006 修行編6 フリー回収1
10話投稿7話目です。
行政区の転送ポートからギルド格納庫に来る。
ギルド格納庫10番の待機室に入りパイロットスーツに着替える。
目の前にはお馴染みのレンタル艦10番。今日も標準採掘仕様の2腕装備。
手順通りにハッチをくぐり、レンタル艦10番のCICに入ってパイロットシートに座る。
艦の電脳と僕の脳が直結する感覚がして一瞬で艦の全てを掌握する。
今日はフリーのデブリ回収クエストだ。
撃墜権を設定されたデブリを回収してもいいし、権利が切れたあるいは権利が設定されていないデブリを回収するのも有りだ。
とりあえず戦闘の多い宙域を調べる。
艦の電脳がステーションのデータベースにアクセスして、戦闘記録から宙域を絞る。
条件は直近1ヶ月で戦闘が多い順に5ヶ所。
しばらく待つと候補宙域が絞られ、眼前の仮想スクリーンに宙域が色分けされてナンバリングされる。
「よし、ここの一番近い4番に行ってみよう」
艦の電脳に伝えると、電脳が管制室とやりとりをし発進許可がでる。
僕はレンタル艦10番を4番の宙域に発進させた。
『目的宙域に到着します』
艦の電脳が目的宙域到着を知らせて来る。
宙域に接近すると仮想スクリーンに無数の光点が現れた。
その宙域で作業中の採掘艦の数々だった。
誰もが考えることは同じようだ。
「そりゃ一番デブリがあり近場で楽な所に人が集まるさ」
ここへ新参者が割り込む勇気は持てなかったので、他をあたることにする。
仮想スクリーン上の一番遠い宙域を選ぶ。電脳が航路変更を管制室に伝え許可が出る。
僕はレンタル艦10番を3番の宙域へ向けた。
ここは遠いためか、ご同業は若干少ない。
仮想スクリーンには各艦の専有宙域が表示されていた。
早い者勝ちでギルドの許容する最大宙域を専有しているようだ。
昨日作業した宙域もギルドクエストで専有されている宙域だった。
1度に操業できるのはその宙域単位になると艦の電脳が教えてくれる。
操業済み宙域にはグレーの色が被っていて便利だ。
僕も余っている宙域に専有指定をかける。
『おい! そこのR10、その宙域は俺が予約済みだ他をあたれ!』
急に通信が入る。いやいや、一応ギルドの規定を調べたけど、宙域の予約なんてなかったぞ。
これが有名な新人イビリってやつか? それともローカルルールでもあるんだろうか。
『こちらR10。すみません、新人なものでギルドの規定しか知らなくて、何か別のルールでもあるんですか?』
絡まれると面倒なので一応下手に出ておく。
『ああ、新人か。俺達は宙域をX軸方向に直進しながら操業しているんだ。だから進路上の宙域は譲りあう。おまえも向こうの空いている宙域から直進してこい」
(なるほど、現場の判断で効率的に作業しているんだ)
確かに交差する航路で操業したら危なくてしょうがない。
納得の行く話だ。ここは素直に従っておこう。下手に出ておいてよかった。
『わかりました。ご指導ありがとうございます』
よくよく見てみるとグレーの四角柱がいくつも宙域を貫いている。
僕は先ほどの専有指定を外して、空いている始点となる位置を指定しなおす。
中心部は既に取られていて端っこの方になった。
「さあデブリ回収開始だ」
僕は始点に着くと艦を止めてレーダーとセンサーで広域探査をかける。
今回のフリー回収では、無価値のデブリは放置だ。
デブリ掃除をするのは航路内であり、航路の安全のために掃除の報酬がついているのだ。
今回のような宙域では報酬なしでデブリを消滅させるモノ好きはいないってことだね。
ただ、艦体で押しのけて他人の操業宙域にデブリを動かすと当然怒られる。
そんなデブリは掃除対象だ。
艦には停滞フィールドという便利なバリアーがあって、低速のデブリなら停滞フィールドに捕まってデブリを押しのけるようなことはない。
だが30m級の作業艇には停滞フィールドはあってもそんなに高性能ではない。
相対速度が停滞フィールドの性能を上回れば、デブリを押しのけてしまう。
艦の電脳に指示して価値のあるデブリと進路上の邪魔になるデブリを色分けさせリアル映像に被せる。
価値のあるデブリは握って回収。邪魔物はレーザーで原子に分解する。
この時、射線上に他の艦がいないかどうか気を使う。
効率よく作業をして直進すると一区画終わってしまい、次の宙域を専有指定する。
デブリが殆ど無いからだ。
「サクっと終わらせて中心近くに進行しよう」
とうとう宙域の端まで来てしまった。
ハズレだ。美味しい所は先に来た連中に抑えられていて、小さな装甲の残骸ぐらいしか無かった。
しかもデブリが薄くて数も多くない。おそらく拡散済みなんだろう。
手間と時間がかかっただけだった。
「これは明日から考え直さないと拙いぞ」
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