158 帝国内乱編16 後始末2
side:クロウニー星系 (アキラ)
工場母艦から菜穂艦型の電子戦装備特化艦が竣工して来た。
諸元は以下。
『AK-E001』
艦種 電子戦特化艦
艦体 全長200m 巡洋艦型 2腕
主機 熱核反応炉B型 高速推進機F型
兵装 主砲 20cm粒子ビーム方連装2基4門
副砲 なし
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 なし
防御 耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
耐実体弾耐ビーム盾E型 1
停滞フィールド(バリヤー)E型
電子兵装 次元レーダーC型 次元通信機C型 電子(量子・次元)戦装備A型 電子戦用サブ電脳A型 反支配化信号対策装置
空きエネルギースロット 0
状態 良好
性能的にはレベルアップ後の菜穂艦から長距離射撃装備を全廃した感じだ。
そのため反応炉の性能が若干低く抑えられている。
無人運用の量産艦だがCICが装備され有人運用も想定されている。
これは輸出仕様にして外貨獲得を目指すためだ。
《対ニアヒューム戦には1艦隊に1艦、電子戦特化艦を》というPRで売りまくるつもりだ。
今回の反乱で要塞艦の電脳のロックや自爆装置が簡単に無効化されてしまった反省で、もしもの時は基幹部品が壊れて使用不能になるブラックボックスを搭載することにした。
無効化して再利用しようなんて僕の貧乏症が仇となってしまった。
今度は徹底的に使えなくしてしまう。
こんな心配をするのは、僕の中に帝国と事を構えるかもしれないという漠然とした不安があるからなんだろう。
この艦を菜穂艦の代わりにクロウニー星系に配備する。
後はニアヒューム隔離装置を装備した輸送艦が竣工するまで待機だ。
『アキラ、ロレンツォ、極秘会議室に集合だ!』
突然、カイルから招集がかかった。何があったんだろう?
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side:電脳空間極秘会議室(カイル、アキラ、ロレンツォ)
電脳空間を飛んで防壁を抜け極秘会議室に到着する。
今回はロレンツォも単独でやって来る。
以前の参加を期に正式に招集メンバーとして登録されたのだ。
登録メンバーは防壁を抜けられるが、その他の者は防壁に弾かれて会議室の中を見ることも盗聴することも出来ない。
それが皇帝であってもだ。例外は登録メンバーに連れられた招待メンバーだけだ。
「アキラ、ロレンツォ、すまないな」
「いや、カイル、僕は待ち時間だったから問題ないよ」
「こちらも問題ありません。司令」
ロレンツォは艦隊再編や応急修理で絶対に問題があったはずだが、それをおくびにも出さない。
「ロレンツォ、忙しい所すまないが、君に関わる重大事だったので急いで来てもらった」
カイルもそこはわかっていたので心底すまなそうに謝罪する。
「何があったんだ?」
僕の問いかけにカイルは顔を顰めながら話す。
「単刀直入に言うと、陛下に作戦が却下された」
「え? レオナルド討伐作戦が?」
「ああ」
カイルが一呼吸置いてロレンツォに向かうと話し出した。
「ロレンツォ、陛下はレオナルド討伐に君を指名した」
「え?」
驚くロレンツォ。
そりゃそうだ。今のロレンツォ艦隊は手負いで戦力が足りない。
満身創痍状態だ。
「陛下が言うには、レオナルドを反乱扱いにすれば巻き込まれた家臣まで討たねばならなくなる。
彼らは独裁者レオナルドの被害者だから救いたいというのが陛下の御心だ。
つまり今回の戦いはロレンツォ対レオナルドの揉め事ということにしたいのだそうだ」
なるほど、バカに巻き込まれた家臣は災難だったろうからね。
信長型の直情的な人物だと思っていたけど、皇帝陛下もなかなか出来た人物のようだ。
「しかし、戦力が足りません。さすがに一騎打ちというわけにはいかないでしょう」
ロレンツォの尤もな意見も納得できる。皇帝はどうしろと言うのだろう?
ロレンツォの戦力が回復するまで時間を置けばレオナルドに逃げられてしまうかもしれない。
「そこでだ。現在レオナルド星系に向かっていた要塞艦をロレンツォに与える。
それをもってレオナルド討伐に当たれ」
「しかし、我が星系は次元跳躍門が壊れていて機能していません。
我が専用艦では合流出来かねます」
僕はうっかりしていたことに気付いた。
「そうだった。次元跳躍門を直さないといけなかったんだ。
ロレンツォすまない。工場母艦はクロウニー星系に来ているので直ぐに建造しよう」
「アキラ、それだと間に合わないかもな」
拙い。作戦上必要だったとはいえ壊しすぎた。
その作戦も完全に裏をかかれて次元跳躍門破壊は無駄な行為になっている。
なんとかしなければ……。
「次元跳躍門から切り取った制御ブロックは次元格納庫の中にある。
それを出せば修復は容易だと思う。まずクロウニー門を早急に直そう」
焦る僕を尻目にカイルが単純な回答を披露する。
「いや、要塞艦をクロウニー星系に寄らせる。それにロレンツォが移乗すればいい。
10万の艦隊だ。それをロレンツォの指揮下につける。
名目が必要なだけの割の合わない戦いだが、ロレンツォが決着をつけてくれ」
「いえ、ご配慮ありがとうございます。レオナルドは将兵の仇でもあります。
この機会、弔い合戦とさせていただきます」
ロレンツォの固い決意で極秘会議は解散となった。
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side:アキラ
僕は慌てていた。
ロレンツォの支配星系にある次元跳躍門を全て破壊してしまったことをすっかり忘れていたからだ。
まずクロウニー星系の次元跳躍門に切り取った制御ブロックをはめる。
久しぶりの艦載腕の出番だ。
次元格納庫の収納で切り取ったため切り口がぴったりと合う。
ちなみに次元格納庫への収納は収納フィールドに触れている物体全ての収納と、収納フィルード内にある物体だけの収納を選ぶことが出来る。
収納フィールド内にある物体だけの収納を選ぶとその堺で綺麗に切り取られることになる。
制御ブロックをはめると、ここに外部から融合フィールドを形成する。
元々次元跳躍門が持っている自己修復機能を活性化させるのだ。
「ふう。これでなんとかなるはずだ」
新造品の次元跳躍門に切り替えてもいいんだけど、建造期間や組み立て期間を考えると修理の方が早いはずだからね。
「さて、次だ」
僕は次元跳躍を駆使してロレンツォ支配星系の次元跳躍門を修理していく。
そして最後にハブ次元跳躍門を持つラスティ星系に向かう。
「はい。ラスト」
そして最後に次元跳躍アウトしたラスティ星系には、ニアヒュームの小母艦級が待ち構えていた。
「そうだった。ここにはまだニアヒュームの残りがいたんだった」
レオナルド軍は要塞艦をニアヒューム化させ、ニアヒューム艦を要塞艦に格納して次元跳躍でクロウニー星系を強襲した。
そのため、元々ニアヒューム艦を搭載していた小母艦級と、積み残された一部のニアヒューム艦がラスティ星系に取り残されていたのだ。
僕は次元格納庫から電子戦特化艦を出すとニアヒュームをサクッと無力化した。
「頼んだよAK-E002」
小母艦級を収納出来る隔離装置って作れるんだろうか?
僕は工場母艦に相談するべくクロウニー星系に戻った。
翌日、ロレンツォによってレオナルドが討伐されたという報告があった。
ここにレオナルドによる内乱はロレンツォ領侵攻事変という名に変わって終結した。
レオナルド領はロレンツォ領に併合。第5皇子レオナルドは死亡廃嫡となった。
遅くなってごめんなさい。
次から新章の予定です。
新章1話目は月曜に更新します。