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153 帝国内乱編11 ニアヒューム攻略

side:ロレンツォ


 ロレンツォ(第7皇子)の要塞艦は大破し動けなかった。

応急修理で動かせるようにしたいが、要塞砲、次元跳躍(ワープ)機関、次元レーダー、反支配化信号対策装置は修理不能だった。

ロレンツォ(第7皇子)軍の要塞艦は全部で4艦だが、どれも同じような状態で自衛の兵装が健在なだけで、ほぼ搭載艦の補給基地としてしか機能していなかった。

帝国軍の艦船は、反乱防止のために領軍の艦船ほどレールガンの最大弾数が抑えられている。

粒子ビーム砲であれば弾数制限が無いが、射程距離が中程度でバリヤーにより効果が低減されるというデメリットがあった。

そのため一撃必中の武器としてレールガンが主砲として重用されていた。

その弾数が抑えられているため補給基地に戻って補給するという手間がかかるようになっていた。


 それと比べて帝国正規軍より派遣されている艦は皇帝直轄の軍であるためレールガンの最大弾数が若干多くなっている。

反乱の危険は正規軍の艦隊にもあるが、反乱ともなれば皇帝の支配権限で簡単に無力化出来るため心配いらないとの判断がなされている。

そのため無人艦が多く今回のような乗っ取りを行う敵とは相性が最悪だった。

いま正規軍の要塞艦はニアヒュームの侵食を防ぎ戦線に復帰しようかというところだった。

その数5艦、うち1艦は要塞砲が破壊されており、使える要塞砲は残り4門だった。

それも現在の不利な状況では次元跳躍(ワープ)での撤退を考慮する必要があり、あえて撃つことを禁止している状態だった。


 いま動かせるのは要塞艦に搭載していた宇宙艦のみ。

ロレンツォ(第7皇子)と正規軍のレオナルド&ニアヒューム討伐軍は、要塞艦に搭載されていた全艦を戦場に向け前進させていた。


「元コックス子爵軍所属の無人艦を制御下に置くことに成功しました!」

「よし、これで敵を内部から混乱させられる。無人艦に攻撃開始命令だ!」


 ロレンツォ(第7皇子)軍側に戦力比が傾いた瞬間だった。




**********************************

side:アキラ


 ロレンツォ(第7皇子)が乗っ取った元コックス子爵軍所属の無人艦がニアヒュームの艦隊に襲いかかっていた。

敵陣内部に現れた反攻勢力に停止状態だったニアヒューム艦の動きが勢いを増す。


「なんだ? あの変な動きは?」


 僕はニアヒューム艦の動きに違和感を覚えた。

攻撃を受けてからの動きは淀みないものだったけど、それまでは敵とも味方とも認識していないかのようだった。

まるで催眠術にかけられてぼ~っとしていたような感じだ。

いまこの戦場では反支配化信号対策装置が作動していて無人艦への強制支配が解除されている。

同様にニアヒュームの支配も緩んでいるのかもしれない。


「つまり無人艦への支配もニアヒュームへの支配も同じ原理によるものだということか。

そして、あの動き。単純な防衛本能による動きなのかもしれない」


 僕はある思い付きを実行するためロレンツォ(第7皇子)に通信を送った。


『やあ、ロレンツォ(第7皇子)、無事だったようだね』


 僕が声をかけるとロレンツォ(第7皇子)は、待ってましたとばかりに答えてきた。


『アキラ、やはり無事だったな。こんなことだろうと思っていたよ』

『いや、今回は危なかったんだよ? 専用艦が消滅したんだからね?』

『ははは、あんな奥の手を用意しておいてよく言うよ』


 全然信じて貰えなかった……。


『まあ、それはいいとして、敵から奪い返した無人艦なんだけど、ニアヒュームへの攻撃を少し止めてもらえないだろうか?』

『わかった……「攻撃中止だ、かまわん」……どうだ?』


 ロレンツォ(第7皇子)は僕の要請に一言も疑問を挟まずに実行してくれた。

戦闘中に攻撃をやめるなど、いくら無人艦でも被害が甚大になりかねない行為だ。

それなのに僕を信じて何も言わずに従ってくれたのだ。ありがたいことだ。


「ありがとう。ロレンツォ(第7皇子)


 僕は通信に乗せずに礼を言うとニアヒュームの動向を注視した。

攻撃を中止した無人艦隊に対しニアヒュームの攻撃も止まっていた。

僕の予想通り、ニアヒュームは防衛本能で戦っていた。

つまりどのニアヒューム艦も自らの意志で動こうとはしていない。

まるで誰かの命令を待ち続けている状態に見える。


『見ての通り、ニアヒュームは攻撃をしかけなければ動かないようだ』

『アキラ、よく気付いたな。どういった仕組みなんだ?』

『おそらくニアヒュームの上位に当たる命令者がいる。

その命令を反支配化信号対策装置が妨害しているため命令待ちで動かないんだ』

『まさか。ニアヒュームは集合意識であり全て同じではなかったのか!?』

『この命令待ちの状態を見るにニアヒュームにも階級があると考えるべきだ。

女王蜂と働き蜂ぐらいの差異はあるのかもしれない』

『なら、無人艦はレオナルド(第5皇子)の艦隊に向かわせよう』


 僕はその時、あの黒い2艦を思い出した。

レオナルド星系へ向かっていたニアヒュームを誘導しロレンツォ(第7皇子)軍にぶつけて来た時も先頭にいた黒い2艦。

ラスティ星系での決戦時に次元レーダーの内容すら改ざんして見せた黒い2艦。

レオナルド(第5皇子)軍とニアヒュームを結びつけたのは、あの黒い2艦だとしか思えない。


ロレンツォ(第7皇子)、どうやらレオナルド(第5皇子)よりも危険な相手がいるみたいだよ。黒い2艦に気をつけて!』


 僕が警告したのと同時に黒い2艦がレオナルド(第5皇子)側要塞艦から飛び出して来た。


『久しぶりだなアキラ。おまえはなんて悪運が強いんだ。あのまま死ねば良かったのに』


 その声に僕は覚えがあった。忘れもしないプリンスの声だ。

だがそうなると隣の専用艦は誰だ?

プリンスを救助した専用艦に間違いないが、Gバレットや次元レーダーを自前で使うその戦闘力は普通じゃない。


『プリンス。生きていたのか!』

『当たり前でしょ? 私が彼を殺させるもんですか!』


 その声は、姉花蓮(かれん)だった。

2日に1度、1週間で3度更新という告知だと曖昧なので曜日を指定しようかと思います。

月、水、土曜の0~7時更新とさせていただきます。

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