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150.5 閑話・過去 レオナルド

今夜2話更新します。

side:レオナルド


「この子が皇子ですって?」


 こいつは何を言ってるんだ? と訝しむ女がいた。

そりゃそうだ。皇子といえば皇帝の子だ。

そんな覚えがないことぐらい自分が一番良く知っている。

帝国民全てに授与される腕輪、その授与が貧民街にも及んでいた。

その授与過程で調べられる皇帝の因子の検査、そこで息子が皇子だと言われたのだ。


「皇子には血筋皇子と天然皇子がいるのです。彼は自然発生の皇帝の因子持ち、つまり天然皇子なのです」


 その瞬間、母ひとり子ひとりだった親子の生活は一変した。

貧民街での生活が、いきなり星系持ちの領主である。

しかも皇子。つまり皇帝候補だ。

子の名前はレオナルド。父もわからぬ私生児だった。


「母ちゃん、これ、うめーな」

「そうでしょう。皇都で有名なレストランに出張してもらったのだから、美味しいに決まってるわ」


 母は大きな宝石のついた指輪を、全ての指にはめて食べにくそうにしながら言う。

親子は急に良くなった生活に溺れ贅沢三昧をしていた。

貧民から第13皇子に認定され、母親も皇子の母として領地の財を湯水のように使っていた。


 そして年に一度の皇位継承順位判定の日が来た。

レオナルドは、その母親の散財がたたり星系の経済は傾いており領民も流出、その結果年に1度の皇位継承順位判定で第15皇子まで継承順位が下がってしまっていた。

最下位の第15皇子まで下がった天然皇子は5年連続で最下位だと廃嫡となる。

このままではレオナルドも廃嫡の危機だった。


「レオナルド! なんとしてでも継承順位を上げるのよ!」

「母上、そのためには宝石などを売って経済復興の予算を組まねばなりません」


 レオナルドは利発だったが、無学な母親はレオナルドに暴力をふるった。


「レオナルド! あんたはあたいの宝を奪うと言うの? この親不孝者が!」


 暴力をふるっても何も解決しないのはレオナルドでさえわかっていた。

だがレオナルドはたった1人の身内に逆らうことは出来なかった。


 レオナルドは知恵を絞った。

その結果、この最下位廃嫡のシステムには穴があることに気付いた。

14位(ブービー)15位(最下位)が1年置きにお互いの順位を入れ替え続ければ誰も廃嫡にならないと。

レオナルドは第14皇子にかけあい1年置きにお互い継承順位を入れ替えるという協定を結んだ。

だが、継承順位は武力、経済発展度、品格といったポイント制による。

経済がガタガタのレオナルド領では第14皇子に負け続けてしまう。

つまり第14皇子にはメリットが無い。そのメリットとして……。

レオナルドは人身売買を始めた。自領から美人を攫い第14皇子領に密輸したのだ。

その見返りとして不公平取引を行いレオナルド領に数字上だけ儲けた年を作る、

当然、次の年は逆の不公平取引で儲けを返す。

こうしてレオナルドは廃嫡を免れた。


 だが経済的問題の解決していないレオナルド領は年数が経つほど破綻へと向かう。

そこでレオナルドはとうとう儲けを返せなくなった。

激怒する第14皇子。だが不正による取引で騙されましたとは公に出来ない。

結果的に決闘となった。優位な戦力で攻めてくる第14皇子にレオナルドは劣勢な戦力で立ち向かい勝ってしまった。

第14皇子は廃嫡となり第14皇子の領地はレオナルドの物になった。

経済規模は元の3倍、無知な母親にそのことを知らせないことで予算を得、元々の領地の経済も上手く回せるようになった。

その結果、翌年レオナルドは第12皇子まで継承順位を上げた。


 継承順位が上がると社交の場に出ることも多くなった。

だがレオナルドは元々貧民街の出だ。下級貴族からも侮られることが多かった。

ここで母から引き継いだ気性が表に出た。

侮った貴族に片っ端から決闘を申し込み下していった。

勝ったその賠償で軍備を整えるレオナルド軍。いつのまにか武闘派皇子として名を上げていた。

その後も天然皇子が何人か見つかるが、ある者はレオナルドに騙され消え、ある者は上位皇子の庇護下に入って生き永らえた。


 組織が大きくなると経済も勝手に回るようになり、レオナルドや母が好き勝手やっても落ちることがないほどに経済は成熟していた。

そして皇位継承順位は武力経済力により第5皇子まで上がっていた。天然皇子としては最高位だ。

だが調子に乗っていられたのもそこまでだった。

上位の血筋皇子の庇護下にある下位皇子と争ってしまったのだ。

戦いの決着は初めからついていた。戦力比が20倍以上離れていたのだ。

レオナルドは降伏し、倍賞としていくつもの星系を差し出した。

その報を聞き、レオナルドの母は憤死した。

その星系郡が現ロレンツォ領だということが、後の侵攻を招いた理由なのかもしれなかった。

これが切っ掛けでレオナルドの中で何かの箍が外れた。


 上位の血族皇子と争い経済力を削がれたレオナルドは、軍事力と安定した領地経営でまだ第5皇子に留まっていた。

第4皇子との差は開いてしまったが、第6皇子との差も大きかったため、そこまで下がらなかったのだ。

だが衝撃が走る。新たな天然皇子が見つかったのだ。

しかも第13皇子(プリンス)を下し、その星系を手に入れたという。


「はぁ? なんでいきなり第6皇子なんだよ!」

「アキラ殿下は、皇子の中でも有数の強い皇帝の因子をお持ちなのです。足りないのは武力と経済力のみです」

「つまり、俺を抜くのも時間の問題ってことか?」


 お付の臣下は押し黙って何も答えなかった。

それが肯定の意味だとレオナルドでさえ理解出来た。

ここにアキラに対する嫉妬や僻みが生まれた瞬間だった。


 アキラの快進撃は続く。

自ら星系開発を行い経済力を上げ、争った皇子を下し賠償を勝ち取った。

皇帝陛下の覚えもよく一時的に帝国軍の指揮まで任された。

さらにはニアヒューム討伐でニアヒューム100万艦を単独で下し「100万殺し」の二つ名まで囁かれだした。

どう考えても次の継承順位判定で順位を抜かれる。

レオナルドは危機感を募らせた。


「アキラに恨みを持つなら手を貸そう」


 黒い仮面を付けた黒騎士と称する男女が現れたのはこの時だった。

彼らはニアヒュームを味方につける能力があるという。

今、隣のロレンツォ領はニアヒュームとの戦端を開いている。

レオナルド領にもニアヒュームが迫っている。

そのニアヒュームを無力化どころか戦力に出来るとなれば……。


「勝てる!」


 レオナルドが無謀な賭けに出た瞬間だった。

表現不足解消のため加筆修正しました。

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