしょう。貴族なら何をやっても良いって言うのか!)


 貴族が言えば法律も契約もねじ曲がる。帝国も腐っているということか。

あのプリンスも笑顔の裏では貴族として平気で嘘を並べ立てていたんだな。

悔しい。僕にも地位身分があれば……。

あれ? 僕の地位って帝室機密だったような?

僕は賭けに出た。


「ギルバート伯爵を八重樫晶羅(やえがしあきら)に対する不敬罪で告発します」

「何を言ってるんだ! 貧民風情が伯爵に不敬罪を問うなど出来るものか! そうだろ裁判官」


 だが裁判官AIが固まってしまう。違うと言えないのだ。

その間に僕は愛さんに詰め寄る。


「愛さん。僕の地位身分は何だ?」

「それは禁則事項になっており、お答え出来ません」

「愛さん、このままだと僕は破滅だ。命令する! 僕の身分は?」

「帝室機密に関わる内容のため、お答え出来ません」

「愛さん、プリンスも関わっている。絶対命令だ! 僕の身分は!」

「絶対命令受諾。晶羅(あきら)様の身分は帝国第6皇子です」

「(はあ? なんだそれ? だがこれで勝てる)帝国第6皇子として問う。僕より伯爵の言葉を信じるのか?」

「何をバカなことを。皇室に対する不敬罪も追加だ!」


 ギルバート伯爵が吠え、裁判官AIがフリーズを解いて動き出す。

どうやら帝国への問い合わせが終了したあるいは情報統制が解けたようだ。


八重樫晶羅(やえがしあきら)氏の身分が帝国第6皇子であることを確認しました。

ギルバート伯爵を不敬罪並びに皇子妃誘拐未遂で有罪とします」

「ギルバート伯爵に虚偽の容疑で捕らえられた地球人も解放して欲しい。

彼らは僕の身内と部下だ」

「ギルバート伯爵は解任。帝国正規軍に地球人の解放命令を出します」

「そ、そんなバカな! あの追加皇子だと!」


 身分の力怖えー。

身分で何でも左右できるという世界は問題だが、これはこれで仕方ない。

伯爵が身分を振りかざして無謀なことをしなければ、こんなことにはなってないんだからね。

上に立つ人間が正しい行いをしなければ、この帝国はダメになるな。


 さて、地球人を売ったプリンスの野郎はどうしてくれようか。

すみません。帝国裁判制度の表現不足を補いました。

ギルバート伯爵の反応を追加しました。


2018年5月24日加筆改稿しました。

表面的には伯爵が悪役に見えないということで悪巧みのシーンを入れました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ