039 アイドル編15 新曲発表会2
遅れました。
アバターモードで配信映像を固定にして定位置につく。
中央右に僕。中央左に一歩下がって菜穂さん。
僕の右後方に紗綾、菜穂さんの左後方に美優。
広域通信機S型を起動し全チャンネルに新曲のカラオケを流す準備をする。
相手艦隊の通信にも介入する完全支配モードだ。
本来は通信をハッキングして偽情報を混ぜるといった用途で使うものだ。
その極悪機能を流用して曲の聴取を強制する。
これが使えなければ対戦相手の艦にスピーカー弾を撃ち込む予定だった。
「いくよ」
菜穂さんの合図で新曲のイントロを流す。
そのイントロ中に僕こと晶羅は加入の挨拶をしなければならない。
「みなさーん。僕が新メンバーの晶羅でーす。よろしくお願いしmガチ(噛んだ)」
そのまま菜穂さんが歌い出す。
慌てて僕も自分のパートを歌う。
紗綾と美優の二人が前に出てユニゾン。僕と菜穂さんが下がる。
戦闘には全く意味のない機動をしてダンスを表現する。
端から見ればブルーインパルスのようなアクロバット飛行に見えるかもしれない。
僕達が見せようとしているのは所謂フォーメーションダンスだ。
ここまで対戦相手の艦隊が攻撃して来ないのには理由があった。
相手艦隊はブラッシュリップスのファンが組んでいるヲタ艦隊だったのだ。
神澤社長がブラッシュリップスのスペシャルグッズで釣った八百長と言われても仕方ない出来試合だった。
菜穂さんの歌がサビに入る。
サビのフレーズに合わせてレールガンがヲタ艦隊に放たれる。
ヲタ艦は先を争うようにその弾を奪い合い当たりに行く。
紗綾が自分のパートでミサイルを撃つ。
「ご褒美だーーーーーーーーーーー!!!」
ヲタ艦が突っ込んで来て爆散する。
それを見たヲタ艦の1艦が俺にレスをくれと言うが如く小さな対艦ブレードを振る。
まるで青のキンブレのようだ。
次のパートを歌いながら美優がそのヲタ艦にビームのレスを雨あられと放つ。
「爆レス最高ーーーーーーーーーーーーー!!!」
ヲタ艦が昇天する。
歌のパートが来る都度、僕もヲタ艦を撃つ。
豆鉄砲なので被害は無いがヲタ艦は喜んでいるようだ。
僕という新メンバーを受け入れてくれればありがたい。
ヲタの中には排他的な原理主義者もいるそうで、後から加入したメンバーを受け入れないことがあるという。
神澤社長はそこら辺を考慮して穏健なDDを選んでくれたらしい。
曲が終わった。
ヲタ艦は全艦幸せな顔で散った。
僕らも大きな失敗……僕が噛んだぐらいだが……もせずに歌い切ることが出来た。
「みなさーん、接待プレイありがとうございましたぁ♡」
菜穂さんがぶっちゃけた。
「いいのか、それで!」
これってヲタには好評かもしれないけど、SFOプレイヤーにはイメージ悪くない?
とりあえず、笑顔を作って媚だけは売っておこう。
「ありがとうございましたー♡」
ネカマが板についていく……。