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145 帝国内乱編3 逆襲

side:ロレンツォ


「このまま攻撃を続ければ、わが星系に向かうニアヒュームは撃破出来るな」


 ロレンツォ(第7皇子)は正面を見据え順調に減っていくニアヒューム艦の様子に安堵していた。

当初ニアヒュームとの戦力差は互角だった。

次元レーダーでニアヒュームの動きを把握し、次元跳躍(ワープ)アウトする母艦級を要塞艦で待ち構えては要塞砲で撃つという、アキラが取った戦術を模倣し実行していた。

しかし、今回攻めてきているニアヒュームは小母艦級という小さな母艦単位で次元跳躍(ワープ)を行なって来ている。

そのため小母艦級の数が多く、奇襲的に撃破出来る数と生き残る数を比べれば後者の方が遥かに多くなっていた。

要塞砲を撃つと要塞艦はしばらく次元跳躍(ワープ)に使用するエネルギーが不足する。

そうなると搭載艦同士の艦隊戦を行わざるを得なくなり、ロレンツォ(第7皇子)の艦隊も少なくない被害を受けていた。

だがそういった戦闘を何回も繰り返すうちに小母艦級の数が減って来ると状況が変わった。

それはつまり小母艦級から搭載艦を発進させずに撃破出来ることで、艦隊戦の勝率が高くなっていったのだ。

それによりニアヒューム撃退は時間の問題となっていた。


「次元レーダーに反応! 敵が次元跳躍(ワープ)アウトして来ます!」


 オペレーターの叫びに要塞艦の司令室は騒然となった。


「ばかな! なぜ今まで発見出来なかったのだ!」


 怒号が飛び交う。


「次元レーダーは詳細探査時はレンジが狭くなるのです。今は正面のニアヒュームに指向していました。

ですが、敵の増援は3時の方向つまり真横からやって来たのです」


 皆絶句する。その方向とはレオナルド星系の方だからだ。


「そういうことか……。敵はレオナルド星系に向かっていたニアヒュームだ!

どうやったかは解らないが、レオナルド(第5皇子)がニアヒュームをこちらに擦り付けたのだ!」


 ロレンツォ(第7皇子)が正鵠を射る判断を示し、配下達も納得する。


次元跳躍(ワープ)が可能か?」

「はい」

「よし、敵が搭載艦を展開する前に艦を収納し撤退する。速やかに行動せよ!」


 ロレンツォ(第7皇子)対するニアヒュームの勢力は、レオナルド星系へ向かっていた勢力が合流し、戦力比はロレンツォ(第7皇子)1に対しニアヒューム1.5となっていた。

ロレンツォ(第7皇子)は現宙域からの撤退を開始した。


「また初期の戦術に戻らないとならないな……」


 ロレンツォ(第7皇子)はニアヒュームに対し長距離で要塞砲を撃っては逃げるというヒットアンドアウェイ戦法を取りしのいでいた。

だが増援到着により小母艦級の数、そこに搭載されている搭載艦の数で圧倒され始めていた。

次元跳躍(ワープ)で逃げてしのぐにも後何回も出来なかった。

既にラスティ星系まで3光年しか離れていないのだ。


「対策室に援軍要請を。このままだと我が星系にニアヒュームの進入を許してしまう……」


 ロレンツォ(第7皇子)は唇を噛んだ。

血の味が口内に広がる。


レオナルド(第5皇子)の奴め、どういうつもりだ! 帝国の危機だというのが理解できないのか!」 


 ロレンツォ(第7皇子)は歯噛みする。レオナルド(第5皇子)に対する怒りで身体が震えていた。



********************************

side:コックス子爵討伐艦隊


 そのころ、コックス子爵の討伐艦隊がラスティ星系に到着した。

次元跳躍門(ゲート)は封鎖されておらず、そのまま全艦で星系に突入した。

コックス子爵は総数5万艦という艦隊を任されて慢心していた。

5万艦とラスティ星系の要塞衛星、その戦力があれば、要塞艦の使えないレオナルド(第5皇子)の艦隊3万6千艦など敵ではないと思っていた。

まだ健在であろう要塞衛星と、星系に突入して来たコックス子爵の艦隊でレオナルド(第5皇子)を挟み撃ちに出来るはずだった。

だが次元跳躍門(ゲート)を抜けた先には要塞衛星に背を向けたレオナルド(第5皇子)の艦隊と要塞砲の射線を確保するための筒状の空間回廊が開いていた。


「か、回避だ!」


 それがコックス子爵の最後の言葉だった。

要塞衛星はレオナルド(第5皇子)の手に落ちていた。

その要塞砲が次元跳躍門(ゲート)を出てきたコックス子爵の艦隊に照準を合わせていたのだ。

要塞砲は次元跳躍門(ゲート)を避けるように斜めに発射された。

その中心はコックス子爵の綺羅びやかな装飾のされたポケット戦艦だった。

コックス子爵の艦の周囲には司令部スタッフの艦が集結中で上層部全てが巻き込まれた。

残されたのは討伐軍所属の騎士爵の艦と無人艦だけだった。


 指揮系統が混乱する中、キリル上級騎士は次元通信が妨害されていることに気づき、自らの支配下にある無人艦をまとめ撤退を決意する。

後ろから撃たれることを想定し無人艦を盾にし次元跳躍門(ゲート)の転移面に向かう。


「なんとか生き残り、この敗戦を報告しなければ……」


 キリル上級騎士は独自の判断で戦場を後にする。

だが、目の前で信じられない光景を目撃する。

討伐軍が連れて来た無人艦が、味方の有人艦を攻撃していた。

キリル上級騎士にも無人艦の攻撃が降り注ぐ。

幸い、自分の指揮下にある無人艦は制御が効いている。

キリル上級騎士は指揮下の無人艦を盾に窮地を切り抜ける。

だが、次元跳躍門(ゲート)までがいつにも増して遠い。


「速く、速く!」


 その焦りが回避を単調にし、キリル上級騎士は専用艦の右舷に直撃弾を食らう。

ガクっと速度が落ちる。


「あと少しなのに……」


 キリル上級騎士は最後の力を振り絞って通信ポッドを射出した。



******************************

side:電脳空間極秘会議室(アキラ、カイル)


「これがラスティ星系派遣軍からの最後の報告だ」


 (あきら)カイル(第1皇子)からの緊急招集で電脳空間の極秘会議室にアバターを飛ばしていた。

キリルという上級騎士が放った通信ポッドからコックス子爵敗戦の報告を受けカイル(第1皇子)に呼ばれたのだ。


「要塞衛星がレオナルド(第5皇子)に奪われ、コックス子爵が戦死。無人艦が指揮権を奪われ味方を攻撃か……」

「誰かの戦術に似ているな」


 カイル(第1皇子)が僕を見つめて言う。


「もしかするとレオナルド(第5皇子)は侵食弾を使えるのか?」

「そんなはずはないが……」

「少なくとも無人艦を再支配する手段を持っているということだね」


 カイル(第1皇子)は両手を広げて首を振りわからないというポーズをとった。

要塞砲の攻撃で派遣軍5万のうち5千がコックス子爵共々消滅した。

その後、無人艦の指揮権が奪われ、小隊指揮権を持つ有人艦を中心に攻撃を受けた。


「つまり、約4万弱の無人艦がレオナルド(第5皇子)の手に渡ったということだね。

これでレオナルド(第5皇子)の艦隊は7万強に拡大したということか」


 これは母艦に収まっているといった例外を除けば、僕が単艦で出撃しても対処不可能な数だ。


「どうするの?」


 僕はカイル(第1皇子)に向かって今後の対策を尋ねる。


「無人艦の指揮権を奪われる仕組みが判らないうちは、無人艦を向かわせるのは得策じゃない。

かと言って、有人艦だけの艦隊で10万以上を集めるなど現状では不可能だ。

やはりニアヒュームをぶつけてみるか」

ロレンツォ(第7皇子)からも援軍要請が入っているし、それがいいかもしれないね……」

「ああ、君はロレンツォ(第7皇子)の艦隊に合流して、ニアヒュームあるいはレオナルド(第5皇子)の敗残戦力殲滅に参加してくれ。漁夫の利を狙う」

「わかった。向こうでも随時報告を入れる」


 僕はアバターを引き上げると専用艦をロレンツォ(第7皇子)艦隊に向け発進させた。


 僕はロレンツォ(第7皇子)に合流すべく専用艦を次元跳躍(ワープ)させた。

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