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134 遠征編19 プロパガンダ映像

『カイル、君は皇帝陛下を警護して。宰相が陛下の娘にまで手を出しかねない奴なら陛下が危ない。

僕は主星系で(いくさ)の準備をする。第3皇子がどのようなつもりか判らないけど戦いになると想定して動くつもりだ』

『わかったよアキラ。宰相が謝罪しないなら皇帝陛下に仇なす人物として僕も参戦する。ヘンリー(第2皇子)にも話をつけよう』

『まず情報戦で叩くから楽しみにしといて。じゃあ、ステフ、こっちにおいで』

『はい』


 ステフの専用艦が近付いて来ると次元格納庫に入り消える。


『目標エリュシオン。次元跳躍(ワープ)開始!』


 目の前の映像が一瞬で変わり、僕は主星系エリュシオンに到着した。

エリュシオンの開発は進み、3つの惑星に人が住み資源を有効に使える状態になっていた。

工業惑星ダロン4もフル稼働するようになり、新造の要塞艦や工業衛星が次々に竣工し、開発中の星系へ配備され防衛や開発資材の製造に活躍していた。


『着いたよ』

『おおっ』『ん』『あらあら、もう着いたのですか?』


 次元格納庫からジェーン、美優(みゆ)、ステフの艦を出す。

そういやジェーンと美優(みゆ)の専用艦はアノイ要塞に置きっぱなしか。

事務所も家もあそこなんだけど、どうしようか。


『おお、晶羅(あきら)、帰ったのか』

『社長! いや男爵。エリュシオン星系の開発、凄いじゃないですか』

『だろ。アノイ要塞から事務所と家も引っ越しておいたからな』

『マジか! 先手先手で動く。さすがは有能経営者!』

『ジェーンと美優(みゆ)の専用艦も持ってきてあるぞ。キャリーとマリーがジェーンの艦を、紗綾(さーや)綾姫(あやめ)美優(みゆ)の艦を曳航してくれたから、後でお礼を言っておけよ』


 ジェーンと美優(みゆ)が青くなっている。

4人には抜け駆けしたことで怒られるのは確定だというのに、お礼を言いに行かなければならない。

しかも抜け駆けした間、ほとんど僕と一緒にいられなかったという。

うん。僕も一緒に謝りに行こう。

だが、僕には先にやらなければならないことがある。


『神澤男爵、戦闘態勢だ。帝国宰相とやりあうことになった。

まずは男爵お得意の宣伝戦で民衆を扇動する。宰相を朝敵にしてやるぞ。

あと彼女はステファニー。皇帝の娘で新しい嫁だ』



*********************************



帝都宰相執務室。


「なんだこれは!」


 宰相が声を上げる。

慌てて執務室に飛び込んで来た補佐官が持ってきた端末に映っていたのは、アキラが帝国ネットワークに流したプロパガンダ映像だった。

そこには今回の顛末が全て証拠付き(一部フィクション)で映像化されていた。


 ニアヒュームのコアを戦利品として手に入れる下級貴族。(CG)


『この貴族は第3皇子配下です』というテロップが入る。(実際は未確認です。ルーカス配下が濃厚です)


 汚染され乗っ取られ部品にされてしまう貴族の禍々しい姿の実際の映像が映し出される。(別の艦のだが)

そこから感染が広がり、オースティン伯爵の艦が乗っ取られる。

ケーブルを振り回し他の艦に感染しようとしている実際の映像が映し出される。(別の時のだが)


 またも入る『オースティン伯爵は第3皇子配下です』というテロップ。(事実です)


 機械貴族にされてしまうオースティン伯爵。

当然機械貴族の実際の映像(顔にはモザイク)が映し出される。(別人だからね)

そして皇帝陛下の総旗艦に自爆テロを起こす機械貴族(オースティン伯爵)。(実映像+CG)


『陛下は重症だ。自爆テロの傷は軽くない』と言う第1皇子カイルの映像と音声が流れる。(実映像)


 撤退していく帝国正規軍。

そこから敵ニアヒュームを炙り出し排除するアキラとカイルの勇姿が映る。(実映像)


『汚染された艦を1艦でも逃したら帝国がいや人類が滅びてしまう!』と力説するアキラ。(別撮り)


 次元跳躍(ワープ)で逃げていく第3皇子の専用艦。(CG)


『汚染チェックも受けずに行ってしまうとは何て無責任なんだ』というアキラ。(別撮り)


 帝都に帰るカイルとアキラ。(実映像)

宰相に事情説明を求められ事情聴取されるアキラとその理不尽な内容が流れる。

『宰相は第3皇子の母方の祖父です』というテロップが入る。(事実です)

無茶苦茶な論理で攻め立てる尋問官の実際の映像と台詞。

尋問官の脅迫により決闘を持ち出すアキラとバカにする尋問官の実際の映像が流れる。


 最後にアキラが出てきてカメラを見つめ話しだす。


『第6皇子アキラです。このような責任転嫁及び理不尽な誹謗中傷は我慢なりません。

敵の侵攻中という帝国の危機にいったい何をしているのか! 僕は宰相に謝罪と訂正を求めます。

まともな対応が出来ないなら決闘を申し込みます。僕は戦争も辞しません!』


 条件付きだがアキラの戦線布告が行われた。

この映像を見て顔を真赤にする宰相。慌てて連絡してくる第3皇子(イーサン)


『お祖父様、どうしよう。アキラ(第6皇子)側にはカイル(第1皇子)ヘンリー(第2皇子)ルーカス(第4皇子)も付いたらしい』

『ぐぬぬ。これでは我々が悪いみたいじゃないか!』


 いや悪いんです。



**********************************



「さすが神澤社長。いいPV(プロパガンダビデオ)を作ってくれたね」

「社長は久しぶりに乗り乗りだったんですよ」

「言うな菜穂(なほ)。まあ面白かったがな」

「嘘も混ざってるけど、概ね真実だからね。相手の嘘の方が100%嘘で質が悪い」

「これで謝罪して来なかったら戦争か」

「うん。男爵、配下の貴族にも根回ししといて。僕は工場母艦に新鋭艦を量産してもらって無人艦を増やす」


 ニアヒュームの脅威を思うと内戦をしている場合じゃないんだけど、敵対してきたからには潰す。

まあ第3皇子の艦隊はニアヒュームの汚染で今頃……。

6700pt突破ありがとうございます。

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