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113 領主編25 復興

遅くなりました。ごめんなさい。

「よくもまあここまで徹底的に破壊工作を行ったものだ」


 ダロン4の惨状は目を覆いたくなるものだった。

政府機能の完全破壊。工業惑星としての生産力の破壊。住民に対するライフラインの破壊。

穀倉地帯の焼滅。


「何が星系も君のものだだよ! 完全なお荷物。所謂(いわゆる)焦土作戦じゃないか!」


 証拠隠滅口封じで第8皇子を殺害、(あきら)達が利用できないように工業生産力を潰し、食料もなく生活が困窮している全く生産に寄与しない難民を押し付ける。

そんな難民を見捨てたら僕が批難されるという搦め手付き。

それが第9皇子主星系でも行われているのだ。

第4皇子ルーカス、どこまで性格が悪いんだ。


 お前が主犯だろと指摘したいところだけど、第4皇子側の調査力が僕達より上で第9皇子を炙りだせたと説明されたら秘密の暴露でもなんでもなくなってしまう。

だがこのように徹底的な証拠隠滅や嫌がらせ的な破壊を見せられると、奴が主犯なのは疑いようがないだろう。

幸いなのは、僕がハブ次元跳躍門(ゲート)を押さえて星系出入りをロックしていた第10皇子ケインが生き残っていることだ。

この粛清を見たら第10皇子ケインも自分がターゲットになっていることぐらい理解出来るだろう。

第4皇子ルーカスの専用艦は次元跳躍(ワープ)機関搭載だが、僕のような次元格納庫は持っていないはずだ。

単艦攻撃力は不明だが、戦力的に第10皇子ケインには手が出せないはず。

保護と引き換えに第10皇子ケインに第4皇子の関与を証言させるのも有りだな。


 まずは新たな支配星系の安定を図る。

ダロン4と第9皇子主星だったグレイド3は住人をエリュシオン星系に送って自分達で食料を確保させよう。

こっちで収穫して輸送する余裕も人手もない。ならば自分達でやってもらおう。

思想チェックは念入りに。テロリストやルーカスの工作員が紛れ込んでいたら最悪だ。

第8、第9皇子支配星系の反乱も対処しないとならないか。

ここはヘイトをルーカスに集めるように情報を流しておこう。


「社長、いや准男爵、いや陞爵させて男爵! 今回の第8、第9皇子粛清は第4皇子の仕業だってPV作ってくれない?

こちらは感謝の意を示すものの、やりすぎだという遺憾の意を強調するかたちで第4皇子にヘイトを集めてよ。

それを第8、第9皇子の元支配星系に流す」

「お前、えげつないなw」


 社長が嫌な顔をしてこっちを見るが、目は笑っている。

大ノリで仕事をしてくれるだろう。


「僕達には援助の用意があるけど収穫輸送に人手がいる。自ら家族を助けるんだって所を煽って労働力を供出させて。

あくまでも強制じゃなく自主的にやろうって気を起こさせてね」

「わかった。人手が増えればエリュシオンの経済も発展する。希望者にはそのまま移住を認めてもいいよな?」

「男爵にはエリュシオンの代官になってもらう。権限は渡すから自由にやって」

「なら首都にブラッシュリップス専用劇場建ててやるからな!」

「あはは。いいよ」


 冗談は置いておいて、第4皇子ヘイト作戦と労働力供出作戦が発令された。

人心掌握に情報戦を仕掛けるなんて、どこの独裁者だよと思う僕だった。



*************************************



「なんだ!? この映像は!」


 第4皇子ルーカスの目の前には、第8、第9皇子からアキラの領土となった星系向けのプロパガンダ映像が流れていた。


『みなさん、こんにちわ~。みなさんに今星系で起こっていることを説明しま~す』


 そこには美少女が5人映っており、第8、第9皇子による地球人誘拐とクローン兵化という忌避行為、それを糾弾する第6皇子アキラという状況が子供にも判るようにアニメ映像入りで説明されていた。

そのキャラのアテレコを美少女5人がしている。

そこに現れた第4皇子ルーカスのキャラ。


『悪い奴を懲らしめてやる! 僕は正義の第4皇子だ!』


 破壊される街、生産設備、焼ける穀倉地帯。


『第6皇子よ、僕が悪を始末してやったぞ』


 得意になる第4皇子ルーカスのキャラ。


『ありがとう第4皇子。でもこれじゃ住民が困っちゃうよ?』


 第6皇子アキラは自分の主星系から食料を運び、住民を助けようとする。

でも人手が足らなくて困っている。


『誰か収穫と輸送を助けてくれないかな?』

『俺達家族のためだ俺が手伝おう!』


 屈強な男が立ち上がる。それに呼応する人々。

食料輸送は順調に運び、インフラも修復され元の生活が蘇っていくアニメが流れる。


【第6皇子アキラはみなさんにご協力をお願いしています】


『みなさん、ご協力をお願いしま~す』


 そしてスタッフ募集の告知と連絡集合場所が案内される。

それを見ていた第4皇子ルーカスは手にしていたグラスを床に叩きつけた。

ワナワナと身震いしている。


「これじゃ僕が悪者じゃないか!」

「間違ってませんが……」


 後ろに控えていた老執事がボソっと呟く。


「ぐぬぬ」


 第4皇子ルーカスは悔しくて地団駄を踏んだ。


「セバスチャン、僕の名前で援助物資を送れ。インフラ設備の修復にも協力しろ。

箱や重機には僕の名前を大きく書いておけよ!」


 こうしてダロン4、グレイド3は復興していった。

ありがとう第4皇子。(皮肉)

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