099 領主編11 領地経営6 移民政策
AKR13(仮)星系を正式に命名しなければならないと僕は頭をひねった。
居住可能惑星が3つもあることから、3つの島がある楽園ティル・ナ・ノーグにしようと思ったんだけど、権利関係が面倒くさそうなので却下した。
次に思いついたトライスターも商標登録されてそう。
まあ地球の法律を適用してどうするんだという話だけど、面倒事にはわざわざ寄り付かない方が良い。
その結果、せっかく決まっていた新曲が発売休止、アイドル活動自粛なんてなったら目も当てられない。
神話系の名前なら大丈夫だろうと思っても、そこに宗教がからんだり、ゲームの名前として商標登録されてたり面倒事は多い。
その点、ギリシャ神話あたりは著作権の切れた物語扱いで寛容かもしれない。
ギリシャ神話に出てくる楽園といえばエリュシオンかな。
エリュシオンならあらゆる作品で使われてるし著作権フリー状態だろう。
響きも格好良くて好きな名前なんだよね。
「決めた。AKR13(仮)星系はエリュシオン星系と名付ける!」
ここに第6皇子主星系エリュシオンが誕生した。
姉貴の行方も探さないといけないし、誘拐された地球人も奪還しないと。
だけど、それをするには今以上の力が必要だ。
焦って負けるより、じっくり力を蓄えて勝つ!
「さて居住可能惑星はあっても人が居ない状況をなんとかしないと……。
自然に生産されている資源も回収しなければ分配も出来ない」
まず最初に住民となってくれそうなのは真・帝国の人達だと思っていたのだが、帝国(簒奪帝国)の目につくのを避けたいらしい。
移民するなら僕が皇帝になってからということらしい。
官僚だけでも送って欲しいとお願いしたら手配してくれるそうだ。代官は決定だな。
次の候補は獣人族の小領地の皆さん。
彼らは喜んで移住してくれることになったが、全員での移住でも人数は各部族せいぜい万単位でしかない。
億の人が移住してもまだ土地が余る惑星が3つあるとなると、せっかくの資源も手付かずで終わってしまう。
特に農業漁業畜産業は収穫しないで無駄になっている状況だ。
「食料輸出をしようにも収穫する人がいないんじゃ外貨も稼げない」
次に考えたのは帝国領からの移民募集。
これは拙いらしい。人は資源であり領民流出は領地の経済力を下げることと同じ。
つまり宣戦布告に等しい行為らしい。
確かにそうだ。上位皇子は直接戦闘よりも経済戦争をして優劣を競っているそうだし、彼らに敵対行為と取られたら若輩の僕にはやば過ぎる。
もう少し皇子達と仲良くなってお伺いを立てなければ無理な案件だ。
「人口爆発で食料の奪い合いになりつつある地球からの移民が一番理想的なんだけど……」
地球からの移民に腰が引けるのは、自己中なテロリストや利益のみを追求する歪んだ資本主義の人達がいるからだ。
儲けるのは結構だけど、人権を踏みにじったり、人から奪ったりのブラックな利益追求は違うと思うのだ。
社会貢献。人を幸せにするために仕事をし、それが利益になるというのが僕の理想だ。
甘いかもしれないけど、どうせ僕はそんな人間なんだ。
よし此方が悪条件でも来たいという人がいれば連れてくることにしよう。
生まれた時には国を選べない。逃げ出したい人はいるはずだ。
そしてこんな求人が地球各所でされることとなった。
【移民募集:職種 農業・漁業・畜産業。超遠隔地の田舎。娯楽なし。農業は豊かな農地・農具支給。漁業は豊かな漁場の漁業権と船・漁具支給。畜産業は家畜と畜舎・道具支給。現地までは当方で送迎します。
簡易住居は用意しますが、土地を支給しますので自ら好みの家を建てることをお薦めします。初年度食料補助制度有り】
こんな変な募集で来るような奇特な人なら異世界転移だろうが受け入れてくれるだろう。
SFOのスタッフが片手間で出来る仕事だと僕は簡単に思ってた。
「どうしてこうなった?」
宗教戦争のとばっちりで住む場所を無くした難民、独裁者に虐げられ声も上げられなかった庶民、自国の閉塞感から都会から逃げ出そうとする都会人、出稼ぎでお金を送れるなら何処でもいいという逞しい人達。
持たざる者でも応募さえすれば何らかの物を手に入れられる。それだけでとんでもない人数が応募して来た。
ドイツが手厚い保護で難民が殺到したように、うちの条件もかなり良かったらしい。
しかも命がけの脱出を必要としない送迎付き。至れりつくせり?
だが、このままだと騙して連れてくるようなもの。
他星系への移民だと教えて、それでも移民したいなら連れて行って、難色を示すなら記憶を消して帰ってもらおう。
そこらへんSFOでもやっていてステーションはお手の物だからね。
「ところで誰の仕事だよ? 募集地域の選択がおかしい。戦闘地域や独裁国家でどうやって募集した?」
閑話休題、いろいろ変な人が混じってる。
貰うものだけ貰って売って逃げてしまえばいいと思ってる連中がいる。
行ったら逃げる場所は無いよ?
帰りの運賃は貰った物を売った金額で返してもらうからね?
他にもそんな豊かな土地があるなら奪ってやろうという軍事国家のスパイも混ざっている。
スパイ活動をしても本国と連絡つかないよ?
しかも星の彼方にどうやって侵略軍を送るつもりだ?
しかもこっちは地球の法律で裁かないからね?
知らないって怖い。でもそうまでする人間の欲がもっと怖い。
そして出しゃばる自称自治会のお友達。
「来るものは拒まず、変なことを仕出かしたら、これも記憶消去して強制送還でいいかな?」
移民を入れても治安維持や行政手続き等々、他にも人手が必要になっていく。
ステーションでも結構行政サービスが充実してたからね。
あのレベルをゼロから作るって大変だわ。
誰か経験者に丸投げしたいところだ。
「僕は高1なんだよ? そんなの無理だって……はっ! 学校を忘れてた!!」
僕は慌ててコピーロボットを手配し通学させるのだった。
そこでとんでもないアイデアが浮かんだ。
「これだ! 行政の役人をロボットにすればいいんだ」
早速工場母艦に手配だ。役人型ロボット(外観地球人)と警備ロボット(外観地球人)を製造する。
言語は地球全般と帝国公用語。役人型は行政知識付与。警備型は格闘技制圧術ナビゲーション機能付与。
サポート用の電脳を用意して常にデータリンクするように。
緊急事態には人で対処せざるを得ないからね。
ステーションやアノイ要塞の施設は国家の縮図だった。
あれを参考にすれば必要な施設が見えてくる。
金銭の遣り取りは電子マネーでいけるな。住人にはあの腕輪を支給しよう。
作物を出荷すると腕輪に電子マネーが入り、その電子マネーで商店の品物が買える。
これなら食料配給もチケット制に出来るし横流しも不可能になる。
あの自称自治会の不始末を二度と起こさせるもんか。
さらに同じ地域に全く違う国の人間が住むことになり、言語の違いも腕輪さえあれば通訳可能だ。
宗教的民族的文化的に対立している人達は別々にしないとならないな。
「とりあえず職種分けと行政商業施設、簡易住宅を早急に建てないとならない。工場母艦の生産力をそっちに回して欲しい。
あーもう。輸送もどうにかしないと。旅の間の食料も確保しないと。あーー。誰か丸投げ出来る人はいないもんか?」
その時、僕の脳裏にある人物が浮かんだ。
「社長、いや准男爵、ちょっと頼みがあるんだけど」
最近人を騙しまくってるな。反省。
見返りをたんまり用意しよう。
楓は海洋リゾート惑星に連れて行かなければならないな。
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