003 修行編3 初仕事
10話投稿4話目です。
ミーナと別れ、転送ポートに来る。
ギルド格納庫10番を告げ光の柱に入ると格納庫区画の広場に出た。
転送ポートは転移と違ってポート間の移動しか出来ないようだ。
まあ格納庫区画の最寄りのポートではあるんだけどね。
案内図に従ってギルド格納庫10番に来る。
ここはギルドのレンタル艦を収納する格納庫区画のようで、レンタル艦を使うゲーマーしか来ないのか、閑散としている。
ゲーマーなら専用艦を持っているので、破損させてドック入りか僕のように専用艦を建造中のゲーマーしか来ないのだろう。
ギルド格納庫10番と書いてあるドアがシュッと開き、待機所に入る。
待機所の窓からは格納庫内が一望でき、僕が乗ることになるレンタル艦10番が見える。
標準採掘仕様の2腕装備ということで見てみる。全長は30mほど。艦形は紡錘型で後方に巨大な主エンジン噴射口が見える。
艦首に書いてあるR10の後ろあたりから両舷に2本の腕が生えている。右腕の指は3本で物を掴めるようになっているようだ。
左腕はドリルだ。肘の部分からT字状になっていて180度回転させると右腕と同じ3本指のマニピュレーターとしても使えるようだ。
待機所窓側の左舷に待機所からチューブが繋がっていて、そこが搭乗口だろう。
僕は待機所のエアロックまで行く。デカデカと「要パイロットスーツ着用」と書いてある。
脇のロッカーを開けるとパイロットスーツが入っている。ご丁寧に洗濯済みのタグが付いていて笑う。
着てみるとブカブカで着やすい。しかしスイッチでシュッと縮み、エ◯ァのみたいに体型に合わせてくれる。
ヘルメットは無いが、頭の後ろに簡易推進機のランドセルと一体になった大きな膨らみがある。
おそらく非常時に頭を覆う機能があるのだろう。
エアロックを開ける。グリーンランプでないと開かないというのはお約束。
中に入りハッチを閉めると、反対側のハッチにグリーンランプが点く。
ハッチを開けてチューブに入ってハッチを閉める。
チューブを歩くとグレーのハッチが見える。グリーンランプ。
ハッチを開けて中に入り閉じる。グリーンランプで中のハッチを開け、やっと艦内に入る。
しつこいくらいの安全確認だが、格納庫の外が真空だと思うと必要な手順だ。
事故で格納庫から空気が抜けていたら困るからね。
所謂二重の安全確保と言っていい。
だが今後の描写は省略させてもらう。
艦内通路を歩き、中央制御室に入る。
他にクルーはいない。1人で艦を動かすことになる。
そのためにSFCでMPSコントロラーの訓練をするのだ。
僕はズルしてやってないんだけどね。
CICにはパイロットシートが備え付けてあるだけで、MPSコントローラーは無い。
シートに座ると上位互換の思考制御であることが脳に直接伝わってくる。
このCIC全体がセンサーであり、僕の脳が艦の電脳と直結している。
「さあ、それでは発進するか」
僕の言葉と共に格納庫内の空気が抜けていく。
空気が抜け終わり、前方のハッチが開いていく。
レンタル艦10番の電脳が管制室とやりとりしているのがわかる。
『オールクリア、レンタル艦10番、発進を許可します』
僕は艦に前進を指示する。艦はゆっくりと格納庫を離れ、安全域に出る。
艦が艦首を進路に向ける。目的地への進路や航路は受付嬢さんが設定済みだ。
目の前には仮想スクリーンが展開し、ステーション、味方艦、小惑星の位置が3Dで色分けして表示され、予定航路が図示される。
「発進!」
僕の合図と共にレンタル艦10番の主エンジンが咆哮し宇宙空間へと飛び出す。
目的地まではオートパイロットのため、緊急事態でもなければ少し時間が出来る。
そこで僕はマニピュレーターの慣熟のため動かしてみることにする。
拳をニギニギしたり腕を動かしたりドリルを回す。完全に身体感覚で制御出来ている。
この身体感覚を武装にイメージする。デブリ破壊用の近接防御レーザーが起動する。
目標を適当に見詰めて視線でロックオンしてみる。レーザーの照準が定まるのが知覚される。
どうやら武器も使えそうだ。
しばらく進むとクエストの目的地に到着する。
少し手前でスピードを緩め目的地に向かう。
ここでは戦闘があり、破壊した敵の残骸が漂っているらしい。
レンタル艦10番にレーダー各種センサーを動員して周辺を捜索させる。
目の前のスクリーンにはリアル映像が表示され、そこに識別のグラフィックが被さる。
デブリもいくつかみつかったが、あまり価値のあるデブリでは無いようだ。
艦内の収納容積を考えると、無駄に回収するわけにはいかない。
価値のあるデブリは腕を操作して掴んで回収。
MPSコントローラーでやったように仮想スクリーン上のデブリを掴む動作で自動制御できる。
掴んでは艦中央部の船倉に入れを繰り返す。
価値の無いデブリは航路の安全のためにレーザーで原子の大きさまで塵にしていく。
しばらくルーチンのように作業を続けた後、また価値の無いデブリかと視線を送った僕は驚愕することになった。
子供の頭ぐらいの大きさのダイヤモンドが浮遊していた。
艦の電脳の識別では価値の無いデブリのグラフィックだが、どう見ても地球時価数百億の代物だ。
僕はその八面体を掴んで収納し、電脳に識別グラフィックの変更を指示する。
すると目の前には十数個のダイヤモンドが浮遊していることがわかった。
もちろん全て回収する。
クエストの示す区画のデブリは全て掃除出来た。
慣熟航行も上出来で僕は回収したデブリの査定を楽しみに帰投した。
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