129 遠征編14 再侵攻5
『全艦注目! 第6皇子アキラだ。この度私が敵ニアヒューム殲滅の指揮を任されることになった。私の命令に従うように。
仮想スクリーンを開け。今送った情報が敵母艦級の次元跳躍アウト予測地点だ』
僕の号令と共に帝国主力艦隊各員の目の前に仮想スクリーンが開き、宇宙空間のリアル映像に敵母艦級の簡易グラフィックが重なり表示される。
『そして、このラインが反物質粒子砲の射線予想軌道になる』
仮想スクリーン上の僕の専用艦のグラフィックから13本のラインが伸び、敵母艦級の次元跳躍アウト予測地点へと伸びる。
『このラインに引っかかっている艦があれば軌道から退くように。ラインに触れたら一瞬で爆散するぞ』
仮想スクリーン上でラインに触れた艦が爆散、周囲の艦を巻き込むグラフィックが表示される。
『味方も巻き込むからそのつもりで。無人艦も責任を持って退避させるように』
13本のラインが3D表示され上下左右ぐるぐる動かして見せる。
そしてラインに触れている艦には警告表示が出る。
『諸君の任務は私の専用艦の護衛だ。敵母艦級から発進した敵搭載艦から私が攻撃されないように守ってもらう。
敵母艦級に対して反物質粒子砲は1発ずつしか撃てない。撃たれた後の敵母艦級及び搭載艦の掃討も諸君らの任務だ。
各母艦級の担当は仮想スクリーンに表示された色分けの通りだ』
各自の担当宙域が色分けされ仮想スクリーンに表示される。
振り分けは補助電脳がやってくれる。それが各自の視線で映像を切り替えて表示されている。
補助電脳が無ければ大変なところだった。
『反物質粒子砲が直撃した敵母艦級は大爆発を起こす。巻き込まれないように距離を置くように』
安全圏のラインが仮想スクリーンに表示され飛び出している艦には警告が出る。
『反物質粒子砲は敵母艦級の次元跳躍アウト順で撃つ予定だ。同時出現の場合は中心から順に撃つ』
仮想スクリーンの敵母艦級に仮の数字が割り振られて表示される。
『発射順が変更された場合はその都度数字が変更されるので確認するように。
くれぐれも射線を遮らないように。1発しくじれば敵5万がそのまま襲ってくると思え。
作戦開始時間は約5時間30分後。仮想スクリーンにカウントダウンを表示する。
それまでに陣形を変更、射線を開けろ。以上』
作戦開始までのカウントダウンが仮想スクリーンに表示される。
120万の艦隊が仮想スクリーンに表示された指示に従い陣形を変更していく。
『アキラ、ちょっといいか?』
皇帝から通信入る。
『なんでしょうか?』
『この仮想スクリーンに出ている情報はどうやっているんだ? こんなのは初めて見たぞ』
『え? 艦隊旗艦に標準装備されている戦術兵器統合制御システムの機能ですが?』
『ちょっと待て。お前の専用艦の艦種は艦隊旗艦なのか?』
『はい。艦隊指揮艦、俗に言う艦隊旗艦です』
『レア艦種じゃないか!』
『え?』
『おまえの専用艦がめちゃくちゃな理由がわかったわ』
『あげませんよ?』
確かにめちゃくちゃだけど、あげないからね?
カウントダウンが残り100となる。
僕は反物質粒子砲の反物質カートリッジを13用意した。
次元格納庫のサブ対消滅反応炉も使い総力を上げて充填することになる。
もし、このカートリッジの封印が破られれば半径50kmが球状に消滅するだろう。
僕は敵母艦級の次元跳躍アウト予測地点の中心に照準をつけ待機する。
次元レーダーには予測地点中心の敵母艦級が最速で次元跳躍アウトするであろうことが映っている。
仮想スクリーンに反物質粒子砲の射撃順がナンバリングされていく。
敵母艦級は紡錘陣形で次元跳躍アウトしてくるようだ。
後ろの敵母艦級を狙うライン取りが出来ない。
敵も無茶をする。もし次元跳躍アウト地点がズレて重なったらお互いに消滅だろうに。
カウントダウン0。
射線クリア。僕は敵母艦級1番に反物質粒子砲を撃ち込む。
『1番命中。続けて2番!』
敵母艦級2番に向け2発目。続けて3番、4番と螺旋状に撃って行く。
『5番。狙えない。6番発射!』
5番が1番のデブリで狙えない。急遽目標を変え6番を撃つ。命中。
『7番。8番。9番発射』
続けて発射していく。全弾命中。
爆発が大きく紡錘陣形の後ろに隠れている10番から13番が狙えない。
『5番。10番。11番。12番。13番は撃ち漏らした。敵搭載艦を殲滅せよ』
僕は搭載艦の殲滅を主力艦隊に任せ、敵母艦級への射線を取るために移動することにした。
『10分耐えてくれ!』
反物質粒子砲の使用制限である次元跳躍の連続使用不可により10分のインターバルが必要になる。
120万の主力艦隊が敵搭載艦25万+残存艦と激突する。
敵母艦級を逃すと最大20万の増援が来る。
せめて母艦級を次元跳躍不能に追い込まなければならない。
『よし時間だ。敵後方俯瞰位置へ次元跳躍する。誤射するなよ!』
僕は次元跳躍で敵母艦級を狙える位置に移動する。
敵母艦級は搭載艦を放出すると後退を始めている。
おそらくこの4艦の母艦級が後方の艦隊を回収しに行くのだ。
そのために後方で守られるような位置取りをしていたのだろう。
次元跳躍される前に撃つしかない。
『反物質粒子砲を発射する!』
僕は僚艦に警告を出す。
わざわざ射線に入ってくる僚艦はいないだろうが必要なことだ。
『照準! 10番! 発射!』
『11番、発射! 12番、発射! 13番、発射!』
続けざまに4発を撃ち込む。
敵母艦級は全て爆散した。
『敵艦隊、接近中!』
電脳から警告が来る。
僕の専用艦に向けて敵搭載艦が群がってくる。およそ2万。
拙い。10分のインターバルで、まだ次元跳躍で逃げられない。
敵艦はビーム主体。たまにミサイルを撃ってくる。
ミサイルは対宙レーザーと5cmレールガンで撃ち落とす。
ビームはビームキャンセラーと耐ビームコーティング装甲で耐えるが、防御力がガリガリと削られていく。
背に腹は代えられない。次元格納庫から無人艦を出して盾とする。
その時、希望が見えた。
僕は専用艦に向かって来ている味方艦隊を発見したのだ。
味方艦隊の一部が僕を援護するため突出して来ている。
僕は専用艦を味方艦隊に向けて撤退させる。
『待たせたね。僕が来たからには君を討たせたりしない!』
その艦隊はカイルの艦隊だった。カイルが助けに来てくれたようだ。
『カイル! 助かる』
僕はカイル艦隊と交差し安全圏に逃れる。
カイル艦隊は総数2万艦だ。艦の性能差を入れれば有利とはいえ艦数は五分。
僕は専用艦を反転させるとカイル艦隊の援護に向かう。
長砲身5cmレールガン3門を起動し敵艦にGバレットを撃ち込んで行く。
カイルと共にざっと5千艦ほど葬ったところで、主力艦隊10万が到着、敵を掃討した。
この度の戦場で一番の激戦地は撃ち逃した敵母艦級5番の担当艦隊だった。
デブリと反物質弾が衝突すればその場で大爆発してしまう。それで撃てなかったやつだ。
しかし前回の戦闘より被害は圧倒的に少なく帝国軍の大勝利といえた。
しかし、僕の専用艦は単艦での戦闘が祟って少なくない損傷を負った。
前回に僕があまりにも活躍したため当てにされてしまった結果がこれだ。
このまま使い潰されないようになんとかしなければ拙い。
「僕が半分以上は倒したんだから報償でゴネてやろうか」
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