100 領主編12 100話記念SP ドキッ! アイドルだらけの海洋リゾート
最初に謝っておきます。調子に乗りました。すみません。
そろそろ楓にご褒美を渡さないと爆発しそうな雰囲気がある。
ここは呼び出した時の餌だったアクア3の海洋リゾートに連れて行こう。
「楓、少し暇になったから海洋リゾートに行こうか?」
「やったー。やっと水着の出番が来たーーーーーーー!!」
僕がそう口にしたのはお馴染みのアノイ支所社長室。
そこには僕から仕事をふられて忙しく立ち回る神澤社長の姿があった。
「こら晶羅! 誰のおかげで暇になったと思っているんだ?」
拙い。これは拙い。社長に丸投げしたから暇になってるんだった。
考えろ。何か回避策を。殺される前に。
「社長もアクア3の漁業を視察するべきじゃないかな?」
その一言で社長の機嫌が直る。
「そうだな視察は大事だな視察は。仕事だからな」
「ずるーい。紗綾も行くぞ」
「美優も……」
「なら社員旅行だな」
なし崩し的に全員参加となった。
僕達はアクア3に到着した。
次元跳躍門よりも次元跳躍の方が速いので、僕と楓の専用艦のCICに便乗という形をとった。
本来なら軌道上の宇宙港から転送で降下するところだが、アクア子爵の配慮で専用艦で直接降下出来るプライベートアイランドを用意してもらった。
プライベートアイランドの宇宙艦専用港に駐機する専用艦2艦。
そこから降り立ったのは総勢15名。
僕、楓、社長、沙也加さん、菜穂さん、紗綾、美優、綾姫、嫁のキャリー、マリー、ジェーン、そして護衛として付いてきたラーテル族、熊族、獅子族、虎族の女性戦士4名。
護衛はジョン=ドゥ=ラーテル男爵たってのお願いで同行した。
ジョン男爵からするとアクア子爵はまだ信用出来なんだそうだ。
「専用艦に乗っていれば最強の若でも生身の時に襲撃されたら一捻りですよ!」
これがジョン男爵の言い分だった。
専用艦に乗れば最強というのは褒め過ぎだが、確かに生身の僕は戦闘力ゼロだ。
それで最強部族ラーテルから護衛の同行を申し出たというわけだ。
だがそこは他の部族も黙ってない。
戦闘民族の熊族、獅子族、虎族も護衛参加を表明、各部族から1名の参加となった。
チームワーク的に同一部族で統一した方が護衛には適しているんじゃないかと思ったけど、みんなの必死さで言い出せる空気じゃなかった。
で、当日集合場所に現れたのが女性戦士ばかり。おまけに嫁3人。
ジョン男爵に伝わるということは嫁にも伝わるのは当たり前。
ジェーンはジョン男爵の娘だし、僕から誘わなかったのは明らかな失策だった。
だがこれだけ獣人女性を同行させて何を期待している?
プライベートアイランドは宇宙艦専用港を離れると自然自然自然という人の手がほぼ入っていないリゾートだった。
南国植物に隠されるようにひっそりと建つコテージは、その外観と違って内部は高級ホテルのスイートだった。
ビーチの砂浜はサンゴの混じったピンク色。エメラルドグリーンの海。
「どこの新婚旅行先だよ!」
思わず突っ込まざるを得なかった。
その言葉でスイッチが入り、ギラギラ光る嫁ーずの目に貞操の危機を感じた。
部屋割りは僕と社長と楓が個室。菜穂さんと沙也加さん、綾姫と美優、紗綾と虎族護衛、ジェーンとラーテル族護衛、マリーと熊族護衛、キャリーと獅子族護衛が同室となった。
ただし護衛はほぼ部屋を使わず護衛任務にあたるらしい。
意図的に個室化されてる気もするが怖いのでスルーしよう。
荷物を置き短パンの水着に開襟シャツ、ビーチサンダルというラフな格好に着替えると、皆でリビングに集まる。
トロピカルカラーの三角ビキニ一つでスタンバイする紗綾、青い水着の上に青白ボーダーのラッシュガードを羽織る綾姫、黄色のワンピースで水着を隠す菜穂さん、紺のスクール水着+ネコミミカチューシャの美優が既に待っていた。
さすがアイドル。みんなカワイイ。
もじもじしながらピンクフリルのホルダーネックビキニの楓もやってくる。
嫁ーずは……。はりきり過ぎた危険な水着を着ている……。
一言言っておこう。布面積が少なかったと。
水着拒否の沙也加さんが一服の清涼剤のようだ。
「みんなそろってるか? よし仕事だ!」
そこへハーフパンツにアロハシャツ、頭にサングラスを乗せた社長が現れた。
動画用のビデオカメラが2台、スチールカメラが1台、その他レフ板やらを持っている。
「護衛の人達手伝ってね」
社長がスチールカメラ、僕と虎族護衛にビデオカメラ、獅子族と熊族護衛にレフ板を持たせていく。
「ちょっと社長、何を始めるんだ?」
「決まってるだろ、PVと写真集撮影だ!」
僕は頭を抱えた。
「いや僕は水着撮影NGだよ。男なんだから」
「元から晶羅に期待はしていない。おまえはビデオカメラ担当だ」
「え? じゃあ晶羅は?」
社長が徐ろに指を差す。
その指差す先には楓がいた。
そうだった。楓を僕の影武者にしようと提案したのは僕だった。
トロピカルカラーの三角ビキニで波打ち際を走る紗綾。
砂で城を作る紺のスクール水着の美優。
ビーチマットに寝転びグラビアポーズをとる白いモノキニの菜穂さん。
葉っぱ模様の青いハンドゥビキニで紗綾と水を掛け合う綾姫。
ピンクフリルのホルダーネックビキニで、ぎこちないグラビアポーズをとるきららこと楓。
次々と指示される社長演出で撮影をこなしていく。
「紗綾、その水着の穴はなんだい?」
ビキニを別バージョンに着替えた紗綾の水着の腰の部分に穴が開いていた。
破れたとか切れたとかではなく、きちんと縫製されて強化されている穴。
「んー? デザインじゃないのー?」
紗綾は気にしていないようだが、どうも気になる。
そこでハッと気付いた。
「それ獣人用の尻尾穴じゃないか?」
僕の声に嫁ーずが紗綾の水着を確認する。
「それは猫族用ですね」
「ふーん。まあいいやー」
紗綾の適当さに呆気にとられる僕達。
ファンには目の保養になることだろう。
それにしても嫁ーずの水着には穴なんて無いぞ?
ああ、布地が少なくて水着の上から尻尾が出てるのね……。
こうしてプライベートアイランドの一日は撮影のみで過ぎていった。
一番働いたのは沙也加さんかもしれない。
日焼け止めを塗ったりメイクを直したり、飲み物を用意したり。
僕はひたすら重労働だった。
カメラ撮影中ずっと半裸の嫁がまとわりついていたんだ……。
そして夜。肉食獣の襲撃を受けた。
ご想像にお任せします。




