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118 遠征編3 皇帝拝謁

短いです

「さて行こうか」


 礼服に着替えるとカイルの先導で謁見の間に向かう。

その道すがら謁見のマナーを教えてもらう。


「謁見の間に入ったら前に進んで良き所で止まる。これは僕に合わせれば問題ない。

そして片膝――片膝は左膝を付いて右膝を立てる――を付いて(こうべ)を垂れる。

そこで挨拶だ。僕に続いて君も挨拶するように。

皇帝陛下が面を上げよと仰られたら顔を上げる。そして質問されるまでは口を開かない。

質問以外の事を話さない。お付に下がれと言われたら立ち上がって退室する。というのがマナーかな」

「カイルを手本にしてなんとかこなすことにするよ……」

「まあ挨拶だけだから。心配しなくて大丈夫だよ」


 そうこうするうちに謁見の間の控え室に到着する。

さすがに皇帝がずっと謁見の間にスタンバイしているわけではないので時間調整が必要だということだろう。

めちゃくちゃ緊張する。僕は天然皇子で皇帝と血の繋がりがあるわけじゃない。

他人だけど皇位継承権がある立場。どんな顔をしたらいいのかわからない。



 しばらくお茶を飲みつつ時間を潰していると、僕とカイルが呼び出される。いよいよ謁見だ。


「大丈夫。挨拶だけだから」


 カイルが僕をリラックスさせようと声をかけてくれる。心強い。

僕らは謁見の間の大扉の前に到着する。


「第1皇子カイル殿下、第6皇子アキラ殿下、御成りあそばされました」


 大扉の前の衛兵が名乗りを上げる。と同時に大扉が開いていく。

皇帝が座す玉座まで一直線に赤絨毯が敷かれている。

その両脇に勢揃いする帝国の重鎮たち。

その目が一斉に僕の方に向く。

そりゃ第1皇子は珍しくないもんね。当然注目の的は僕に決まってる。

なんだか視線で殺されそうだ。護衛のラーテルを連れて来るべきだったか。

いやどうせここには護衛を連れてこれない。

そんなことを考えているうちに皇帝の前まで来てしまった。

カイルが片膝を付く。その隣で僕も片膝を付いて頭を垂れる。


「第1皇子カイル、陛下の勅命に応じ馳せ参じました」

「第6皇子アキラ、同じく馳せ参じました」

「大儀であった。面を上げよ」


 僕の目の前に帝国皇帝がいた。皇帝は見た目年齢40代、目力の強い精悍な顔立ち。

武勇に長けた戦国武将、そうゲームの美化された織田信長を連想させる。いや本人の肖像画がしょぼいという意味じゃなくね。

なんて考えていると僕は今になって皇帝の名前すら知らないことに気付き焦る。

キョドる僕を皇帝が見据える。


「お前がアキラか。巡洋艦1艦で来たそうだな」


 これは質問だよね? 答えるべきなんだよね?


「はい。期日に間に合う艦が()の専用艦しか無かったもので」

「なんだ、お前専用艦がまだ巡洋艦なのか」

「はい」

「だが面白いな。巡洋艦で次元跳躍(ワープ)機関を搭載しているなんぞ聞いたことがない」

「あはは」


 僕は笑って誤魔化すしか出来なかった。


「元々間に合うわけが無い期日を間に合わせたのも前代未聞。よしアキラ、お前この後の軍議にも来い」

「ははっ。有り難き幸せ」


 僕は時代劇の知識を総動員して場を乗り切った。

挨拶だけって行ったじゃん。カイル!

皇帝が興味を失うと同時に皇帝の向かって右に従う重鎮が僕らに退室を促す。

カイルと僕は立ち上がるとそのまま大扉を抜け退室した。


「皇帝陛下は君に興味津々だったね。僕にはお言葉をかけてくださらなかったぞ」

「いや、それはカイルがいつも会ってるからでしょ」

「まあ、そういうことにしておきましょうか。この後軍議にも呼ばれていたね。そこも一緒に行こう」

「やっぱりカイルも呼ばれてるんだね」

「まあね。だが呼ばれるということは戦うことを要求される。皇帝陛下直参の軍人の中には君の厚遇を面白く思っていない連中もいるかもしれない。気をつけるんだぞ」


 いやいや嫉妬されて単艦で突撃とかは勘弁して欲しい。

身を守るためには秘密兵器を秘密にしておくわけにはいかないかも。

とりあえず軍議に出れば敵の情報が得られるはず。

無謀な作戦ですり潰されるようなら次元跳躍(ワープ)で逃げちゃおう。


「ところで皇帝陛下のお名前は?」

「え? 知らなかったの?」

「うん……」

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