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038 アイドル編14 後始末と新曲発表会1

 鹵獲艦の処遇が決定した。

僕は行政府に呼ばれて例の白い(軟禁)部屋でプリンスと対面していた。


「また鹵獲に成功するとは、晶羅(あきら)さんは末恐ろしいですね。しかし、また鹵獲艦の電脳が晶羅(あきら)さんに服従してしまっていて、1艦丸ごと購入は不可能です」


 やはり電脳が僕に服従してしまって他人の命令に従わないらしい。


「今後のために聞きたいんだが、ナーブクラックを使わずにどうすれば鹵獲出来るんだ?」


 プリンスがナーブクラックと聞いて眉をぴくりとさせる。


「ナーブクラック? それはもしかして晶羅(アキラ)さんのユニークスキルではないですか?」

「え? そうなの?」

「はい。他の人は誰もそんなスキルは持っていません。そのナーブクラックによって服従状態になっているのだとすると、それを使用しての鹵獲はお薦めしません。通常の鹵獲方法は、敵艦の武装を破壊しつくし戦闘能力を奪い、鹵獲宣言を行うことで成立します」

「じゃあ、識別信号が緑というのは、その鹵獲宣言で出るの?」

「いいえ、そこは識別信号黄色になります。後の臨検によって緑が出ます。前回のレンタル艦の時は識別信号青、しかもレンタル艦の識別コードでしたので、例外中の例外で慌てました」

「なら、今回みたいに別電脳を持った巨大ミサイルを抱えてたら、今後は危ないんじゃ……」


 プリンスが深刻な顔で答える。


「そうなんですよ。表面的な武装解除では裏をかかれる可能性があると、あの新兵器の存在で発覚したということです。なので現状では最終防衛ラインでは、晶羅(アキラ)さんのナーブクラック以外での敵艦の鹵獲は禁止になるでしょう」

「となると最終防衛ラインに限り識別信号黄色は破壊対象になるわけだね」

「はい。しかし敵の新戦術が明らかになったのは大手柄です。報奨金は出ませんけどね」


 プリンスが感謝の言葉を述べるが財布の紐は固かった。


「そうそう鹵獲した自立型ミサイルですが、残念なことに電脳が晶羅(アキラ)さんに服従していて情報を抜き出せません。研究用に是非欲しかったのですが、爆薬を抜いて晶羅(アキラ)さんに渡します」

「すると鹵獲艦の取り分は……」

「はい。母艦の電脳を含む基幹部品と自立型ミサイルが晶羅(アキラ)さんへ。それ以外が行政府の取り分になります。反応炉以外ではその二つが高価買取だったのですが、もったいなかったですね」

「そうなんだ……。あと遮蔽フィールドぐらいはちょうだいよ」

「あれも貴重な装備なんですが、壊れていましたからね。買取金額は安くなっていますね。欲しいなら渡しましょう」

「よっし!」

「そんなに喜んでもらえて幸いです」


 会話を終え、白い部屋を辞する。

鹵獲艦の電脳基幹部品と遮蔽フィールド発生装置 (ジャンク)、自立型ミサイルは格納庫上の倉庫へと送られた。

ミサイルの爆薬はもしもの事があると拙いので抜かれている。


 そもそもなんで自立型ミサイルなんだという話だが、ミサイルなんて有線制御以外の撃ちっぱなしは全て自立しているもんだ。

そういった通常ミサイルと違って、自立型ミサイルと呼んでいるミサイルは、小型艦に爆薬を積んだ高知能なミサイルという感覚が近いと思う。

所謂(いわゆる)小型艦の自爆攻撃と言った方がいいのかもしれない。

通常ミサイルにそんな性能を持たすのはコスト的に割が合わない。

通常ミサイルはそのコストと性能のバランスを考慮して必要最低限の知能を持たされているわけだ。

その点、自立型ミサイルは電脳を搭載し知性を持たされた此処ぞという時の決戦兵器だと言えるだろう。

爆薬を積んだ無人特攻艦かな?


 あれ? 敵艦って()()なのか? 鹵獲艦の()()っていたんだろうか?

ステーションのNPC艦が所謂無人艦なんだろうけど、リアル空間では航宙士(ゲーマー)乗員(パイロット)が必要だって話だったよね?

臨検後直ぐに鹵獲艦を渡してしまったから、そこらへんのことは何も知らないぞ。

後でプリンスに聞いてみよう。

それにしても自立型ミサイルが無人艦扱いなら無人艦載機として使えないだろうか?



***********************************



 ブラッシュリップス(brashlips)新メンバー晶羅(きらら)のお披露目を兼ねた新曲発表会開催が決定された。

舞台はSFO。個別デュエルの模擬戦がステージとなる。

この日のために僕は歌にダンスにレッスンを行っていた。

ここで少しメンバーを紹介しよう。

菜穂(なほ)さんは22歳、身長162cm、ゆるふわの茶髪を背中まで伸ばしている。ぽわんとした印象だがリーダーなので要所要所は厳しい。

紗綾(さーや)は17歳、身長156cm、茶髪を肩で揃えている。明るいムードメーカー。運動神経抜群。

美優(みゆ)は15歳、身長150cm、黒髪ショート。人見知りでまだ一言も話してくれない。

この先輩たちと艦隊を組んで模擬戦を行いつつ歌い踊る。

さらに僕には音響さんとしての任務がある。

広域通信機S型で全てのチャンネルを掌握し新曲の伴奏を流し、メンバーの歌をマイクで拾い上げて発信しなければならない。


いよいよ本番。

僕は専用艦のCICに入りコクピットに座る。

アバターをアイドルアバター1に変える。新曲衣装のアバターだ。

仮想スクリーンを立ち上げ、アイドルアバター1で電脳空間に入り、模擬戦会場という名のステージに向かう。

会場には菜穂(なほ)さん、紗綾(さーや)美優(みゆ)の3人がもう待っていた。

リーダーの菜穂(なほ)さんが試合のエントリー登録をする。

模擬戦の宙域は通常宙域に指定済み。

しばらく待つと目の前に数字が現れカウントダウンしていく。

カウントダウンの数字がゼロになり、僕が加入した新生ブラッシュリップス(brashlips)の新曲発表会兼僕のお披露目ステージが始まった。

僕達4人はSFO初のアイドルユニットとして宇宙に飛び出した。

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