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130 遠征編15 急転

短いのです。

『皇帝陛下、指揮権をお返しします』


 僕はその言葉とともに戦術兵器統合制御システムを解除した。

この時、もし僕が戦術兵器統合制御システムを解除しなかったら、いや主力艦隊に情報を与えるだけではなく素性を調べていたら歴史は変わっていたのだろうか?

後悔してもしきれない事件はこの後起こった。


 戦艦が1艦、すーっと皇帝の座乗する総旗艦に接近して来た。

その意匠は貴族の座乗する専用艦だろう。

総旗艦を護衛する近衛艦隊も見知った艦であったのかスルーしてしまう。


『オースティン伯爵、何用か?』


 近衛隊長が詰問する。

しかし戦艦は応答することなく近付いて行く。


『伯爵! いかに貴族でもそれ以上の接近は武力で排除せざるを得ませんぞ!』


 すると戦艦が急に速度を上げ総旗艦に突っ込んで来た。


『な、何をする!』


 近衛艦隊が一斉射撃に入る。だがその時には既に遅かった。

戦艦は対消滅反応炉を暴走させ総旗艦ごと爆発した。

所謂(いわゆる)自爆テロだ。


『皇帝陛下!!』


 総旗艦の中央、CICのある付近までがごっそり抉られていた。

何が起きたのか理解できずに呆然とする近衛艦隊の兵達。

さらに各所で起きる自爆テロの数々。

自爆していくのは皇帝の率いる主力艦隊の艦だ。


『アキラだ。皇帝陛下の安否確認を急げ! 航宙士(パイロット)転送システムが生きてるなら航宙士(パイロット)回収艦の護衛を!』


 僕は勝手ながら指示を出す。

なぜ主力艦隊がテロを起こす? 貴族の反乱か?

僕は戦術兵器統合制御システムを起動し主力艦隊を再支配しようとした。

しかし、その中で支配に応じない艦が存在していた。

その艦が自爆していく。

再度支配をかける。

電脳の先に何か得体のしれない物の感覚があり支配を拒絶する。

人ではない何かの感覚だ。


「これはそういうことだよね?」


 なら躊躇う必要はない。


『敵と思われる艦を把握した。味方だと思うな。撃て』


 僕は主力艦隊全艦に敵と思われる艦をマーキングして情報を送る。

さらに次元格納庫から新鋭艦を出して護衛にあたらせる。

護衛対象は回収艦と僕だ。

その新鋭艦の1艦が対艦刀を展開し接近中の敵と思われる艦のエネルギー電装系を刺し貫く。

エネルギーが電脳に伝わらず機能停止する敵と思われる艦。

僕は工作艦を出してその艦を解剖する。

装甲板を剥がした中身は……。


『なんてことだ。主力艦隊の一部が敵ニアヒュームに汚染されている!』


 僕はその解剖映像を主力艦隊全艦に送った。

その映像は艦の電脳に寄生するニアヒュームのコアと、そこに繋がれた帝国兵の成れの果ての醜い映像だった。

おそらく前回の防衛戦で寄生され乗っ取られたのだろう。


『マーキングした艦は全て汚染されているはずだ。誰であろうが構わず撃て! 貴族でもだ!』


 だが主力艦隊の兵には躊躇いがあった。

自分の同僚が、主君が、敵だと言われているのだ。

はいそうですかと撃てるわけがない。


『撃てない者は下がれ。敵と思われる艦を艦隊から分離するだけでいい。敵対行動を取られるか無人艦なら撃てるだろ』


 主力艦隊が各支隊に分かれて再編されていく。

僕は次元跳躍門(ゲート)前に陣取ると戦術兵器統合制御システムで個々の艦をチェックし、汚染されていない艦を次元跳躍門(ゲート)で避難させる。

しれっと混ざって来る敵にはGバレットを撃ち込み破壊する。

自爆されると面倒な大型艦は侵食弾で拘束していく。


『近衛艦隊は総旗艦を曳航、回収艦とともに次元跳躍門(ゲート)で王都に撤退せよ』


 皇帝は回収艦に収容されたようだが、安否は不明だ。


『カイルは無事?』

『無事だ』

『良かった。悪いが僕と残って残敵掃討を頼むよ』

『わかった。まさか主力艦隊が汚染されているなんて……』

『寄生されている艦隊に偏りはある?』

『ニアヒュームと戦闘経験の少ない地方領主の領軍に偏っているみたいだ』

『コアを破壊しなかったか、あるいはコアを戦利品にしてしまったのかな』

『そんなところだろう』


 僕達は敵に汚染された艦を次々に敵認定して葬って行った。


『こちら第4皇子ルーカスだ。僕のところの兵が見苦しい事をしでかしてしまった。僕も残敵掃討に参加するよ』

『ルーカス、君の所の兵だったのか……。皇帝陛下を害する事になったからには責任問題になるぞ』


 カイルが厳しく指摘する。確かにそれは拙いわ。


『例え優秀な配下だろうが、例え母上だろうが、この不始末の原因を作った者は僕自身が処分するよ』


 ルーカスは並々ならぬ決意で挑むつもりのようだ。


『かける言葉もないな』『うん』


 こうして僕達は味方を逃がしつつ敵に汚染された艦を処分していった。

既に何艦かの戦艦が自らの次元跳躍(ワープ)機関で逃げに入っていた。

誰がという情報が無いところでの逃亡は(のち)に問題となりそうだ。

奴らは増殖するらしいから厄介だ。


『第2皇子と第3皇子は、どっちだと思う?』


 カイルが嫌な事を言い出した。逃げた中に彼らがいたのは間違いないからだ。

評価、ブックマークありがとうございます。

執筆の励みになっています。


不確定なまま敵を葬ったような表現になっていたため修正しました。

晶羅には敵だとの確信があっての攻撃命令です。


連番が狂っていたので修正しました。

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