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107 領主編19 研究所2

 俺達ラーテルの陸戦隊は揚陸艦で小惑星に作られた研究所に向かう。

艦首の衝角(ラム)を港奥の隔壁に突っ込み隙間を瞬間的に固まる充填剤で塞ぐ。

艦首にある注入口から空気を注入、内部の空気圧を上げる。

どこかの密閉が破れていれば空気圧は下がるはずだ。

空気圧を確認、艦首ハッチを開きラーテルの陸戦隊が突入する。

全員パイロットスーツにヘルメットを装着した宇宙服姿だ。

再度気密と毒物等の有害物質の有無を確認する。

クリア。ヘルメットを脱ぎランドセル上部の格納場所にしまう。

手にはサブマシンガン。

通路の安全を確認すると橋頭堡を次々と確保する。

今のところ武力による抵抗は無いが、抵抗があるものとして行動する。

油断が死を招く。武器を持っていなくても体術で人は殺せるのだ。


「動くな!」


 目の前に研究員が飛び出してくる。武装はしていない。

その顔がこちらを向くと恐怖に引きつる。

部隊マークを見ている。


「ラ、ラーテル!」


 研究員は気を失った。

俺達の勇猛さは帝国に轟いている。特に格闘術の強さは恐怖の的らしい。

その声を聞いた他の研究員が一斉に手を上げる。

みんなガタガタ震えている。

そんなにラーテルが怖いのか?

まあ、制圧が容易(たやす)いから気にするのはやめよう。


「所長のゲールは何処だ?」

「しょ、所長室」


 研究員が指をさす。

俺は部下に研究員の捕縛を任せ所長室に向かう。


 所長室の扉はアキラ様による研究所の電脳制圧でロックされていた。

所長が逃げないようにという配慮だろう。

そのロックが自動的に解除される。

おそらく我々の到着を確認され先回りをしていただいたのだろう。

所長室の扉を10cmほど開ける。

俺は内部偵察用のドローンをその隙間から進入させる。

腕輪から仮想スクリーンを投影し内部映像を見る。


「いたぞ。武装はしていない。カウントゼロで扉を開け突入する。5・4・3・2・1・突入!」


 突入と同時に所長と思われる人物の頭上に向けサブマシンガンを連射する。

向こうの動きを止めさせる脅しだ。

所長は銃撃に怯え頭を抱えてうずくまった。

その隙に距離を詰め所長を確保する。

立派な防衛機構があったようだが、アキラ様に電脳を制圧されて機能していなかった。


「所長確保!」


 その後全ての部屋を確認し研究所の制圧は完了した。

捕虜となった研究員はゲール所長を含め25人。

地球人拉致被害者は確認されず。

クローンは20名を確認。キース8名、エマ7名、ショウマ5名。

ショウマはSFO4代目チャンピオンのショウマ・スズキのクローンだ。

エマ5名、ショウマ5名は培養槽の中だった。

キースは全員おっさんまで成長済み。エマも2名は本人と同じ外観年令になっている。

だが人格コピーが不十分なようで中身がやっぱり4歳だった。

まあ、それでクローンだと確認出来たわけだが……。



*****************************



 (あきら)はラーテルの陸戦隊に制圧された研究所小惑星に降り立った。

まず聞かなければならないことがある。

研究員を大部屋に集め僕は質問する。


「地球人のSFOチャンピオン本人はどこだ?」


 研究員が顔を見合わせる。1人の女性に視線が集中する。

するとその女性がヤレヤレという肩を窄めるジェスチャーをすると話し出した。


「本人には会った事がないわ。DNAサンプルが回ってきただけ。

我々はそれを材料に研究してただけで、本人は一度足りともここに来たことがないはずよ」


 どうやら所長を抜かすと彼女が一番の事情通らしい。


「では、培養槽のクローンの成長を止められるか?」

「それは簡単に出来きるわ。どうしてそんなことを?」

「子供は無理やり成長させるもんじゃないからね」

「へぇ。わかったわ。今直ぐ作業にかかってよろしくて?」


 僕が頷くと、彼女は面白がるような目で僕を見ると研究員の何人かに指示を出した。

研究員が立ち上がるとラーテルの兵士が研究員の後に付いて行った。


「培養槽から出てしまっているクローンは子供に戻せるか?」


 彼女は少し考え込むと僕の目をじっと見て話し出した。


「出来ないことはないけど、この研究所でも準備と実作業で時間がかかるわよ」

「出来るのなら、我々が確保しているキース2名、エマ2名も子供に戻してくれ」

「エマは3名じゃなくて?」

「1人は亡くなったよ」


 彼女の顔が悲しみに歪む。

そして怒りの表情を見せる。


「だからまだ早いって言ったのに……」


 彼女は自分が止められなかったことを悔やんでいるようだ。

これは此方の力になってくれるかも。


「あなたの名前は?」

「アリソン=スコル=ヒーリー」

「アリソン、君はこのようなことがしたくて研究者になったのか?」

「いいえ。言う機会が無かったから今伝えるけど、我々のほとんども誘拐されてここにいる」

「なんだって?」


 僕は腕輪と専用艦経由で次元通信を使い愛さんに問い合わせる。


『愛さん、アリソン=スコル=ヒーリーに関する情報を検索してくれ』

『了解しました。アリソン=スコル=ヒーリー、ヒーリー伯爵家令嬢。遺伝学者。5年前に行方不明』

『行方不明なんだな?』

『はい。誘拐が疑われましたが、身代金請求もなく迷宮入りとなっています』


 なんてことだ。非合法組織の研究員も非合法に集められていたのか。


「アリソン、君が行方不明となっていることを確認した。他の研究員も誘拐被害者なんだね?」

「ほとんどそうね。違うのはゲール所長とその取り巻き」

「そいつらは隔離する、教えてくれ」


 アリソンの指示の下、僕は非合法組織の構成員(共犯)を分離した。

さて、彼らの扱いに困ったぞ。


「アリソン、この研究所で行われていた事は非合法な活動だ。

強制されたとはいえ君らには裁きが待っている。

だが、今後子供たちのために協力するなら恩赦を与えるように取り計らおう」

「ええ、協力させてもらうわ。他のみんなも異存はないはず。彼らのやり口には皆我慢できなかったから」


 研究員のみんなが協力を誓う。皆建設的なやりがいのある仕事に燃えているようだ。


「クローン達に微妙な差異を加えられるか? 別人格の違う人間として育ててやりたい」

「遺伝子導入で出来ると思うわ。やってみる」

「頼む」


 僕が頭を下げると、アリソンは驚いた顔をし、何かを決意した顔に表情を変えると僕に訴えて来た。


「それと、実家にはまだ連絡しないで」

「どうして?」

「実家の力で連れ戻されたら子供達に償いが出来ないわ」


 アリソンは良い笑顔で言う。


「わかった。ヒーリー伯爵とは面識がないが、怒られ役は引き受けよう」

「ありがと」


「ラーテル隊の君、研究員のリストを作成し愛さんに連絡し素性を確認しろ。

僕は所長の尋問に向かう。隊長、同行してくれ」

「了解しました」


 さて次は所長のゲールだ。

黒幕に繋がる情報を吐かせてやる。

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