102 領主編14 地球人奪還2
【ども、ブライビー男爵、こちら第6皇子だよ。いま地球の恒星である太陽系の星系領主やってるんだけど、そっちに地球人行ってるよね?
地球人難民を保護してくれてありがとう。でも、それ廃嫡皇子プリンスの誘拐だったんだ。
保護してくれたブライビー男爵には感謝しかないんだけど、犯罪で連れて行かれたわけだから地球人は返して欲しいんだ。
よろしくー。返事ちょうだいね。返事来ないなら迎えに行っちゃうからね。 第6皇子アキラ】
皇子から男爵への公式文書に書式などなかった。
畏まった文章は用意したんだけど、皇子が男爵に謙る必要は無いということでこんな風になった。
【拝啓――時候の挨拶の無駄長文――ご機嫌伺いの無駄長文――
プリンスとの諍いの結果報告の長文――誘拐の調査結果の長文――
以上により貴殿が星系領主となっているブライビー星系にて、保護されているはずの地球人の返還をブライビー男爵に要請するのでよろしく頼みたい――
再度ご機嫌伺いの無駄長文――突然手紙を送ったことの謝罪の無駄長文――別れの挨拶の無駄長文――敬具 日付 第6皇子アキラ 第10皇子ケイン殿】
星系領主の第10皇子にはお伺いの長文を次元通信を使った所謂FAXに相当するもので送っておいた。
紙で渡すことが必須のものだ。
嫌がらせじゃないんだからね? 皇子に対する礼儀なんだからね?
無駄長文って言ってる? し、知らないよ。
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電脳空間のプライベートエリアに2人のアバターが集まっていた。
「ケイン殿下、私めはどうすれば良いのでしょうか?」
「どうもこうもない。地球人なんかとっくに奴隷として売ってしまっている。返還しようがない」
「しらを切るしかないのでしょうか?」
「わしは知らん。お前がなんとかしろ」
「そ、そんな……」
「そうだ。どうせ奴が黙っているわけがない。ブライビー星系におびき出してアキラを亡き者にしろ! それで解決だ」
「どうやって……」
「奴がブライビー星系に来たら次元跳躍門手前で待ち伏せして奴の専用艦に集中攻撃をかけろ」
「受け入れると見せかけて騙し討ちということですな?」
「奴を怒らせて必ず本人が出向くように仕向けるんだ。やつは騙されやすいそうだ。殺ってやれ」
本人達には悪巧みが一見成功するかに見えたが、この2人は明らかに戦い慣れていなかった。
まだプリンスの方が一枚も二枚も上手だった。
そのプリンスと戦っていた晶羅からしたらこいつらは……。
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ブライビー男爵から返事が来た。
地球人は保護していたが、全員が別の星系に去ったという。
何処へ誰が連れて行ったとか詳細は一切無し。
保護していたと言うくせに地球人の名簿すらも渡して来やしない。
第10皇子からはリアクションすら無し。
これはクロ、敵対と見做さざるを得ないね。
「これは親善訪問でもしますか」
もちろん名目は『地球人を保護してくれていてありがとう』だ。
『で、地球人を何処へやった?』という所謂砲艦外交。示威行為だ。
それでも応じなかったら……戦争も辞さない覚悟だ。
ここで引いたら4千人の地球人は返って来ない。
最大戦力の工場母艦と搭載艦隊に出張ってもらうことになりそうだ。
ブライビー門の亜空間側から第6皇子来訪の次元通信を送る。
普通なら簡単に許可が出るはずなのに待たされる。
これだけで不敬罪成立なんだけど、わかってやっているのだろうか?
やっと星系侵入許可が出て艦隊がブライビー星系に突入する。
『第6皇子来訪に対してなんたる不敬か!』
ブライビー星系に侵入した第6皇子護衛艦隊旗艦から抗議の声があがる。
と同時にブライビー男爵艦隊から発砲、ダミー艦と無人艦が撃沈されてしまう。
「これは完全にアウトだよね?」
「騙し討ち、何処に持ち出しても戦争の大義名分になる」
「記録は帝国ネットワークに上げておきました。戦争になっても誰も文句を言えません」
実はこの第6皇子護衛艦隊は戦術兵器統合制御システムでダミー艦を遠隔操作していた。
その僕も呆れるしかない見事な屑対応ありがとうございました。
地球軍司令神澤准男爵も呆れ果てる。
アドバイザーとして来てもらった愛さんも交戦規定がクリアされていると太鼓判を押してくれる。
「それじゃ工場母艦次元跳躍。目標敵艦隊左舷側方。全艦で蹂躙する」
ブライビー4の次元跳躍門前に展開するブライビー男爵軍3000の艦隊左舷側面に、工場母艦を次元跳躍させる。
次元跳躍アウトと同時に艦載無人艦5万と地球艦隊2000+1000を緊急発進させる。
ブライビー男爵艦隊3000は5万の無人艦に任せる。
僕は地球艦隊2000と新造の親衛艦隊1000でステーション同型艦の要塞艦を制圧する。
その前に重要なことを。
『こちら地球艦隊だ。騙されて戦わされている地球人がいるなら戦線を離脱してくれ。
我々は君達を解放しに来た。もう奴らに従う理由はない』
地球人が知らずにブライビー男爵軍に居たら巻き添えになる。それだけは回避しないとね。
続いて最大の脅威の排除だ。
「まず最大脅威の要塞砲を叩く、新兵器を使うぞ」
僕は専用艦に新兵器である反物質粒子砲をスタンバイさせる。
対消滅反応炉から反物質を抽出、内向きの停滞フィールドを張ったケースで反物質を固定する。
そのケースで砲塔へと運ばれた反物質をケースのまま反物質粒子砲の薬室にセット。
ケースから解放された反物質を粒子加速器で加速させる。
粒子加速器の内部も内向きの停滞フィールドで保護されている。
加速された反物質の速度が停滞フィールド突破速度寸前を迎える。
と同時に薬室を解放。反物質ビームを目標に撃ち出す。
目標は要塞艦搭載要塞砲。
細い光条が要塞艦の要塞砲砲口に向かう。
当たったと思われた刹那、反物質が物質と反応し対消滅が起こり、膨大なエネルギーを放出する。
その爆煙が消えた後には発射不能状態まで破壊された要塞砲の残骸があった。
「うわー。Gバレットより凶悪だわ。よし、通信を開け」
『頼みの要塞砲は破壊した。要塞艦にもう何発かもらっとくか?』
要塞艦は降伏し制御キーを手放した。
ブライビー男爵軍はそれ以前に無人艦艦隊5万に殲滅されていた。
「あ、親衛艦隊の出番が無かった!」
さて、次は親玉だ。
今回の『AKIRA』諸元
艦種 艦隊指揮艦(艦隊旗艦)
艦体 全長250m 高速巡洋艦型+α 2腕 次元格納庫S型 (親衛護衛艦 1000 ステルス艦 1 艦載機『ふぁんねる』1 外部反応炉 外部兵装 外部電脳 予備部品多数)
主機 対消滅反応炉G型(+外部反応炉 対消滅D型) 高速推進機C型 (+次元跳躍機関)
兵装 主砲 長砲身5cmレールガン単装3基3門 通常弾 3675/∞ 特殊弾 643/∞ 特殊弾 1734/∞ 特殊弾 528/∞
反物質粒子砲 1基1門
(外部兵装 長砲身40cmレールガン単装1基1門 通常弾 164/∞ 特殊弾 38/∞ 他)
副砲 30cm粒子ビーム砲単装1基1門
20cm粒子ビーム砲単装1基1門
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 D型標準2基2門 最大弾数4×2 ミサイル残弾 8
(艦載機用ミサイル D型標準2基×1 最大弾数4×2×1 ミサイル残弾 8)
防御 耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板
ビームキャンセラー(対ビームバリヤー)
耐実体弾耐ビーム盾E型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)C型
次元フィールド発生装置
電子兵装 対艦レーダーS型 広域通信機S型 戦術兵器統合制御システムS型 サブ電脳C型 (外部電脳A型)
空きエネルギースロット 5
状態 良好
新兵器の反物質粒子砲を1基1門装備した。
次元格納庫にはいつでも出撃可能な親衛艦隊(無人艦)を搭載した。
R15で投稿を始めて3ヶ月が経ちました。
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