022 初心者講習8 最終演習1
初心者講習5日目最終日。
予定では昨日の自分用にカスタマイズした艦データで演習を行うはずが、フォレストが戦艦を作るという暴走をして取りやめになった。
そこでシイナ様から提案されたのが、自分達の専用艦をシミュレートして演習を行うというもの。
本来なら自分の手の内を明かさないために、専用艦の性能は秘匿したいところ。
そのための標準艦カスタマイズだったのに、それが使えないということで仕方ないとなった。
(いや、他の人はそれでいいかもしれないけど、僕の艦は艦隊旗艦などという際物で秘匿したいんだが……)
僕はシイナ様を部屋の隅に呼んで談判することにした。
「教官、ちょっと相談なんだけど。
僕の艦は特殊すぎるんで、性能を秘匿したいんだけど……」
シイナ様が腕輪を操作して仮想スクリーンを開き、僕の個人データを照会する。
AKIRAの諸元を見て眉間に皺を作る。
「あー、これは隠したいだろうな」
シイナ様も困った顔をする。
シイナ様はデータをスクロールさせ、ある項目で目を止めた。
「おまえ、もう1艦持ってるじゃないか。こっちにすればいい」
シイナ様はRIOの項目をみつけ、RIOでの参加を認めてくれた。
案外悩む必要もなく簡単に済んでしまった。
演習の詳細説明が始まる。
僕達は次元跳躍門の手前後方に位置する。
アステロイドベルト帯外側に位置する次元跳躍門から敵艦隊が侵入して来る。
その敵艦隊は、先陣の味方艦隊に迎撃される。
そのお零れをアステロイドベルト帯の手前で待ち伏せ撃破すのが僕達の任務だ。
所謂最終防衛ラインだ。
演習空間は次元跳躍門の干渉により次元異常と重力異常が発生している。
さらに度重なる戦闘によって重力異常地帯も点在する多重異常宙域だ。
ちょっと脇道に逸れるが、次元跳躍門やステーションのような巨大建造物や空間異常などが、地球から観測されないことを不思議に思うことだろう。
これらの異常に地球側の一般人が気付かないのには理由がある。
プリンス達宇宙人が、遮蔽フィールドによって大規模な隠蔽を行っているんだそうだ。
光学的電子的な観測では、嘘の情報を得るだけらしい。
たまに打ち上げられている観測衛星が付近を通過する時も、衛星全体を遮蔽フィールドで覆って完璧な対応が行われているとか。
更に地球の大国とはある程度の接触があり、多少のことは見なかったことにされているらしい。
閑話休題。
今回の演習はその次元跳躍門の手前、最終防衛線での防衛任務。
それを仮想空間において演習という形でシミュレートする。
敵艦の数とか戦力は不明。
シイナ様の裁量で突発的な事態を発生させる場合もあるらしい。
僕達は担当宙域を指定され、そこを防衛することが任務となる。
ただし、6艦で艦隊を組んでいるのでチームプレイも要求される。
戦闘は敵艦撃退か、こちらの戦闘継続不能で終了。
とりあえず僕達は持ち場を決める。
前衛にアヤメ、フォレスト、僕。中衛にオオイさん。後衛にキリさんとタンポポ。
キリさんとタンポポは、小惑星の岩塊に固定して狙撃体制をとる。
演習なので解りやすいように艦の位置を図で示していく。
□▲□▲□▲□
□□□▲□□□
□□▲□▲□□
□□●□●□□
こんな感じ。
一応、艦隊指揮は年長者のオオイさん。
「さあ、演習の始まりだ!」
次元跳躍門から空間異常警報が発令された。
これは何らかの物体が次元跳躍してくるという警報だ。
味方艦であれば、次元跳躍門内の亜空間で一時停止し、先触れが侵入して来る。
それ無しに侵入して来るのは敵とみなされる。
さらに介入警報も発令される。
これは次元跳躍門のシステムへ介入があったということで敵艦隊と断定される。
前方の味方艦隊が臨戦態勢に入る。
次元跳躍門は宇宙空間に浮かぶ巨大なリングだ。
そのリングの内側の円が亜空間へと繋がる門となっている。
その円の空間がさざ波のように揺れ、敵艦が水面から跳ねる魚のように飛び出して来る。
どうやら小規模の強行偵察艦隊のようだ。
味方艦隊が迎撃する。
ほとんどの艦が撃破されるが、突破して来る敵艦も少なくない。
味方艦隊は正面の迎撃に集中し、突破する敵艦は後方の防衛艦隊に任せる。
(有益なデブリって戦闘終了後のリング周辺が一番多いんだな。戦闘があったら回収に行こう)
その突破して来た敵艦の何艦かが担当宙域に接近中だ。
「さあ、防衛戦闘開始だ!」
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