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146 帝国内乱編4 毒を以て毒を制す

side:アキラ


『やあ、ロレンツォ皇子。僕はアキラだ。ニアヒューム対策司令兼レオナルド討伐軍司令のカイル閣下からの命令書を持って来た。

今からそちらの宙域に次元跳躍(ワープ)アウトする。撃たないでくれよ?』


 ロレンツォ(第7皇子)の艦隊が遊弋する宙域の手前1光年の位置まで来ると僕は次元通信を送った。

戦闘態勢の艦隊の中に何の連絡もせずに次元跳躍(ワープ)アウトしたら撃たれても不思議じゃないからだ。

いや、皇帝の後ろに次元跳躍(ワープ)アウトした前科があるからそこで学んだのだ。

僕は次元レーダーで詳細探査をするとロレンツォ(第7皇子)が乗っている要塞艦の正面に専用艦を次元跳躍(ワープ)アウトさせた。


『初めまして。第6皇子アキラです。今回はニアヒューム対策司令補佐兼レオナルド討伐軍司令補佐としてお邪魔させてもらうよ』


 僕はなるべくフレンドリーに自己紹介した後、司令補佐としての居住まいを正して命令を告げる。


『ニアヒューム対策司令兼レオナルド討伐軍司令であるカイル皇子からの命令を伝える。

ラスティ星系を占拠しているレオナルド(第5皇子)にニアヒュームをぶつける。

ロレンツォ皇子は生き残った方の殲滅にあたれとのことだ。

これはカイル司令の命令であり、拒否は許されない』


 ロレンツォ(第7皇子)に合流した(あきら)はカイルからの命令書を電子命令書という形で渡した。

自らの星系にニアヒュームを侵攻させレオナルド(第5皇子)とぶつけるという作戦をロレンツォ(第7皇子)自らが選択したという形にカイル共々したくなかったからだ。

これはカイルによる強制だったという公式な記録を残すためでもある。


『わかりました。カイル司令にはご配慮感謝いたしますとお伝え下さい』


 ロレンツォ(第7皇子)はカイルの意を汲み感謝の言葉を述べた。

心の中ではラスティ星系へ向かいたいだろうに、対ニアヒューム作戦を遂行するために踏みとどまった。

さらに、今度は自星系にニアヒュームが侵攻することを作戦上必要であると理解し容認するのだ。

居ても立ってもいられないところをカイル司令の命令という形で縛ってもらった。

それに感謝出来るというのは大した人物だ。


「僕も微力ながら助太刀するよ」

100万殺し(ワンミリオンキラー)の異名を持つ君の助太刀が微力のわけがないだろ。

期待しているよ。アキラ」


 いつのまにそんな二つ名が……。「殺し」はやめて欲しいな。「殺し」は……。


 ロレンツォ(第7皇子)率いるニアヒューム討伐軍の戦力は要塞艦4と搭載艦2万5千艦+援軍の正規軍が要塞艦5と搭載艦4万艦。

対するニアヒュームは小母艦級13と搭載艦11万艦。

このニアヒュームを要塞衛星1、艦船7万艦強のレオナルド(第5皇子)艦隊にぶつける。


 ロレンツォ(第7皇子)のニアヒューム討伐軍とともに僕はラスティ星系から1光年の距離に移動する。

要塞艦9に全艦艇が収容され、いつでもラスティ星系へ向け次元跳躍(ワープ)出来るように待機していた。

ラスティ星系の様子は次元レーダーにより逐一把握している。

レオナルド(第5皇子)とニアヒュームがぶつかり疲弊したところに乗り込み殲滅するのが僕達の作戦だ。



*************************************

side:アキラ


 僕達はラスティ星系の様子を次元レーダーによって詳細に把握していた。

それを実況風に表現するとこうなる。


 ニアヒュームの小母艦級が次元跳躍(ワープ)アウトしてくる。

と同時に次元レーダーで把握していたレオナルド(第5皇子)の要塞衛星から要塞砲が発射される。

ニアヒュームはそれを予測していたのか全ての小母艦級が同時に次元跳躍(ワープ)アウトする。

小母艦級1が要塞砲に撃破される中、その他小母艦級11から搭載艦が出撃する。

その数11万艦。

どうやら撃たれやすい位置の小母艦級には搭載艦が無かったようだ。

レオナルド(第5皇子)はニアヒュームに裏をかかれたということだろう。

要塞砲が次弾を発射する前に混戦となり激突する11万対7万。

これで要塞砲は発射できないと誰もが思った。

だが要塞砲が発射される。レオナルド(第5皇子)にとって無人艦など敵を葬ることが出来るなら犠牲になっても構わないのだ。

数を減らしていくニアヒュームとレオナルド(第5皇子)の無人艦。

まさに泥沼の戦いだった。

ニアヒュームは要塞衛星を最大の脅威とみなし小母艦級に単縦陣をとらせ突っ込んでいく。

1艦、また1艦と小母艦級が要塞砲の餌食になるが、とうとう小母艦級が要塞衛星にたどり着く。

その刹那、小母艦級が自爆する。

爆煙が晴れると要塞衛星の要塞砲は使えなくなっていた。

だがニアヒュームの搭載艦も数を減らしている。

しばらくの混戦の後、ついにレオナルド(第5皇子)がニアヒュームを駆逐した。

レオナルド(第5皇子)に残されたのは2万艦弱といったところだった。


 これが僕達が次元レーダーの情報により把握したラスティ星系の戦いの様子だった。

ニアヒュームはレオナルド(第5皇子)により討たれ、レオナルド(第5皇子)の艦隊はニアヒュームにより大幅に戦力を消耗したようだ。


『今がチャンスだ! 我らが星系を取り戻すぞ!』


 ロレンツォ(第7皇子)の号令で僕達はラスティ星系に次元跳躍(ワープ)する。

これでニアヒュームもレオナルド(第5皇子)も殲滅出来るだろう。


 僕はラスティ星系に次元跳躍(ワープ)アウトした。

次元跳躍(ワープ)機関の性能差で先行してしまう。


「しまった! 罠か!」


 僕の目の前にはレオナルド(第5皇子)とニアヒュームの艦隊が轡を並べこちらに砲口を向けていた。

そう、今まで次元レーダーで見せられていた情報は欺瞞情報だったのだ。

誰かが次元レーダーを妨害し、さも次元レーダーの探索結果ですよという風に偽の情報を返していたのだ。

レオナルド(第5皇子)軍の先頭に黒い塗装の2艦の専用艦が浮かんでいた。

1艦は戦闘特化、1艦は電子戦特化の特殊艦に見えた。


「こいつか。こいつが偽情報を送って来ていたのか!」


 僕はその専用艦の性能に戦慄を覚えた。

僕は連続次元跳躍(ワープ)で撤退を考えるも、一緒に次元跳躍(ワープ)したロレンツォ(第7皇子)と討伐軍の事を思うとそうするわけにはいかなかった。

要塞艦は連続次元跳躍(ワープ)が出来ないのだ。

僕は迷わず反物質粒子砲をスタンバイし敵の中心に向け発射する。

少しでも敵を減らさなければ負ける。敵は11万+7万の18万艦もいるのだ。

こちらの戦力はロレンツォ(第7皇子)と正規軍の6万5千。それと僕の専用艦が次元格納庫に持つ無人艦2万艦だ。

だが無人艦はレオナルド(第5皇子)に乗っ取られる危険がある。使えないかもしれない。

敵艦隊に向かう加速された反物質粒子、しかしその射線に小型艦が飛び込んでくる。

敵艦隊との中間で大爆発を起こす反物質粒子。

なるほど、被害が出ない距離で先に爆発させてしまうのか。

まさか反物質粒子砲にこんな対処方法があるなんて……。

反物質粒子砲を無効化され、使用制限により次元跳躍(ワープ)の待ち時間を抱えた僕は窮地に立たされてしまった。

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