066 放浪編6 共同戦線2
僕達は戦場にいた。
アノイ行政府から出動要請があったのだ。
惑星アノイでも次元跳躍門に予兆が確認されると緊急出動が発令される。
地球圏との違いは、次元跳躍門とアノイ要塞の間にはアステロイドベルトの緩衝帯が無いという点だ。
そのため敵艦隊は次元跳躍門を高速で突き抜けて来る。
小惑星や岩塊に衝突する危険が無いからだ。
我々3軍の艦隊も敵艦に衝突されないように展開しないとならない。
次元跳躍門を内包するダイヤ型の正方形を描き、その右下方のラインに猫族のカプリース領軍がアノイ要塞方向に渡って帯状に展開。
同様に左下方のラインに犬族のグラウル領軍がアノイ要塞方向に渡って帯状に展開。
次元跳躍門からアノイ要塞に向かい半分ほどの位置から正面に、地球軍含む小領地混成軍が展開している。
カプリース領軍とグラウル領軍は展開面を90度ずらしている。
敵艦隊を挟んで迎撃する態勢だが、射線がお互いに向き合うと、仲の悪い猫族と犬族で撃ち合う危険があるため、敵艦隊を斜めに迎撃するような配置になっている。
小領地混成軍はその撃ち漏らしを正面で引き受けることになる。
僕達は神澤社長、僕、綾姫の3人で艦隊を組む。
艦の諸元は以下。
神澤社長の専用艦は初出だ。
『KAMIZAWA』
艦種 ポケット戦艦
艦体 全長500m 重巡洋艦型 2腕
主機 対消滅反応炉E型 高速推進機C型
兵装 主砲 長砲身35cmレールガン単装1基1門 通常弾 80/80
副砲 20cm粒子ビーム砲連装3基6門
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 D型標準2基2門 最大弾数4×2 ミサイル残弾 8
防御 耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
ビームキャンセラー(対ビームバリヤー)
耐実体弾耐ビーム盾D型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)C型
電子兵装 対艦レーダーB型 通信機B型
空きエネルギースロット 0
状態 良好
『AKIRA』
艦種 艦隊指揮艦(艦隊旗艦)
艦体 全長250m 高速巡洋艦型+α 2腕 次元格納庫S型 (巡洋艦 2 突撃艦 1 ステルス艦 1 艦載機『ふぁんねる』1 外部反応炉 外部兵装 外部電脳 予備部品多数)
主機 対消滅反応炉G型(+外部反応炉 対消滅D型) 高速推進機C型
兵装 主砲 長砲身5cmレールガン単装1基1門 通常弾 50/50 特殊弾 20/20 特殊弾 20/20
(外部兵装 長砲身40cmレールガン単装1基1門 通常弾 40/40 他)
副砲 30cm粒子ビーム砲単装1基1門
20cm粒子ビーム砲単装1基1門
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 D型標準2基2門 最大弾数4×2 ミサイル残弾 8
艦載機用ミサイル D型標準2基×1 最大弾数4×2×1 ミサイル残弾 8
防御 耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板
ビームキャンセラー(対ビームバリヤー)
耐実体弾耐ビーム盾E型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)C型
電子兵装 対艦レーダーS型 広域通信機S型 戦術兵器統合制御システムS型 サブ電脳D型 (外部電脳A型)
空きエネルギースロット 9
状態 良好
『ふぁんねる』
種別 攻撃機 (ステルス)
機体 全長25m
主機 熱核反応炉G型 高速推進機G型
兵装 主砲 15cm粒子ビーム砲連装1基2門
ミサイル D型標準2基搭載可能
対艦刀E型 1
防御 耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
遮蔽フィールド(隠蔽装置)E型
電子兵装 対艦レーダーF型 通信機F型
空きエネルギースロット 0
状態 良好
『AYAME』
艦種 突撃艦
艦体 全長200m 巡洋艦型 2腕
主機 熱核反応炉C型 高速推進機E型
兵装 主砲 長砲身20cmレールガン単装1基1門 通常弾 80/80
副砲 20cm粒子ビーム砲連装1基2門
15cm粒子ビーム砲連装1基2門
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 なし
対艦刀C型 1
防御 耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
耐実体弾耐ビーム盾E型 1
停滞フィールド(バリヤー)E型
電子兵装 対艦レーダーE型 通信機E型
空きエネルギースロット 0
状態 良好
神澤社長のSFO歴は長いらしく融合による育成で専用艦がかなり強力なものになっている。
そこで稼いだお金で芸能事務所を設立したらしい。
しばらく芸能事務所に専念していたが、業績が悪化して稼ぎに戻ったんだそうだ。
だがメインは芸能事務所なので、SFOに居ながらも所属タレントの芸能の道を模索していたということだ。
小領地混成軍司令のジョンさんと神澤社長の話し合いで僕達地球軍の方針を決めた。
地球軍は艦隊単位での防衛戦ということになった。
生き残ることを前提に出来るだけ敵艦を撃破する。
ジョンさんもそれでいいということだ。
「撃ち漏らしても、後ろにアノイ要塞があるので問題ありません」
ジョンさんはそう言っていた。
要塞というぐらいでアノイ要塞は地球にあったステーションより武装が上らしい。
本気の斉射の時は、小領地混成軍は射線を避けるために、エリア外への緊急回避が必要になるという注意を受けた。
社長との事前の打ち合わせで、僕は外部兵装と特殊弾の使用、無人艦の運用を秘匿しようということになった。
これは地球でも起きた面倒事を回避したいということからであった。
まあ、命の危険がある場合は、その限りじゃないんだけどね。
「僕達は命を大事にで行っていいんだよね?」
「ああ、そうだ。鹵獲も考えなくていい。撃墜しろ」
「僕達3艦の艦隊指揮は、社長に任せるよ。綾姫も無理しないでね。借金なんて焦らず開き直ればいいんだから」
「おう」「うん。わかった」
「よし、晶羅は情報収集を始めろ。綾姫はアキラ艦の護衛を任せる。俺は長距離射撃で敵艦を撃つ。晶羅はその後中距離の敵艦をビームで撃墜しろ」
「「了解」」
僕は戦術兵器統合制御システムを機動する。
データリンクの対象は地球軍全艦。通信網も一括して制御する。
これも外部電脳があるおかげだ。
更にデータリンクを小領地混成軍とカプリース領軍グラウル領軍の3軍の指揮艦艇にもこっそり繋ぐ。
戦場の全体把握は生き残るために必須だ。
「さてアノイ宙域の敵はどんな奴らなんだろう」
その時、アノイ管制塔から緊急通信が入った。
『佐藤が軟禁状態から逃げた! 奴は専用艦に乗って戦場に出た。気をつけろ!』
僕はアノイ要塞にもデータリンクを繋げ、監視情報を引っ張る。
後方から佐藤の専用艦が接近して来ている。
光学観測機器を向ける。見たことのある艦だ。
僕は佐藤艦を厳重監視対象に指定し、各種レーダー各種観測機器を向けた。
その時、信じられない光景を見た。
『拙い! 全艦回避! 佐藤艦がレールガンを発射した! PKだ! 回避! 回避!』
僕は地球艦隊全艦に警告を発する。
佐藤艦の目標は……。
「社長! 避けて!!」
佐藤艦のレールガンが神澤艦に吸い込まれるように当たる。
大型艦ゆえに動き出しが遅いのだ。
「社長ーーーーーーー!!」
佐藤艦はあの雷鳴艦隊の戦艦だった。
その大口径レールガンが神澤艦に直撃していた。