151 帝国内乱編9 アキラ
今夜2話更新です。前話に閑話あります。
side:ロレンツォ
「被害状況を確認しろ!」
司令室でロレンツォが檄を飛ばすと各部署から報告の声が上がる。
「要塞砲使用不能!」
「対消滅反応炉出力正常、問題ありません」
「次元跳躍機関大破しています!」
「防衛機構のレールガン、粒子ビーム砲共に使用可能です」
「搭載艦格納庫約2割が破壊されています。使用可能搭載艦は本要塞艦で5千艦弱です」
「次元レーダー、次元通信システム健在。敵の通信妨害継続しています」
ロレンツォは、部下の報告を受けると、覚悟を決めた顔で激を飛ばした。
「我らはこの場から逃げることも出来なくなった。
このまま滅ぶならレオナルドを道連れにする!
搭載艦は全艦発進せよ。要塞艦に向かってくる敵艦を迎撃。
けして要塞艦にニアヒュームを取り付かせるな!
攻撃は要塞艦の全武装を撃ち込む!
次元レーダーシステム起動、反支配化信号対策発動!
反攻作戦開始!」
ロレンツォは、アキラが残してくれた反支配化信号対策装置に全てをかけた。
ロレンツォ指揮下の要塞艦3艦も通信妨害の中、阿吽の呼吸で搭載艦を出撃させる。
正規軍の要塞艦5艦はニアヒュームに取り憑かれ侵食されていて動きはなかった。
合計2万の艦隊がレオナルドに牙を剥いた。
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side:レオナルド
「味方無人艦、制御を受け付けません!」
ロレンツォの要塞艦から発せられた強力な信号により、帝国軍より奪い支配下に置いていた艦が支配から脱してしまった。
その数、減ったとはいえ2万5千艦。帝国側に再支配されたら脅威だった。
「ロレンツォの野郎か! 死にぞこないが! 奴の要塞艦に要塞砲を集中砲撃しやがれ!」
「それが……。ニアヒュームの支配も安定せず、我が方の要塞艦も要塞砲が撃てません!」
「くそ! ロレンツォの野郎め! 俺の親衛隊でぶっ殺せ!
それと黒騎士にニアヒュームの尻を叩かせろ! さっさと要塞砲を使えるようにさせやがれ!」
レオナルドが使える戦力は11万艦ほどに減っていたがロレンツォ側の戦力は2万艦しかなかった。
ロレンツォの要塞艦はなぶり殺し状態になっていた。
「ニアヒュームに侵食されていた敵要塞艦、ニアヒュームを排除し戦線に復帰しました!」
「バカな! 何だってんだ!」
そこには要塞艦の格納庫の扉を破り出撃する帝国軍搭載艦の数々がニアヒュームのコアを破壊する様子が映っていた。
要塞艦に触手を伸ばしたのはいいが、そのコアは艦とともに外部に露出していたのだ。
その時、レオナルドに吉報が届いた。
「味方要塞艦、要塞砲発射可能です!」
「なんだと!? よし目標はロレンツォの野郎だ。野郎を仕留めろ!」
ロレンツォの要塞艦に5条の要塞砲が向かって行った。
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side:アキラ
「また白い部屋だ」
僕は、どうやらまたアブダクションされたらしい。
『いいえ、あなたの肉体は精神を保持する限界を越えました。
ここは精神の集積場です、このままでは集合意識に合流し個の意識は消滅します』
「このままでは?」
『はい。精神のDNAの記述に則り術式展開します。肉体蘇生、精神を転移、再起動します』
「え?」
目が覚める。夢を見ていたようだ。
「知らない天井だ」
言ってみたかっただけだ。知らないのは天井じゃなくコクピットの方だった。
僕の専用艦のものではない。もっと高度な雰囲気を持つコクピットに僕は収まっていた。
「ここは?」
僕の問いに電脳が答える。
『あなたの専用艦の本体内CICです』
「本体?」
『次元格納庫に納められた建造中の専用艦のことです。外部に出ていたのはその一部です』
「つまり転送されたのかな?」
『……そう思ってもらって構いません』
うーん。夢が気になるけどまあいいや。
「どちらにしろ生き残ったということに違いない。よし、現況報告を頼む」
『はい。敵要塞艦から要塞砲で攻撃を受けました。外部ユニットは消滅。
敵要塞艦にニアヒューム反応を確認しました』
「なるほど、要塞艦をニアヒューム化して使ったのか。盲点だったが油断だったな。
ロレンツォの被害は?」
『ロレンツォ指揮下の要塞艦4艦はニアヒュームによる要塞砲攻撃の直撃を受けました。
現在搭載艦の護衛のもと要塞艦による戦闘を継続しています。
帝国正規軍の要塞艦5艦はニアヒュームの侵食を受け乗っ取られました』
「レオナルドは?」
『反支配化信号対策装置により、乗っ取られた正規軍2万5千艦が離脱、ニアヒューム要塞艦の要塞砲が使用不能状態のようです』
「要塞艦の自爆装置は?」
『ニアヒュームに侵食された際に解除されたもようです』
最悪だな。最後の手段も使えないか。帝国の資産だからと自爆を躊躇したのは失敗だったな。
だがレオナルドも万全じゃないようだ。
「こちらは動けるのか?
『最終調整終了まであと10分お待ちください』
「逃げられるかな? いや、勝てる?」
『お任せ下さい。現有戦力で敵を殲滅してご覧に入れます』
「へえ。今は次元格納庫の中なの?」
『はい。我が艦が通常空間に出た後に次元格納庫を収納します』
「中に入っていたものが入れ物を収納するとはわけがわからないよ」
僕は新たな専用艦の仕様を電脳から教えてもらいながら最終調整終了を待った。
『準備出来ました。ロレンツォ殿下の反支配化信号対策装置が破壊されたもよう。
ニアヒューム要塞艦の要塞砲が発射準備に入っています。発射しました』
「緊急発進! 次元格納庫から出ると同時に反支配化信号対策装置作動、敵の支配を強制解除、最大速度で突っ込み敵を排除する!
ロレンツォの要塞艦を守れるか?」
『お任せ下さい。カウントダウンします。3・2・1 発進です』
次元格納庫から飛び出した専用艦は2km級の戦艦だった。諸元は以下。
『新AKIRA』
艦種 艦隊指揮艦(艦隊旗艦)
艦体 全長2km 高速戦艦型 2腕 次元格納庫S型 (新鋭巡洋艦1万8千 ダミー艦11 予備部品多数)
主機 縮退炉 補機 対消滅反応炉S型2 E型4 高速推進機S型2
兵装 主砲 反物質粒子砲 4基4門
副砲 要塞砲(簡易型)1基1門
長砲身40cmレールガン単装8基8門
40cm粒子ビーム砲連装4基8門
対宙砲 10cmレーザー連装20基40門
長砲身5cmレールガン単装10基10門 通常弾 10万/∞ 特殊弾 5万/∞ 特殊弾 5万/∞ 特殊弾 5万/∞
ミサイル発射管 A型対宙20連ポッド10基200門 最大弾数50×200 ミサイル残弾 1万
対艦刀 S型1
防御 耐ビームコーティング耐実体弾多重複合特殊鋼装甲板
ビームキャンセラー(対ビームバリヤー)
耐実体弾耐ビーム盾A型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)S型
相転移フィールド(汎用バリヤー)
電子兵装 次元レーダー 対艦レーダーS型 広域通信機S型 戦術兵器統合制御システムSS型 サブ電脳S型2
空きエネルギースロット 60
状態 良好
次元格納庫から新たな専用艦で飛び出すと反支配化信号対策装置を使い無人艦へ強制停止命令を発する。
同時にレオナルド側の無人艦に強制支配をかける。
「相転移フィールド展開、縮退炉リミッター解除! 行け―! 最大速度!」
敵要塞砲の5つの光条が向かうロレンツォの要塞艦に向け僕は専用艦を突っ込ませる。
その光条がロレンツォの要塞艦に突き刺さる直前、僕の専用艦が要塞艦の前に割り込む。
相転移フィールドに当たった要塞砲の光条が熱エネルギーを奪われフィールドの硬度へと変換される。
光条の運動エネルギーはフィールドの硬度により熱エネルギーに変わる。
その熱エネルギーがさらにフィールドの硬度を上げる。
つまり敵の攻撃がバリヤーの硬度を高め敵の攻撃を防ぐということだ。
発射された要塞砲を防ぐと、僕は対艦刀を艦首に展開し、大型戦艦が急に現れたため混乱するレオナルド側の要塞艦に向け突撃をかける。
亜光速の機動が宇宙に蒼い光のラインを描く。
狙いはレオナルド側の要塞艦に侵食したニアヒュームのコア。
亜光速で機動し接近、対艦刀で串刺しにする。浅い。レールガンを撃ち込む。
コアを撃ち抜くと、迎撃の火線を回避し、次の獲物へと向かう。
コアの位置は次元レーダーが把握している。
ターゲットが仮想画面にグラフィック表示される。
要塞艦に侵食しているニアヒュームは全部で5。
それを次々に破壊していく。
正規軍の要塞艦に侵食したニアヒュームは正規軍の搭載艦が始末したようだ。
この世界の宇宙艦は次元跳躍以外での移動速度は大したことがない。
せいぜい最高速度でマッハ1000程度だ。
巡航速度だともっと遅いし、艦隊行動中の戦闘では速度がありすぎると衝突の危険があり、もっと遅くなる。
光速はマッハ88万強。亜光速といえども桁が違うと理解してもらえるだろう。
要塞艦のコアを全て破壊すると、次元レーダーで味方を攻撃中のニアヒュームを索敵、マルチロックオンをかける。
ニアヒューム艦に10門の長砲身5cmレールガンからGバレットを撃ち込んで行く。
敵艦もレールガンの弾体も全てが止まって見える。僕の思考にも加速がかかっているようだ。
コース上の邪魔なニアヒューム艦には専用艦を体当たりさせる。
拉げるニアヒューム艦。だが、相転移フィールドにより専用艦はノーダメージだ、
そしてついに味方の要塞艦に纏わり付くニアヒュームは居なくなった。
「さてレオナルドはどこだ?」
感想、誤字報告ありがとうございます。
少しずつ遡って返信していきたと思ってます。
次元格納庫内に本体があることは097で伏線を張ってます。
アキラの無双しすぎの修正と表現不足を加筆修正しました。
要塞艦の自爆装置を使わなかった&使えなかった理由を加筆しました。