011 修行編11 融合成長
被害は大きかった。もう侮ってはいられないので慢心は捨てた。
今回の不始末全ての原因は調子に乗って侮ったことによるものだ。
慎重に事を運んでいれば回避出来たことも、それにより台無しにしてしまった。
レンタル艦10番を損傷してしまったので、その修理費用の賠償も必要になる。
元々航行不能でダメージ大、そこに岩塊爆破分離の衝撃で装甲板がボコボコの敵艦。
いくらで売れるのか、丸ごと鹵獲とは言えなくなってしまった。
敵艦を拿捕したものの、敵艦は航行不能なためレンタル艦10番で運ばなければならない。
200m級の敵艦を30m級の小艦艇で運ぶのだからお手上げ状態だ。
曳航するのに助けを呼ぶべきだろうか?いやその費用で赤字も予想される。
(ここは余計なことをしないで、レンタル艦10番の電脳に丸投げしてもいいかな?)
僕の思いにレンタル艦10番が答えを導き出す。
『融合許可を願います』
「そうすれば丸く収まるなら許可するよ」
僕はその言葉を軽く考えて返事をしてしまう。
『融合シーケンス発動します。融合フィールド作動。主電源が落ちて非常電源に切り替わります。融合完了期間は3日です。それでは融合終了後にまたお会いしましょう』
「ちょっと待っ」
言い終わる前にCICの電源が切れ非常電源に切り替わった。
CICは明かりが落ち、非常灯だけになってしまった。
各種スクリーンも消えている。寒気がしてトイレに行きたくなる。
パイロットスーツにはオムツ機能があるんだが、さすがに複数日や大は勘弁してもらいたいものだ。
「3日って……。食料とトイレどうすればいいんだ? それに僕らは行方不明になってないか?」
その言葉に反応したのか、パイロットシートの後部からゴトリと音がした。
覗くとパイロットシートの裏には格納場所があり、そこからサバイバルキットが飛び出していた。
サバイバルキットの中には一週間分の食料と水、簡単な医薬品、それと紙の遭難マニュアルが入っていた。
まず遭難マニュアルを読む。
最初のページにはサバイバルの心得のようなものが書いてあった。
CICは頑丈であり滅多に破壊されることはないとかなんとか。
破壊されていたら、このマニュアルを読んでないだろうと物騒なことも。
だが僕にとって肝心なのはトイレをどうすればいいのかということだ。
いま現実にある危機ってやつだ。
ページを捲るとトイレの項目があった。
トイレはパイロットシートの右側に入り口があるらしい。
左側が搭乗口なので対になっている感じだ。早速入る。
地球と代わり映えのしない普通の洋式水洗トイレだった。
宇宙といえば強制吸引式のトイレが定番だろうに。
人口重力もあるし普通に使えるんだろうな。
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3日が経った。時間は腕輪で把握できた。
急にCICに明かりが灯る。
僕は慌ててパイロットシートに座る。(それまでは床に座っていた)
するとレンタル艦10番の電脳に僕の脳が直結する感覚がする。
一瞬で艦を把握するが、いつもとだいぶ違うことに気づく。
「なんか大きくなってないか?」
レンタル艦10番は敵艦と融合して200m級の戦闘艦になっていた。
敵艦にあった各種兵装も使用可能だった。
目の前に現れた仮想スクリーンには新しいR10アバターが映っていた。
その姿は胸部甲冑腰鎧手甲足甲をつけ、右腕に長砲身のレールガン、左腕に巨大な盾、両腰にビーム砲、両脚太ももにミサイルポッド、背中のランドセルに高出力スラスターを装備していた。
僕はこれで宇宙戦艦を育てるという意味がようやく理解できた。
「ああ! しまった! 自分の専用艦じゃなくレンタル艦を成長させてしまった!」
僕はこの後始末を思い頭を抱えてしまった。
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