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135 遠征編20 宰相

短いです。

『ふん。儂が謝罪してやるんだから感謝するんだな』


 宰相は開口一番、わけのわからないことを言って来た。


『『『それのどこが謝罪だ!』』』


 立会人のカイルに僕、神澤男爵が呆れ返る。


『謝罪するならまず(あきら)に対するデマを公の場で正式に撤回し名誉挽回をすること。

今回のテロの責任が第3皇子イーサンにあると表明すること。

宰相の立場を悪用したからには宰相を辞任すること。これぐらいはしないと謝罪にならないよ?』

『そんなことが出来るわけがないだろ!!』


 宰相が自分の立場もわきまえず吠える。


『なら戦争だ。地位を失うか命を失うかの二択だと思ってもらってかまわない』

『アキラ側には他の皇子も帝国正規軍もついた。近衛も陛下を護るためなら宰相を討つと言っている。

どちらにしろ、陛下の意識が戻ったらどうなるか考えることだ』


 僕の通告にカイルが追い打ちをかける。


『ぐぬぬ』


 宰相は一言唸ると通信を切った。


『だめかね?』

『だめだな』

『でしょうね』


 どうやら宰相は戦争による死を選択したようだ。

だが戦争にはならない。なぜなら……。



*****************************



『ぐぬぬ』


 宰相が通信を切る。

彼はまだ自分の危うい立場がわかっていなかった。

アキラを排除しカイルにまで責任を被せれば孫のイーサンを皇帝にすることが出来る。

皇帝が重症を負ったと聞き、最大のチャンスだと思った。

皇帝が助かるなどとは少しも思っていない。

医療カプセルに細工して処分すればいいと思っていたからだ。

証拠など捏造すればいい。アキラを追求し世論を扇動すれば簡単だと思っていた。

だが、アキラ側は理路整然と証拠を連ねた映像を持ち出してきた。

映像は視覚から直接訴えて来て、ただの噂話など掻き消すほどの効果を持っていた。

この映像により世論は一気に宰相バッシングに変わった。

それでもまだ戦争でアキラを討てば挽回出来ると宰相は思っていた。

宰相につけば美味しい汁が吸えると思っている貴族などいくらでもいる。

その全戦力をもってアキラを討てば逆転の芽はある。

公に謝罪すれば宰相の立場も失う。その選択肢など最初から持ってはいなかった。


『戦争だ! イーサン、戦力はどのぐらい集まった? おい、返事をしろ!』


 宰相は秘匿通信で孫の第3皇子イーサンに繋げたが応答が無かった。

その時、宰相執務室に憲兵隊が雪崩れ込み宰相を取り囲んだ。


「宰相閣下、皇子殿下会議の総意により第1皇子カイル殿下が皇帝代理を襲名しました。

カイル殿下の命によりあなたは解任されました。国家反逆罪で逮捕します」

「そんなバカな。何が国家反逆罪だ!」

「ご存じない? 第3皇子領はニアヒュームに汚染されて壊滅しましたぞ。

ニアヒュームを帝国内に引き入れ、剰え対ニアヒュームの英雄アキラ殿下を貶めようとした罪。

国家を危うくする企みの何ものでもない。これを国家反逆罪と言わずになんと言うか!」

「儂は宰相だぞ! 国家を思うが故にアキラなどという天然皇子を排除しなければならんのだ!」

「それで国を危うくしたのでは本末転倒でしょうに!」

「ぐぬぬ」


 宰相は項垂れると連行されて行った。



**********************************



『終わったな』『ああ』


 僕達は一部始終を見ていた。

この後、第3皇子領を閉鎖しニアヒュームを殲滅するのは大仕事だった。

なぜか第3皇子イーサンは寄生されることなく生きていた。

今回のアキラ中傷事件は宰相の独断ということでイーサンの罪は問えなかった。

ただニアヒュームを帝国領に引き入れた罪だけは残ったが、星系を失う被害を受けたのがイーサン本人だったため、加害者が被害者という面倒な立場となり不問となった。

悪運の強い奴だ。

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