060 放浪編1 ステーション
新編、放浪編のスタートです。
とうとう異世界転移いたしました。
タイトル詐欺解消!
突然僕の頭にぐらりと目眩にも似た違和感がする。
まるで最初にアブダクションされた時の違和感のようだ。
『みんな、無事?』
メンバーに通信を送るも返事が無い。いや、通信が出来ないのかもしれない。
僕はステーションとのデータリンクを試みる。
無線、有線、量子通信、全ての試みが失敗する。
管制塔との通信も同様だった。
「後は有視界か……」
空気を排出して専用格納庫のハッチを開ける。
これは動いてくれた。ハッチが開いていく。
管制塔に繋がらないので発進許可が出ず身動きが取れない。
緊急時なら発進しても大丈夫だろうか?
こんなことで違反行為だとされても困るからね。
とりあえずレーダーを起動し、光学観測でもデータを集める。
レーダーは妨害されている。どういう事だろうか?
目の前には次元跳躍門が見えている。
次元跳躍門とステーションの間にはアステロイドベルトがあったはずだ。
だが次元跳躍門の見える大きさからして、今のステーションの座標は0-0-M1だ。
おそらく、あの違和感は次元跳躍だ。
大型艦には次元跳躍装置があるということなので、ステーションがここまで次元跳躍したのだろう。
よく見ると次元跳躍門が次第に大きくなって行く。
つまりステーションは次元跳躍門に向かっている。
「え? 地球圏から離れるつもりか? 僕達を収容したままで?」
よほどの緊急事態なのだろうか。
先ほどの振動はステーションが攻撃を受けたということかもしれない。
どうする。このまま何も解らずに連れ去られていいものか?
よし、僕は専用艦を発進させる決意をした。
「ステーションは地球防衛の要だって説明だったのに。そのステーションが逃げたら地球はどうなるのさ!」
僕は専用艦を格納庫から出そうとする。
管制塔が機能していないので、進路がクリアーではないからゆっくりと進む。
その時、専用格納庫のハッチが閉まりだした。
慌てて艦を止める。慣性を殺すために軽く逆噴射もかける。
ハッチを開ける指示を出すもハッチは閉まってしまった。
どうやら閉じ込められてたようだ。
(意図的なのか? 次元跳躍のルールなのか? それはわからないが……)
しばらくすると、また目眩に似た違和感がした。
どうやら次元跳躍門をくぐったようだ。
突然、通信機から音声が流れる。
次元の狭間、亜空間に入ったことで、落ち着いたのか、ステーション行政府からの艦内放送だ。
『ステーションに滞在中のゲーマー、いや地球人の諸君、行政官のプリンスです。
先ほどステーションは敵の奇襲を受けました。
突然ステルス機能を搭載した大型のミサイルに襲われました。
次元跳躍門には兆候が無かったので対応出来ませんでした。
ステーションが機能不全を起こした瞬間、敵の大艦隊がステーションを挟んで次元跳躍門の反対側、つまり地球側から現れました」
なるほど、それで光学観測に何も引っ掛からなかったのか。
「私はステーションを守るため緊急次元跳躍させようとしました。
ですが、損傷により短距離跳躍しか出来ませんでした。
そこで次元跳躍門を起動し、ステーションを次元跳躍させたというのが現状です』
プリンスは、自らの言葉が全員に浸透するのを待つかのように間をとる。
『申し訳ありません。
地球防衛の要であるステーションが撤退したということは、地球は敵の勢力圏になったということです。
ですが、ステーションが破壊あるいは占領されてしまっては、反撃も出来ません。
私は苦渋の決断で撤退せざるを得ませんでした。ですが必ず反撃し地球を奪還します。
それに皆さんのお力を是非ともお借りしたい。よろしくお願いします』
音声だけどプリンスが頭を下げているのが分かるような「よろしくお願いします」だった。
地球奪還といえば大事だけど、地球に帰りたい地球を守りたいという気持ちは僕にもある。
どこに連れて行かれるのかは不安だけど、ステーションは修理が必要だろう。
それが出来る場所となると、帝国の主要施設がある星ということになる。
あるいは、次元跳躍門を出た先でステーションを降りることになるかもしれない。
次の次元跳躍門こそが、地球の次に狙われる次元跳躍門だろうからね。
そうなったらブラッシュリップスのみんなと離れ離れにならないように気をつけないと。
これ重要だぞ。
『跳躍先は惑星アノイの予定です。到着後、今後の活動のご説明をします。
食料他の物資は行政府から提供させていただきます。
不幸中の幸いですが、物資は潤沢に存在しています。
亜空間では敵も襲って来れません。しばらくは自由にお過ごしください。
なお、ここに居られる方の大半は模擬戦などでたまたま来ていた方々だと思います。
緊急招集であればコピーロボットが代役をしていたはずなのですが……。
このようなことで地球を離れてしまった結果、地球で行方不明扱いとなってしまうでしょう。
地位や職を失ってしまう方も出てくるかもしれません。
重ね重ねお詫び申し上げます。精一杯のお詫びは帝国よりさせていただきます』
「あ、僕も行方不明で長期欠席扱いか……」
プリンスの言葉に僕も大事なことに気がついた。
「まだ2学期に出席出来てない! どうしてこうなった!」
それより、もう地球に帰れないかもしれないという不安は心の底に押し込めた。
『社長、事務所に集合しよう。みんなも集まってくれ』
ステーションの通信が回復したということは、ステーションのシステムから独立してる専用艦の通信なら復旧しているだろう。
そう思って通信を送ったが、未だに通信不能だった。
さっきは敵の通信妨害だと思ったんだけどな。
亜空間では通信が出来ないのかな?
だがステーション内部であるなら使えて問題ないはず。
僕は多少の違和感を覚えていた。
「広域通信機起動、妨害解除。RIOに繋げろ」
『RIO。わかるか』
『はい』
RIOの電脳が答える。
「なるほど」
なぜ僕達に妨害をかけるんだ? プリンス。
すみません。
挿入した閑話にまた伏線入れちゃってました。
精神のDNAはフィクションです。
そのようなものは学説も何もありません。
2018年5月24日改稿しました。