048 アイドル編24 中衛戦2
遅れました。すみません。
ステーションを発進し、P2-P1-M9宙域に進出した。
ステーションからアステロイドベルトを抜け次元跳躍門に至る丁度真ん中ぐらいの宙域だ。
射撃補正装置を起動し、戦術兵器統合制御システムのデータリンクで、アヤメ艦と情報共有する。
ここは重力異常が顕著な宙域で長距離射撃の命中率が芳しくなさそうだ。
重力異常は次元跳躍門に近付くほど増えていく傾向がある。
その重力異常の分布が仮想画面いっぱいに表示されている。
「アヤメ、僕の左前方で防御姿勢で待機」
「了解」
僕と綾姫は盾を構えて前方防御の姿勢で敵艦を待つ。僕は盾を右持ちだ。
次元跳躍門を抜けてくる敵艦は亜空間から通常空間へ突入する際に、次元跳躍門表面のどの位置に出現するかを選ぶことが出来ない。
敵艦は次元跳躍門を抜けたその場で周辺の艦と小集団を形成し艦隊となる。
なので艦隊の艦種構成や艦数に偏りが出来る。
僕らが狙うのは、その中でも艦数が少ない艦隊だ。
重力異常で長距離射撃が制限されているのは敵艦も同じ。
なので前方視界を隔てるものが何もない空間で待ち伏せという行為が出来る。
予めレーダーで敵艦隊の艦数を把握してターゲットを絞り、他の味方艦隊と折り合いをつけて待ち伏せる。
その前段階として待機する。
次元跳躍門から突入警報が発令された。
次元跳躍門のシステムに介入があり、敵艦が突入して来たという警報だ。
レーダーから敵艦の情報を得る。味方艦が多すぎて見辛い。
誤射の危険が無い味方は表示から外す。
戦場はまだ前衛艦隊の縄張りだが、直ぐにでも此方まで来るだろう。
僕はレーダー画面を見詰め、僕達に近い比較的艦数の少ない敵艦隊を仮想画面上でタッチ。
味方艦に対して専有を主張する。
僕はそのレーダー画面を綾姫の通信画面の方へ左手で流す。
「味方から異議は無し。アヤメ、あの艦隊をやるよ」
「これね。前衛艦隊との戦闘で3艦減って2艦になってるね」
「ふぁんねるを出す。3対2だ。大丈夫。作戦通りにやれるさ」
「うん。そうだよね!」
綾姫も覚悟を決めたようだ。
敵艦が接近して来る。
先行してくる敵艦の後ろにもう1艦が隠れている。
先行艦は巡洋艦クラス。もう直ぐビーム砲の射程圏内に入る。
残念なことに僕の専用艦にはビーム砲がない。
だが、この距離で取り回しの良くないレールガンを撃つしかない。
「迎撃開始!」
僕の合図でアヤメ艦がビーム砲を敵巡洋艦に撃ち込む。
僕もレールガンを撃ち込む。
敵艦からもビームが届く。盾と耐ビームコーティングで耐えている。
「よしレールガンが当たってる。次弾侵食弾! 発射!」
侵食弾が敵巡洋艦の停滞フィールドを抜き敵巡洋艦の艦体に当たる。
侵食が広がり、敵巡洋艦が動きを止める。
目の前の仮想スクリーンにメッセージが出る。
『侵食完了。データリンク開始。乗っ取りますか?』
僕はNOアイコンを掴む。敵巡洋艦の識別信号が黄色になる。
侵食弾により敵巡洋艦の自由は奪った。あとは武装解除で鹵獲完了だ。
「よし、データリンクからエネルギー分配器の位置を把握する。アヤメ、ここだ」
僕がデータを通信画面の綾姫に放ると、綾姫の仮想画面の敵巡洋艦に的が表示される。
「アヤメ、敵2番艦に注意! 2番艦はこっちで対応する」
敵巡洋艦を向かって右から抜き去って敵2番艦が現れる。
敵巡洋艦は脱落する。そこへアヤメ艦が接近していく。
僕はレーダーと光学観測で敵2番艦を調べる。
「戦艦だと!」
判明した艦種は戦艦だった。
戦艦だって侵食すれば同じだ。撃たれる前に自由を奪えばいい。
僕は敵戦艦に侵食弾を連射で撃ち込む。直撃!
敵戦艦の艦体に侵食弾が辿り着くも侵食が遅い。
敵戦艦がビームを発射する。
ビームは僕の専用艦の盾に当たり後ろに逸れる。
続けてビームが来る。
盾が右腕ごと吹き飛ぶ。まだ侵食は終わらない。
「早く、早く! ふぁんねる! ビーム砲へミサイル発射!」
『ふぁんねる』に敵戦艦のビーム砲を狙わせる。
ミサイルが直撃。敵戦艦の第一砲塔が吹き飛ぶ。
だが第二砲塔がビームを撃つ!
ビームが僕の専用艦の右舷を掠る。
艦体右舷の耐ビームコーティングが一度で駄目になる。
次をもらったら危ない!
専用艦から牽制でミサイルを2発撃つ。
「ふぁんねる! 侵食弾発射!」
『ふぁんねる』から侵食弾が発射され、敵戦艦の艦橋に吸い込まれる。
敵巡洋艦のエネルギー分配器を始末したアヤメ艦が援護に来る。
「アキラ!!」
綾姫の叫びが聞こえる。
敵戦艦の第二砲塔が光り、ビーム砲が発射される……直前で侵食が終了した。
目の前の仮想スクリーンにメッセージが出る。
『侵食完了。データリンク開始。乗っ取りますか?』
僕はNOアイコンを掴む。敵戦艦の識別信号が黄色になる。
データリンクからエネルギー分配器の位置を調べようとした。
その刹那、いきなりCIC内の照明が赤くなり警報を発する。
『敵戦艦の電脳からハッキングを受けています。対抗手段は逆ハックして敵電脳を支配するのみです』
「わかった。提督コマンド。最上位命令。ナーブクラック、絶対服従!」
緊急事態なのでナーブクラックを発動した。
まだここは戦闘の終わっていない危険宙域なんだ。
このまま敵戦艦に煩わされている暇はない。
敵戦艦の識別信号が緑に変わる。
僕達はまた次元跳躍門の方向を監視しだした。
ナーブクラックは晶羅本人と艦隊旗艦である専用艦の電脳が使えます。
発動許可は晶羅本人しか出来ません。
次元跳躍門を次元転移門と書き間違えていましたので修正しました。2度目です。
間違えないようにと過去のテキストを見て書いたら、間違ったテキストを見ていました。
どうしようもない凡ミスです。すみません。