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164 自由浮遊惑星編6 粛清

side:カスケード子爵


「アキラ殿下だって戦場で手柄をたてて出世したんだ」


 ここで手柄を上げれば、自分が後見人となっている第12皇子ミゲルの皇位継承順位を上げることが出来る、そう思ってカスケード子爵は僚艦とともに自由浮遊惑星にミサイルを発射した。

カスケード子爵は親の前子爵がニアヒュームとの戦いで戦死したため、僅か18歳という年齢で子爵家を継いだばかりだった。

第12皇子の後見人は親の代に受けたものであり、本来ならカスケード子爵本人が誰か後見人を必要とするような立場だった。

当然世間知らずであり、大局を見据えるなどということは意識すらしていなかった。


「こんな先制攻撃のチャンスに誰も攻撃しないとは、帝国正規軍も大したことはないな」


 領地で跡取り息子としてチヤホヤされた経験しかないカスケード子爵は、自分がしでかした事の重大性など理解することもなかった。


「このまま破孔から内部に突入する! 我に続け!」


 カスケード子爵は意気揚々と自由浮遊惑星内部に突入しようと降下するのだった。


 その時、カスケード子爵の綺羅びやかな意匠を施された専用艦の右舷にレールガンの弾体が直撃した。

その威力は大型戦艦の主砲である長砲身40cmレールガンを凌駕していた。

カスケード子爵の専用艦は中心部を抉られ前後に分断された。

降下中の臣下の宇宙艦にも次々に直撃弾が命中する。

自由浮遊惑星に降下しようとした艦隊は、なぜか停止した艦を除いて一瞬で撃破されてしまった。



******************************

side:アキラ


「なんてことをしてくれたんだ!」


 カイルの怒声が司令室に響く。

僕もカスケード子爵の暴挙に一瞬思考が停止してしまった。

駄目だこいつ(カスケード)……。早くなんとかしなければ……。


「カイル。他の連中に自由浮遊惑星を絶対に攻撃するなと命令してくれ!

僕はあのアホを始末する。

せめてこちらが手をかけることで、相手に誠意を見せなければならない。

いいよな?」


 僕はカスケード子爵を討つことでなし崩しで戦争へと突入するのを避けられないかと行動にうつすことにした。

カイルも待機命令を出してはいたが、まさか功を焦って攻撃するアホが出るとは思っていなかったようだ。


「わかった。全艦隊に攻撃禁止命令だ。撃たれても反撃禁止だ! 攻撃されたら逃げろと言え!

カスケード子爵は帝国に対する戦争誘発行為で家名断絶、処刑を命ずる。

すまん。アキラ。やってくれ」


「了解」


 僕は取り返しがつかなくなる前に対処するため専用艦の駐機場に走った。

専用艦の駐機場は与圧されているが人工重力は切られていた。

これでコクピットへの搭乗が容易になる。

僕の専用艦(外部ユニットの巡洋艦型)は小さすぎするため、大型戦艦を想定した桟橋には搭乗口が届かないのだ。

目の前の与圧扉の緑ランプを信じて、僕は生身のまま駐機場に進入する。

パイロットスーツに着替える時間も惜しかったからだ。

もし与圧が抜けているなら専用艦の電脳が警告してくれるはずだという信頼もあった。

僕が宙に身体を投げ出すとコクピットの搭乗口が自動で開く。電脳が対応したのだ。

目測通り搭乗口に飛び込むとCICに向けて通路を駆け抜けパイロットシートに座る。

と同時に脳が専用艦の電脳と直結する。


「緊急発進! このまま次元跳躍(ワープ)する! 目標自由浮遊惑星手前カスケード子爵艦隊右舷方向だ!」


 僕の専用艦が次元フィールドを展開すると帝都の結界(バリヤー)を飛び越え目標地点に次元跳躍(ワープ)した。

目の前の光景が宇宙空間に変わる。

前方にはカスケード子爵艦隊1000艦。右舷方向に自由浮遊惑星が見える。


「カスケード子爵艦隊を敵味方識別装置に敵として指定、レールガン起動、弾種Gバレット。

ますはカスケード子爵の専用艦を叩く。発射!」


 Gバレットがカスケード子爵の豪奢な専用艦に吸い込まれていく。

重力エネルギーを放出した弾体が運動エネルギーとの相乗効果で膨大なエネルギーをぶつける。

カスケード子爵の専用艦は右舷中央に命中弾を受け中央部を喪失、前後の一部を残し撃沈した。


「よしミサイル攻撃に参加した艦をピックアップ。その他には即時停止命令を出せ!」


 僕の専用艦の電脳がカスケード子爵艦隊の宇宙艦の電脳に高速通信を送る。

無人艦はこれで停止するはずだ。

だが自由浮遊惑星をミサイル攻撃した艦は見逃すわけにはいかない。

そのための宇宙艦を選んだ高速通信だったわけだ。

そのまま進軍する宇宙艦は300艦ほどだった。

次元格納庫よりGバレット搭載の新型無人艦を100艦出す。


「全艦レールガン起動、弾種Gバレット。目標マルチロックオン」


 僕の目の前に敵艦隊を照準するレティクルが表示されロックオンされていく。

この1つ1つに無人艦が照準を合わせているのだ。

なぜ無人艦を出したかというと僕の位置からでは死角に入る艦が出るからだ。

無人艦は自分の位置を変え、全ての艦に照準を合わせていく。

全ての艦に照準がロックオンされると僕は発射命令を出した。


「全艦、Gバレット発射!」


 周囲に展開した無人艦からGバレットが発射される。

1艦につき目標は3あるので射角を少しずつ変えて3連射だ。

その弾体が目標に突き進む様は流星雨のようだった。

その雨が宇宙艦に当たると宇宙艦の一部や全体がひしゃげ無数のデブリとなっていった。


「全艦殲滅確認。停止した無人艦はその場で待機。自由浮遊惑星の判断に任せる。

有人艦が残っていたなら鎮守府に出頭させろ!」


 さて、自由浮遊惑星(向こう)が文明人なら、帝国(こちら)の意図は伝わったはずだ。

どう出てくるか……。見守るしか無い。


『やっと話の通じそうな方がお出でのようですね』


 まさかの真・帝国専用暗号回線に通信が入った。


『ずっと問いかけていたのですが、受信反応も無かったもので、こちらも難儀していました』


 僕はこの()()()()()()()に頭を抱えるしかなかった。

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