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112 領主編24 ダロン4強襲

 嫁ーずの活躍でダロン4産の艦の情報が手に入った。

その艦は第8皇子ライオットの正規軍から配下のブィコフスキー男爵に払い下げられ、しばらく領軍の主力艦として働いた後に警邏隊に配備された老朽艦だった。


『このサンプルからクローンの専用艦の系統であるX母艦系であることが確認されました。

部品の遺伝系もX遺伝系と同じ。従ってクローンの専用艦の生産地はダロン4であろうと推定されます』


 工場母艦の鑑定により嫁ーずが採取して来たダロン4産の艦とクローンの専用艦の系統が同一であることが確認された。

クローンの出荷先であり、さらに専用艦が建造された地。

それだけで地球人誘拐に深く関わっていると言えるだろう。


「この前出した問い合わせには返事も無いんだよね?」

「はい。疑惑に利用されただけならば、慌てて調査協力をしてもいいものを、否定も肯定もなく無視されています」


 これはもう決闘してでも叩くべきかもしれない。

しかし、一桁皇子の星系に手を出すとなると他の皇子達の動きが怖い。

第1、第2、第3皇子は地球人奪還に協力的だけど、それは自分達の脅威となる皇子の力を削げるからだ。

もし僕の方が脅威だと認定されれば、その矛先はこっちに向くかもしれない。

せめて向こうに協力しないだけでもありがたいのだが……。

そのためにも、こちらの正当性をアピールするべきだろう。


「帝国ネットワークに今回の顛末をアップしろ。調査に協力しない第8皇子を僕の名で批判。

クローンの出荷先が第8皇子主星系ダロン星系であること、専用艦がダロン4で建造されたことを公表する。

第8皇子ライオットから正式な納得のいくコメントが公開されなければ、こちらは決闘も辞さないと公式に表明せよ!」


 さあ、こちらはやる気だぞ。どうする第8皇子?



********************************



某所。電脳空間極秘会議室。


 2人欠けた四天王の椅子の前に、今回は総統の玉座が据えられていた。

第9皇子である我ベンジャミンは総統のお越しをお待ちしている。

我と同格の四天王である第8皇子ライオットはアキラに名指しされ窮地に陥っている。

帝国内でも忌避される行為の主犯という汚名は、中立の諸侯はおろか味方までが離れる材料となった。

廃嫡されたプリンスは置いておいて、四天王仲間である第8皇子ライオット、我こと第9皇子ベンジャミン、蟄居中の第10皇子ケインは最早一蓮托生だった。

この3皇子の戦力を加えてもアキラの軍には敵わない。

そのため総統にも出張ってもらうことにしたのだ。

総統こと第4皇子ルーカス。我ら下位皇子をまとめ、上位3皇子に下克上を決めようとする存在。

このような時こそ我らの陣頭に立って戦ってくれるものと信じていた。


「来ぬな……」

「我らは見捨てられたのやもしれぬな」


 第8皇子ライオットが落胆の声を上げる。

ライオットは我と同い年の皇子だ。

父は皇帝、母はそれぞれ違うが同い年の立場故仲が良かった。

そのため、皇位継承争いから脱落した後も、2人で同じ主君に仕えることにしたのだ。


「第1、第2、第3皇子がアキラ支援の援軍を派遣するそうだ」

「総統は逃げたか」

「そうなるな……」

「降伏するか」

「今なら決闘を申し込まれておらぬからな」


 決闘になっていたら、ライオットは降伏即廃嫡だっただろう。

今ならば領地ぐらいは安堵してもらえるに違いない。

その時は第4皇子も一緒に引きずり落ろしてやろう。


「ん? 誰か来たようだ……落ちるぞ」

「こっちもだ。降伏は早めにな」



*************************************



 こちらの公式発表に対し、第1、第2、第3皇子は(あきら)の支持を表明。第8皇子を批判した。

表面的な味方ということかと思っていたら援軍まで送ってくれるらしい。

まだ第8皇子からの返事はない。

いよいよタイムリミットがやってくる。最早決闘を申し込むしかない。

上位3皇子には感謝とともに援軍を丁重にお断りした。

僕達の力だけで敵は叩く。


 決闘が正式に表明され、第8皇子主星系ダロン星系に僕らは軍を進めた。

次元跳躍門(ゲート)手前の亜空間から堂々と宣戦布告をするが応答なし。

僕は専用艦の遮蔽フィールドを展開し次元跳躍(ワープ)でダロン星系に進入する。

遮蔽フィールドは新たに専用艦に融合した装備だ。

身を隠して次元跳躍(ワープ)することで敵情視察が容易だという利点に気付いたために採用した。

僕の専用艦は、次元格納庫内の無人艦隊も使えば艦隊単位で敵勢力圏に強襲出来る。

そのため久しぶりに単艦行動ぼっちしている。


 ダロン星系に次元跳躍(ワープ)アウトすると、そこは既に終わった戦場だった。

工業惑星は爆撃され、軌道上の生産設備も壊滅していた。

第8皇子の艦隊は残骸を晒している。

その戦場に残るは優美な装飾を施した専用艦のみ。

僕は専用艦の遮蔽フィールドを解くと、その専用艦に通信を送る。


『こちら第6皇子アキラだ。これはどういうことだ?』

『やあ、こちらは第4皇子ルーカスだ。第8皇子と第9皇子のアホは始末しておいた』

『え?』

『地球人誘拐にクローン兵化は許せん暴挙だ。僕の正義が奴らを許せなかった。

なのでサクッと狩っておいた。決闘の正当な権利として星系も君のものだ。

なに、礼には及ばん。1つ貸しにしておく。では、さらばだ』


 ルーカスの専用艦は次元跳躍(ワープ)で消えていった。

親切な第4皇子だ……なんて僕は思いはしない。

奴の言った第9皇子も始末したという言葉。

僕はまだ()()()()()()()()()()()()()だなんて知らなかった。

犯人側にしか知り得ない事実、つまり秘密の暴露。


「主犯はお前じゃないか!」

評価、ブックマークありがとうございます。

応援を励みにがんばります。


プリンスは200歳ぐらいです。

その弟が爺臭いのは皇位継承争いから脱落を表明したため延命処置をしていないからです。

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