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103 領主編15 地球人奪還3

 ブライビー男爵の騙し討ちの証拠が帝国ネットワークに上がったことにより、ブライビー男爵は討たれて当然という扱いになった。

だが親玉の第10皇子に関しては共犯である証拠は皆無で手出し出来なかった。

第10皇子はいち早くブライビー男爵の蛮行を非難し、お詫びにとブライビー星系の権利を僕に渡して来た。

ブライビー星系のハブ次元跳躍門(ゲート)が使えなくなると、第10皇子の主星系であるケイン星系の玄関口を抑えられることとなり、それこそ他所へ出掛けることは事実上不可能となってしまう。

第10皇子は自分の支配星系以外への航行の自由を僕に握られる形となる。

そうまでして詫びた第10皇子は人格者であると世間では評判になった。

そんなことを僕達は信用していない。

なかなか上手いトカゲの尻尾切りで、第10皇子侮りがたしという結論になった。

第10皇子は、支配星系内で完結した経済活動が可能であれば、今後も何不自由なく贅沢三昧は出来る。

命と天秤にかければ皇位継承を諦めたポーズをするぐらいはお安いことだろう。

じっと耐えていれば味方が巻き返してくれるという期待もあるのかもしれない。


 だが僕としては、この結果は失敗だったと結論付けざるを得なかった。

この時点で地球人の奪還はゼロであり、何の成果を上げることも出来ていなかった。

そこでブライビー4の衛星軌道上にあった要塞艦、ブライビー要塞に残った情報を解析し、ステーションから管理移行された地球人378名を特定した。

プリンスの手口では、この要塞から貧民として連れ出し保護名目で奴隷化、借金をたてに奉公を求める借金奴隷にするというパターンだろう。

下手すると難民としての保護期間の経費を借金として被せられて、借金奴隷に追い込むという可能性も無いとは限らない。


「参ったな。第10皇子を追い込んで拉致先を吐かせるつもりだったのに……」

晶羅(あきら)、見事に逃げられたな」

「社長、拉致被害者が特定出来たんだから、関係者に返還を求めるというのはどうだろうか?」

「帝国が文明国であるならば、拉致被害者と判った後まで地球人の所有に拘らないと思うんだがな」

「はい。辺境で中央の目が届かないからこそ行われた暴挙ですので、地球人拉致被害者をたまたま手に入れた善意の第三者であれば、返還に応じると思います。

皇位継承に品格を求めている上位皇子の関係者であれば、地球人の所有によって汚点となることこそ避けようとするでしょう」

「愛さんの見解の通りならば、アホなのは下位の皇子ってことか。なら地球人拉致の実態と返還への協力を訴えたらいいのかもね」


 僕達は公式なルートで地球人の返還を求めることにした。

そのメッセージは帝国ネットワークに載せられ瞬く間に広がって行った。


「第1皇子、第2皇子、第3皇子は人間が出来てるね。地球人返還に協力してくれるそうだよ」

「彼らにとっても下位皇子を叩けるのはメリットがあるだろうからな」

「そりゃそうだよ社長。そこに大義名分があるんじゃ庇いようもないからね」


 僕と社長が皇子達の対応を分析していると、愛さんから報告が入った。


「さっそく返還に応じる貴族が現れ始めました」

「愛さん、窓口業務なんて頼んじゃって悪いね」

「いいえ、かまいません。ですが事情があって返還に応じられないというメッセージも入っています」

「事情?」

「貴族家に奉公に入って見初められ、当主の子を産んで幸せに暮らしているそうです」

「そ、それは帰って来いとは言えないね……」


 そうか。5年も経っていたら、そういった事例も発生しかねないよね。

男で入婿なんてのもあるかも。


「だが、そういった事情を装う奴も出かねないから、しっかり検証していかないとな」

「難しいね」


 それを悪用も出来るか。これは地球人の担当官を任命すべき大仕事かも。


「姉貴の情報は無いんだよね?」

「はい。全くありません」


 善意の第三者は返還に応じてくれている。

だが、悪意を持って攫われた被害者は情報すら出てこない。

下手すると戦場に駆り出されて亡くなっている人もいるのかもしれない。

その人を返還しろと言っても無理だろう。

だが亡くなったという証拠が無い限りいつまでも返還事業は終わりを迎えられない。

拉致されたと知った家族は諦めることはないからね。


「どこかに一元管理されているデータでもないかね」


 ポロっと出た僕の言葉に愛さんが反応する。


「腕輪の登録データが個人特定の一元管理データになります」

「まさか、名前さえわかれば腕輪データとマッチング可能とか?」

「その閲覧許可さえ出れば現在の所在が特定可能かと思われます」

「あー。許可が無いのか」

「はい。許可さえ出れば除籍の記録も見れるはずです」

「除籍って亡くなってるということか……」

「腕輪を外し帝国の管理の外で生活していれば生きているかもしれませんが」

「それは濃い犯罪臭がするな」

「はい。非合法市民になりますから」

「それもデータ閲覧許可を得なければ絵に描いた餅か。閲覧許可は何処でとればいい?」

「帝国本星に行くしかありません」

「帝国本星か」

「そこで皇帝陛下の許可を得る必要があります」

「うわー。それは最後の手段にしたいな」


 皇帝に会う? こっちが真・帝国と関係がある以上勘弁して欲しい。

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